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5.覗きじゃないですよ

20150210 後書き追加とちょこっと加筆……些細な修正なので、読み直しの必要ないと思います。

 とっても心配性なパ……いや、友人が、体育倉庫からメジャーやストップウォッチ数個を持って去っていくのを見送って、改めて荷物を肩にかけなおした。地味に重く感じるのは今日は古典と英語の授業で辞書が必要だったせいか片手がまだつながれたままであるせいか……。

 とりあえず、大野くんは、まだ私の手を解放してくれる気がないらしい。改めて向き直って、手を軽く引こうとしても、その手はびくともしない。

「ねぇ……あなた、部活中じゃないの?」

「大野聡です」

「……うん、名前は知ってる」

「じゃあ、名前で呼んでください」

こういう場合、いきなり呼び捨てするものなのだろうか。というか、私の質問に答えるより、呼び方のほうが重要? それともはぐらかされたとこ?

 まぁいいんだけど……ゲームの中では、大野くんと大野と聡くんと聡とさっちゃんと単車ボーイと……いくつか呼び名が選べたんだけど、私はずっと聡くんにしていた。なんとなく、呼び捨てやなんかは違う気がして……いや、そもそもそういうのって少し付き合いができてからするものじゃないのか?

 ゲームでは、ある程度好感度が上がったところで選択可能となっていたけれど、今、私は告白されたぐらいなんだから、好感度マックス状態ということで、選択すべきなんだろうか。

 まぁ、どのみち、名前呼び捨てするのもなんだかなぁな感じで……ここは、やっぱり聡くんと呼んでおくべきか……。

「聡くん」

「なんか、くんをつけると子ども扱いっぽくていやです」

「……もう、さっちゃんって呼んでやる」

「止めてください」

「んじゃ、聡くんでいいわね」

本音は呼び名なんてどうだっていいんだけど、呼び捨てしちゃってもいいんだけど……なんとなく、ゲームで慣れたその呼び方がしっくりくる気がするのは、やっぱり彼を見ていないで前世のゲームの中の彼を見ていることになってしまうのだろうか、妙な罪悪感をちょっぴり感じてしまいつつ、今はそれを振り払って、

「んで? 聡くんは、部活中じゃあ、なかったんですか?」

改めて問いかけた。

「部活中でしたよ。でも、あなたの姿をみかけたらいてもたってもいられなくなって……」

「また、逃げられると思ったから?」

「ゴールデンウィーク中、垣間見ることすらできなかったんですよ? 家も近所なのに、偶然ばったりなんてことも一切ないし……」

「私の家まで知ってるのか! す、ストーカー一歩手前?」

「家ぐらい……ってか、男なんて、みんな一歩手前をうろついているものです」

「そんなばかな」

まさかそこまで思いつめていたとは思わなかった……いや、人の顔みていきなり押し倒すぐらいに思いつめていたのだから、家を探ったりどこかで出会えないかと近所をうろつくのは考えられることか? なんというか、本当に、一歩間違えればストーカーか。

 ちょっと頭を抱えたいところだけれど、残念ながら片手は彼にとられたまま、片手は荷物を抱えていて、それすらもままならない。

「まぁ、どのみち、今体育館に戻ったところで、俺、まじめに部活できませんよ」

「なんだ? 私のせいなのか?」

当然でしょうとばかりの言葉に反発し、どさくさまぎれに振り払おうとしたものの、しっかりつかまれたままのその手。意地になって荷物を下し、その手で引きはがそうとしてみるも、がっちりつかまれたその手は、どうにもはがれそうにない。

「部活が終わるまで待っていてくれるわけないし、待たせるのも心配だし、しょうがないでしょう」

「何がしょうがないんだ」

「綾香が今まで俺のこと無視して逃げ回ってたからでしょう。やっとゲットできたってなったら、気持ちが浮ついてしょうがねぇんだもん」

「なに調子こいて名前呼び捨てにしてるのかな?」

「……綾香さんと、離れがたいんです」

しょうがないわねぇと、ため息ついて納得してしまいそうな自分が怖い。そこは突っぱねなきゃいけないとこでしょと思いつつ、ほだされてしまいそうになる。ストーカー、顔がよければ王子様ってとこか? いや、彼の場合は王子様より、騎士か傭兵って方が似合いだけど……ってそういう話じゃなく……。

「とりあえず着替えだけでもしてきなさいよ」

そう言うと、彼は、私の荷物を持ち、私の手を握ったまま、部活棟へと足を向けた。そうして、バスケ部更衣室のドアを開けるべく、やっと私の手を離したと思ったら、荷物を持ったまま入っていってしまった。どうやら私の荷物は、人質ならぬ物質になったようだ。

