表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/40

27.もっと実験です

20150404:ひどいうっかりミスをしてしまっていたので修正……主人公の名前間違えるとは……すみません。

 好感度はMAXで、人気のない図書室の中、見詰め合っているこの状況……確かに、おかしなことかもしれない。状況的に考えれば、イベント中そのものといった感じで、このまま告白でもしてしまうのかなんてこと、思わず頭の端に浮かんでしまうが……そんなわけがない。

 心臓が、どくどくと苦しいぐらいに早鐘を打ち、夕暮れ時だからなんて言い訳が利かないぐらい、頬が紅潮しているのが自分でもわかる。

「どうです?」

問いかけながら、彼は、私の手をそっと握ってきた。まるで硝子細工でも扱うように、そっとそっと救うように私の手を取り、意味有りげに見つめてくる。

 彼の目には、私から彼への好感度の変動も見えているのだろう、なんとも楽しげなその表情に、ぶん殴ってやりたくなる反面、まるで硬直したように体の自由が利かない。

 手のひらから伝わる彼のぬくもりと、彼の視線とに囚われて、ただ、ぽーっと夢の中を漂っている気分。どうしていいかわからず、ただただ彼を見つめていると、彼の手が、そっと私の頬を撫でた。

「ちなみに、今、ゼロですから、本当に数値通りなら、僕のこと嫌悪してるはずですよ」

「え?」

「今、こうしていても嫌でないのなら、やっぱり好感度なんて効果ないってことです」

そっと頬に触れるその手に、嫌な気持ちなんて欠片もない。ということは、私自信、好感度の変動の影響なんて欠片もないということか。くすぐったいその感触に、振り払わなくてはと思うのは、嫌だからではなく、いけないと思うからだけ……まずい、これはまずいと頭の端で思うのに、なんだか体がやたらに怠慢になっている。

 このままキスでもしてしまいそうなぐらい、覗き込んでくる彼の表情は妖しいもの。むしろ、私自信が求めてしまいかねないぐらい、状況に飲まれているというか、流されているというか……いけないとわかっていながら、ただくすぐったさに耐えるばかり。

「そんな、見る見る好感度あげてかないでくださいよ」

「何、それ」

「頭の中で、幸せとか楽しいとか感じると出てくる信号がありまして……それを計測し、一定数値以上の場合、接触ないしは思考をしている相手の好感度が変動することになっています。好感度のパラメーターは、その変動結果でしかないので、今のように、計算式によって1秒に10ポイント減少するという命令文を書いたところで、あなた自身には、何の変化もありません。ただ、これにより、イベントが発生しなくなる……という程度でしょう」

「今も、減り続けているの?」

「21、26、32、23、37、31、33……減るよりも、増える方が早いみたいなんですが、どうでしょう」

「ふ、増やしてなんていません!」

ちゃかすような彼の言葉で、ようやっと夢心地から覚める力を得て、頬をくすぐっていたその手を払った。

 1秒に10減少しているのに、どうやら、私の気持ちは、1秒に20も30も急上昇してしまっているらしい。そんな状態なら、好感度MAXなんて簡単な話なんじゃないかって思ってしまう。ゲームバランスとかどうなんだ、おもいっきり口説いたら、一回でMAXにとかなりかねないぞ。

 まぁ、数値がMAXになったところで、ただイベント発生条件を満たすだけというのなら、確かに意味などないと言えるかもしれない。

 彼は、頭の上で軽く手を払うような仕草をして、プリントオフだとかクリアーだとかカットだとかいくつかの言葉を呟き、ホッと小さく息を吐いた。安堵が伺えるのは、彼自身にも、ちょっと不安があったのだろう。

