表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

4.心配されちゃいました

20150520 誤字修正

20150209 主人公の名前を間違えてたので直しました、うじゃ。

20150210 後書き追加。

 ゴールデンウィーク明けの木曜日の放課後、どこかけだるい気持ちを残しての授業にくたびれ、早々に家に帰ろうと思っていた。

 部活もなにもかもすっぽかし、ついでにちょっと近道してやろうという気持ちを起こして、下駄箱に上履きを入れたら、靴を持って渡り廊下まで移動した。玄関から駐輪場まで行くには校舎を迂回しなくてはならず、校舎の中をショートカットして中庭を通るのが、一番の近道になる。当然ながら本当は禁止されているのだけれど、体育倉庫や部活棟の脇を通ることから人目につきにくいからと、よく利用していた。

 でも、体育倉庫の脇あたりで不意に後ろから手を取られ、驚いてとり落とした荷物を気にかけている隙に、体育倉庫の中に連れ込まれ、陸上マットの上に放り出された。そうしてのしかかってきたのが、後輩の大野聡くん。

 まさかのフライングサブリミナルで好意を寄せられていたようだが、押し倒されるとは思ってもみなかった。ひとまず落ち着かせ、告白を受け入れてみたのだけれど……と、説明する私の言葉に、私の友達は、私の背後に立つ大野聡くんをジロリと睨みつけた。


 モブなのだから目立てはいけないし、攻略相手はもちろんのこと、ゲームキャラたちとは関わりたくないと思っているからといって、交友関係一切切り捨てようなんてことは考えてはいない。せっかくの高校生活、友達と買い食いだってしたいし、カラオケやショッピングだって楽しみたい。可能ならば彼氏だって欲しいと思っていた。

 まぁ、彼氏はともかく……教室では、当たり前の如くに出席番号順に並ばされた。私の名前は佐藤で、その後ろにいたのが、彼女……東雲杏奈ちゃんなわけだ。

 くりくりっとした大きな目に、笑うように弧を描いた眉、ちっちゃな鼻とそこに散るそばかすがコンプレックスなかわいい子。背中にいつもみつあみを揺らし、華奢な体に似合わず力持ちで運動神経抜群な彼女は、これがギャルゲーだったら、確実に元気っ子ヒロインに選ばれそうな子だ。

 出席番号の前後だなんていう、何の捻りも面白みもない関係ながら、登校一日目から気が合い、いつの間にか一番の友達になっていた。さすがに前世がどうのという話はしていないものの、私が高木遥かを筆頭に、攻略キャラたちから逃げ回っているのを察して、何も聞かずごまかしてくれたりかくまってくれたりしてくれる。

「どうしたのって聞いて、さっき押し倒されたなんていう話を聞いたら、全く大丈夫に思えないんだけど……しかも、片手つかまれてるし」

とりあえず体育倉庫から出ようと提案し、放り出していた荷物を持ち上げたところで、杏奈から声をかけられた。陸上部の彼女は、どうやら本日もまじめに部活中で、体育倉庫に用があったらしい。もう少しぐずぐずしていたら、ヤバイとこ見られたかと思うと、本当にひやひやものだ。

 思わず彼の姿を隠そうと画策してしまったものの、私より一回りは確実に大きい彼を、私の体で隠せられるわけがなく、彼女はすぐに私の手をとり、彼から引き剥がそうとするかのように引っ張ってきた。荷物をちゃんと抱え込んでいなかったこともあり、危うく体当たり状態になってしまいそうになるも、なんとか堪えて向けた説明は、全くもって安心させる効果がなかったらしい。

「まぁ、とりあえず、付き合うことになったから」

なだめるようにそう言うも、彼女はちらともこちらを見ずに、大野くんのことを睨んでいる。

「いいの? 綾、あんなに嫌がってたじゃない」

頑なに信用しないその態度はともかくとして、彼女の言葉が響いたようで、地味に、大野くんが傷ついたような顔をする。

「……嫌がってはいないよ、ただ、面倒くさかっただけ」

言った言葉が追い討ちになったか、彼は目に見えてがっくりとうなだれた。

 しょうがないじゃないか、本音なんだから……高校受験の時もそうだったが、自分が行くべき道から外れると、熱を出したり天候が悪化したり、いいことナシなのだ。そんな大きなことはめったにないのだけれど、一度、ヒロインの家にあたりをつけて探しに行った折、突然の雷雨に見舞われ、行っちゃいけないんだと納得した。まぁ、おそらく、今行ったところで、誰も住んでいない状態にあるのが落ちだろうに、ダメな行動には天変地異まで起きて止められてしまう。