 ただ待っててと言われたら、まぁ、十中八九、先に帰っていただろうけど……なんだか、私の手の内を読まれているようで、ちょっと面白くない。もうちょっと信用しろよと言いたいとろだけれど、信用したら裏切る気満々なので、しょうがないのだろう。

 お出かけ前の女性の身支度じゃあるまいし、そう時間もかかるまいと待ち姿勢でドアの脇にもたれかかろうとしたところで、聞こえてきた声にあわててドアを開けた。

「わっ、先輩!」

「ごめん」

中では、今、まさにランニングを脱いでいる最中の彼の姿があったけれど、この際しょうがない。部屋の中に押し入って、すぐさまドアを閉める。もちろん、彼の着替えを覗く気なんてさらさらないので、ドアにはりつく具合で彼に背を向けたのだけど、頭の中では彼の腹筋がちらちらした。

 いやぁ、初めて生で見ましたよ、八つに割れた腹筋って……なんてこと、考えちゃいけないと頭を振り立て、改めて外の気配を探ってみれば、声は丁度ドアの前を通り過ぎていくところ。

「誰かいたんですか?」

「……ん? えっと……誰も……」

と言ったところで、ドアノブをしっかり握りこんだ不審な行動のままでは、信じてくれるわけがない。

 いつの間に側まできていたのか、彼の手が脇からノブを奪い、私を押しのけて細く開く。その向こうにいるのは、高木遥と見知らぬ女子生徒で、肩など組んでなんとも親しげだ。こちらに気づく様子もなく、そのまま中庭の方へと抜けてゆく。

 過剰な反応だったかとは思うものの、ばったり会って「何してるの?」とか問いかけられたりしたくない。ちょっとでも興味を持たれたくなんてないし、当然会話だってしたくない。

 思わずほっと息をついたところで、不思議そうにこちらを見る聡くんのほうを見て……上半身裸を目の当りにし、赤面した。着替えていたのだから当然なのだけれど、さっきまで、高木遥に気を取られ過ぎていて、まったく気づかなかったのだけれども……改めて目の前にさらされたその筋肉質な上半身、目のやり場に困ってしまう。

 いや、むしろ、いいチャンスだからまじまじと見るべきか? 一瞬血迷った考えが浮かぶが、実行するわけにはいくまい。

「追いかけられてでもいるんですか? そういえば、我妻先生からも……」

「いや、そんなんじゃないの」

あからさまに目を逸らしながらに言うセリフとしては、一番不審なセリフだったかもしれない。でも、さすがに彼をまっすぐ見つめて言うには、彼の恰好が似つかわしくないのだからしょうがない。

「何を隠しているんですか?」

案の定というか当然というか、彼は私の態度を不審に思ったらしく、ずいっと近づき問い詰めてくる。だけども待ちなさい、その恰好でずいずい近づいてきちゃダメでしょう。

「ってか、キミは隠しなさい」

もちろん、男の裸を見たことがないわけではない。うちの父など、夏になれば、しょっちゅう短パンだけで目の前をうろついていたりするのだけれど……なんというか、肉体があまりに違い過ぎて、思わず照れてしまう。

「……別に、全裸ってわけじゃないし……ってか……何? 先輩、ドキドキしてるんですか?」

壁ドンよろしく、彼はドアノブを持たぬ方の手もドアにつけ、私をその間に抱え込んで、顔を近づけてくる。思わず身じろぎするが、逃げられるわけもない。

 熱い吐息と、肌から立ち上る熱気というかぬくもりというか……ちょっと、貞操の危機はさったんじゃないの? と思わず誰ともなく問いかけてみたくなる。

 ドキドキと心臓ははしゃぎまくり、そのくせその胸元にすり寄りたいような、妙な魅力にくらくらしてしまう。

「でも、もう一回押し倒されるっつうのは却下だよ」

「……どうしても?」

「どうしても」

チッと聡くんの舌打ちが聞こえるが、そこは譲ってやる気などさらさらない。

姫崎凛?:ヒロイン:未遭遇 ・ 駿河裕司:学園王子様:未遭遇

清水慶介:生徒会長:未遭遇 ・ 大野聡:ちょいワル:好感度MAX

谷津タケル:後輩:未遭遇 ・ 我妻圭吾:英語教師:???

高木遥:先輩:興味? ・ ???:???:未遭遇

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