「ちなみに、知力の数値をあげてみても、頭がよくなったりもしませんよ? テストの点数も、本当に受けたテストを採点してますから、影響ないですし」

「そんなこと願いませんって」

「毎日腹筋すれば、数値上では体力も上昇しますが、本当に体力がつくわけでもありません。ちなみに、本体は……」

「え?」

「本体は、おそらく病院の中でしょうね」

言われてはじめて気がついた。私は、死んでこのゲームの世界に転生しているのだと思っていたのだけれど、そうじゃないんだってことに。

 そうだ、外部PCだとかアクセスだとか、つまりは、自分というものがあって、ゲームに、PCに接続していて……と考えるのなら、当然だ、私は死んでいないし、佐藤綾香なんていう人間はいはしない。

 そもそも、私が思考し、私が行動し、私が……私という存在が、あるんだということに、いまさらながらに気がついた。

「え? え? ……私は、生きている? 私……藤田皐月は、生きているの?」

「本名は、皐月さんって言うんですか……えぇ、生きていますし、現実世界で入院中でしょうし、現在進行形で危ない状況ではあるのでしょうが……生きています」

そう、皐月……私、藤田皐月は、生きている……なんだかピンとこなかったことが、やっと、頭の中で少しづつ理解できてきたような気がする。

「なんでそんなことがわかるの?」

「あなた自身が、オブジェクトを操作し、発言を響かせ、思考結果をこうして表現しているからです」

「い、意味わかんないって」

「あなたという存在がちゃんと行動している以上、インプットがある……脳が信号を送っているのです。だから、生きていると言えるのですよ。おそらく、あなたの端末は抜かれなかったのでしょう。僕も、聡も……言うなれば、ここで生活しているNPC以外のキャラ全てが、生き残っているといっても過言ではありません……おそらく、接続を絶たれた面々の意識が戻らなかったのでしょう」

「は?」

「……この世界が、ゲームだと知っていたのではなかったのですか? ……記憶障害は、僕にもかなり出ていますが、みんな酷いものだ、ゲームであることすら忘れている始末……その中で、あなたは、ずいぶんと理解しているようでしたが……」

「わ……わかってた……わ……でも……」

わかっていた、わかっているつもりだった、でも、なんだか、かなり間違えていたようだ。

 そうか、私の体は入院中で、ずっと、寝ている状況なのだろう。それは、同じ状況の人たちの意識が戻らないことにより、行われた救済処置で、生命維持をしながら、意識はネットにつながれたまま……そのままでは死に瀕しているということか。

 舞台は……舞台データは、イントラネットを通じて接続している頭脳に、直接デジタルデータを閲覧させているのだろう。そして、体を動かすといった信号を送ることにより、歩いたり発声したり……つまりは、全ては私の頭の中で展開され、外部PCがその思考を読み取って、パラメーターを変動させ、その変動結果を展開している。私の体は動かずに、脳の信号をキャッチした外部PCが、その内容を解析し、それに合わせたデータを送信してくる……それを、私の脳が自分に都合がいいように『見て』いるんだ……つまりは、私は、生きている。

 複数の……NPC以外の複数の人間がアクセスしたサーバーの中のデータは、どれだけ膨大な量なのだろうか。各プレイヤーから送信されてくるデータを解析し、こうして対話することすら可能としている。どれだけすごいシステムなのか……そういえば、世界初のどうのという説明を、受けた気がする。

 私は、どれだけ忘れてしまっていたのだろう。

 おそらく、35歳の夏から記憶がないのは……そのゲームに参加できる権利を得るかなんかして、説明会か何かを受けて、装置に触れて……そういった時間が消えてしまっているからなのだろう。そして、死んでいない私は、そのあたり記憶障害によってい忘れてしまっている……聡くんたちも、きっと、忘れてしまっているだけで、一緒に説明を受けたりしているのかもしれない。

 帰れる現実がある、その事実に、今、初めて気が付きドキドキしていると、彼が隣で笑っていた。

姫崎凛?:ヒロイン:未遭遇 ・ 駿河裕司:学園王子様:お助けマン ・ 清水慶介:生徒会長:魔法使い

大野聡:ちょいワル:恋人 ・ 谷津タケル:後輩:未遭遇 ・ 我妻圭吾:英語教師:監視中?

高木遥:先輩:疑惑 ・ ???:監視者:嫌悪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