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飛べない鳥もいちおう鳥

執筆日:2015年11月26日

お題 :楽観的な鳥

 木から落ちる猿もいるように、歩けば棒に当たる犬もいるように、空を飛べない鳥もいる。

 ようするに、生きとし生けるものは何者であろうとも向き不向きがあるということだが、それにしたって私は不向きなことが多すぎた。

 学校の勉強にはついていけないし、運動神経も悪い。頭の回転も鈍く気が利かない。そんなんだから、中学に入ってから二ヶ月、まだ友達も作れない。趣味もないので、家にいてやることといえば寝ることしかない。寝る子は育つんだかなんだか知らないが、胸ばかり大きい。そして背は小さい。

 私に向いてることってなんだろう、と考えることが、最近多い。

 寝ながら考えることもあるし、学校帰りに歩いていると突然思い出したように頭の中に浮かぶこともある。たいていは答えが出ずに保留にして、そうしてまたふとしたときに考え始める。答えはやっぱり後回しになる。

 とにかくいついかなる時にでもやってくるその悩みは、時と場所を選ばない。

 今日は授業中にやってきた。

「飯塚、次」

 現代国語の授業だった。いつの間にか順番が回ってきてしまって、前の席の男子が読んだ教科書の続きを読まなくてはならなくなった。名前を呼ばれるまで、いつものように「向いてること探し

」をしていた私は当然、教科書を追ってはいない。

 慌てて立ち上がったものの、どこから読めばいいのか分からなくてしどろもどろしていると、横から「ここ」と囁き声が聞こえた。ちらりと見ると、隣の佐藤さんが教科書の六十三ページの一部を指差していた。彼女の顔と、その指し示している場所を交互に見やると、佐藤さんはにっこりと笑った。

「どうした、飯塚」

 また名前を呼ばれてハッとなった私は、佐藤さんが示してくれた箇所から読み始め、なんとか事なきを得たのだった。

 音読を終えて席につき、ホッと胸をなでおろしていると、佐藤さんがこっそりと、

「危なかったね」

 と小声で言ってきた。私はやや挙動不審になりながら、こくりと頷く。

「ありがと……ちょっと、ボーっとしてて」

「給食の後だし、あったかいし、眠くなっちゃうよね。けっこう、寝てる人もいるし」

 こっそりと教室内の様子を伺えば、なるほど確かに、机に伏せているクラスメイツが何人かいた。私は眠かったわけではないのだけれど、はたから見れば居眠りと変わらないのかもしれない。

「私も順番が来なければ寝てたい……」

 佐藤さんは苦笑して言った。音読の順番は席の順だ。私の列が終れば、次は佐藤さんの列に移る。彼女もすこし眠いのか、目元がとろんとしていた。

「もし寝てたら起こしてね……」

 そう言って、彼女は自分が読む場所の確認を始めた。

 私は佐藤さんと同じよう、教科書に視線を落とす。なんとなく文章を目で追ったが、読む気にはなれない。

 私の席は窓際で、佐藤さんの反対に顔を向ければ窓の外が見える。

 六月の初め。梅雨入りはまだ少し先らしい。空はからりと晴れている。

 空を飛ぶ雀が見えた。

 鳥は、生まれつき特技があっていいな。

 けど、その特技を持たない鳥もいて。

(私にも、何かないかな)

 再びそんなことを考えそうになったが、さっきよりは少し心が軽い。

 ほどなくして、隣から佐藤さんの朗読が聞こえてきた。

 彼女の声は、なんだか心地よかった。

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