 だから、下手に関わろうとして、それがダメな行動だった場合、今度は何が起きるのか、怖くてしょうがないのだ。さっきだって、もしも「絶対付き合わない」と頑なに言ったら、倉庫の中に閉じ込められてしまったかもしれない。

「まぁ……綾がいいならいいんだけど……ってか、まさか! 脅された? 脅迫? 恐喝? なんか変な画像取られて、付き合わないならネットに流すぞってやつ?」

「なんなのよ、最後のその妙に具体的は犯罪例は……」

疑惑の視線を向ける彼女に、私は苦笑しつつふるふると首を振って見せた。

 確かに押し倒されて告白だなんて、情熱的通り越して犯罪的だし、彼自身がどうこうより、この道に進まなきゃいけないんだろうな的考えで受け入れたわけなので、まっとうな付き合い方ではないのは確かだけれど……。

「違う違う、まぁ、半分ぐらい否定しきれないけど、違うわよ」

半分ぐらいは、ちゃんと気持ちがあったりするんだから、多分きっと、それでいいんでしょう。まぁ、彼自身にというよりも、前世でゲームしている際の気持ちなので、それも偽りと言えば偽り……でも、それを言ってしまえば、いきなり告白されて付き合う場合、奇跡でもなければ気持ちが通じ合ってなんてこと、ありえないのだからそんなものでしょう。

 これから……もちろん、短い期間になってしまう恐れは多々あるのだけれど、これから少しでもわかっていければ、それでいいと思うんだ。

 苦笑交じりの私の表情に何を感じたのか、杏奈は私を通り越して大野くんに対し、挑むような視線を向けた。

「半分は否定しないのなら、断固反対しますよ」

「ちょっと、しないでよ……私が納得してるんだから」

「……本当に脅迫されたり、恐喝されたりしてないのね?」

「ごめんなさい、心配かけて。本当に大丈夫です」

「ちっとも大丈夫そうに見えないんだけど?」

じいぃっと、それこそ穴でもあけてやろうとするように、考えていることを透かし見てやろうとでもするように、きつく睨みつける杏奈。そして、それを受け止めるように、まっすぐ見つめ返している大野くん。

 間に挟まれた私は、どうしていいのやらわからなくなってくる。

 おかしいな、私の問題だったはずなんだけど……なんで、友人と彼との方が熱く見つめあっているんだろう……そんなことを考えていると、ちろっと彼女が私を見て、大きくため息をついた。

「とりあえず、綾が良いなら良いんだけど……泣かせたりしたら、殺すわよ」

物騒な言葉に、思わずびっくりしてしまう。大げさに言っただけかもしれないけれど、普段そんな口ぶりをする子じゃないだけに、本気で目を丸めてしまう。

「本当に、大丈夫よ」

あなたは私の保護者じゃないんだから、そこまで言わなくとも……と思いつつ、ありがたいなという気持ちが心を占めていく。

 ともかく納得してくれたならよかったと、彼女から離れようとするが、なんでだか背中に回った手を離してくれようとはしない。しかも、片手はまだ彼に捕まったままだ。

「すんません……」

どうしようかなぁなんて思っていると、恐る恐るというように、彼が口を開いた。

「な、何言う気?」

「あの……あのっ、俺に、綾香先輩を下さい」

「どこのお父さん挨拶!」

なぜ親御さんへのご挨拶じみた話になっているのか、とりあえず、その言葉を受けて、杏奈は私のことを離してくれた。どうやら納得してくれたらしいということに、私よりも大野くんが盛大なため息をつく。

「あ、そうだ……我妻が呼んでたよ、もう帰ったって言っといたから、早く帰りな」

とりあえず、これで用は済んだとばかり、体育倉庫の中へ向かう杏奈が、ふと振り返って言った言葉に、思わずドキリとしてしまう。

「……う、うん、ありがとう」

なぜだろうか、高木遥も英語の我妻先生も、微妙にこちらを気にしているような気がしてならない。

 大野聡は、とりあえず私を好きだったらしいということはわかったものの、他のやつらはいったい何を考えているのか……ってか、普通に考えて、我妻先生はテストの点数のことだろうけど……まぁ、ともかく、これ以上変なことは起きてくれるなと、思わず盛大なため息をこぼしてしまった。

姫崎凛?:ヒロイン:未遭遇 ・ 駿河裕司:学園王子様:未遭遇

清水慶介:生徒会長:未遭遇 ・ 大野聡:ちょいワル:好感度MAX

谷津タケル:後輩:未遭遇 ・ 我妻圭吾:英語教師:???

高木遥:先輩:興味? ・ ???:???:未遭遇

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