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25.知ってること

 清水慶介に接触するのは、比較的簡単だ。

 ゲーム中でも、休みの日のフリー行動中、移動できる場所が多く、さらにはランダム要素が高いことから、必ずしも目的の人物に会えるというものではなかった。ところが彼だけは、図書館へ行けばたいてい見つけることができる。そこでは彼以外のイベントが、ほぼないということと、そこでの彼との遭遇イベントが、彼の総イベントの60%を占めていることが、その原因と言えよう。

 会うだけ、イベントを発生させるだけならば、彼の攻略はかなり楽だ……でも、その彼が、三人のメインヒーローの中で、一番攻略が難しいと言わしめるのがパラメーター条件で……彼の攻略には、学年10位以内に入る知力と、気品や気遣いのパラメーターが高いことが必須条件になる。だけども、知力を上げる行動は、気品と気遣いを下げ、気品と気遣いを上げる行動は、知力を下げてしまう……結果、それ以外のパラメーターを捨てる必要がある。その為、彼の攻略をしていると、他のキャラへの浮気が難しい。まぁ、継承できるアイテムで、知力アップできるものがあるので、それを使いまくればハーレムも可能だけどね。

 また、彼のイベントの選択肢には、選ぶと関係回復不可能なものが、数件散らばっていたりする。しかも、その場では無難……いや、むしろ結構好印象っぽく見えたりするので、うっかり選択ミスしていることに気が付かず、セーブをしてしまうこともしばしば……実は、難易度の高いほかのキャラより厄介だと有名だった。

 とはいえ、攻略をしていると、実はけっこう情熱的だったり意地悪だったりするところが見えてきて、普段は物静かで優しげな分、そのギャップが良かったりする。突然本棚の陰でキスして来たり、クラスメイトに肩を叩かれていたからと、肩や腕を撫でまわして来たり、指先を舐めたり……いや、ちょっとエロイんですよ。ニコニコと微笑みながら言うドギツイセリフに、色んな意味でドキッとさせられたりしましたとも。

 ちなみに、選択できる呼び名には「ドSメガネ」とか……生徒会長として人望熱く、先生からの覚えもめでたいが、仲良くなると腹黒なところを見せてくることから「リバーシー慶介」とかいうものまであったりする。

 まぁ……そういう人だから、リアルではあまり親しくしたくないところなのだけど……何か知っているらしい彼、放置していたら悪化しかしなさそうな現状に、少しでも情報が欲しいところであればしょうがない。


 休日を待って図書館へ行ってもいいのだけれど、どうしても早く話したかったので、放課後に学校の図書館に寄ってみた。ゲーム中、図書室に通っているなんて描写はなかったけれど、図書委員の活動中、何度か見かけていた。もちろん接触したくなかったので、裏での作業を手伝ったりして、受付に立つことすらしなかったけれど、何度かすれ違うことぐらいはあった。

 おそらくいるだろうと思っていたけれど、案の定というか予感的中というか、彼は、一人で図書室のテーブルを占領し、ゆったりと読書を楽しんでいた。

 カウンターには、さぼっているのか奥で作業中なのか、受付の子すらいない。まぁ、別に受付に立つ子がいなくても、自分で貸出カードに名前を書いて残していってくれればいいので問題はない。放課後は、7時ごろまで鍵が開いているものの、ほとんど人がくることはなく、受付番もなおざりになっている。

 今も、おそらく清水慶介しかいないのだろう、それは、奇妙な話をする上で好都合だ。

 さてと深呼吸して入口の戸を開けると、思いのほか大きな音がして、彼がこちらを見た。そうして、わざわざ立ち上がると、頭を下げてくる。

「……あや……えぇっと……すみません、名前、存じ上げませんで」

おそらく私の名前を呼びかけて、あわてて取り繕うような言い方をする彼に、ピンときた。聡くんが、私のことを「綾香さんが綾香さんが」と彼に話していたのだろう。おそらく、それこそ聞き覚えてしまうぐらい言っていて、思わずその名を呼んだというところだろう。

「聡くん……ね」

「……ご名答です」

何をとは言わなかったのに、言わんとしていることを察したか、苦笑いしながら頷いてくれる。

「ついでに言うなら、きっと綾香さんが知られたくないことも聞いてますよ。色ボケのあいつの口には、戸が立ちません」

言わずもがなな蛇足を付けるのは、わざとなのか意地悪なのか……絶対、こいつのことだから、うっかりだとかいうかわいらしい話ではないのだろう。さっきの失態に対する八つ当たりなのか、私をからかいたいとかいう思いに違いない。

 何を言っていたのかは知らないけれど、下手すると、キスしたことすら筒抜けかもしれない。どんな風にとか、柔らかかったとか言っていたら、どうしてやろうか……っていうか、それを聞いてこいつはどんな感情を覚えたのやら……。

「もしかして、それで好感度があがったりとかする?」

なんとなしそんなことを問いかけてみると、彼は、あからさまに驚いたような顔。一度大きく見開いて、何度か瞬きを繰り返した後、自嘲的な笑いを浮かべて口を開く。

「そうですね、お会いしたことがないにも関わらず、38ありますから」

軽く頬を染め、メガネを押し上げる手に隠れるようにしながら言う様子は、なるほど、照れてのことだったのかと思うと、ちょっとかわいく思えてしまう。

 なんで人の色恋話を聞いて、その相手に好感抱くのかというのはおいといて……何を聞いて、どう好感を感じたのかというのはおいといて……その好感度をどうするのかというのも含めて、なにもかもほっぽらかしにしたままに、とりあえず好感度はどういったものなのかが気になってくる。

「……ちなみに、私の……は?」

「読み上げても?」

「止めてください」

どうやら彼は、聡くんには検索できなかった好感度がわかるらしい。

 しかも、彼自身のものだけではなく、私のデータも丸見えらしい……まぁ、数値にあらわされたもので、どこまでわかるものかは知らないが、少なくとも、当然かな聡くんへの好感度が高いことはバレバレだろう。

「どこまで知っているの?」

「それは、私が聞きたいところですね」

おそらく、私がこの世界を疑っていることぐらいは聞いているのだろう、私も、彼が何かを知っているという、あまりにもあやふやな話しか知らない。

「……私は、この世界がゲームだと知っています」

「どこぞの……まぁ、いいでしょう、はい、私も、それは知っています」

「空キス……『青空の贈り物~キスから始まる物語~』っていうタイトルも……」

タイトルを出していいものか、思わず少し悩んでしまいつつの言葉に、彼は重々しく頷いた。どうやら、彼もまた、そのタイトルも知っているらしい。

 女性向けシミュレーションゲームだったことを考えても、男性が知っているということに、ちょっとだけ違和感を感じるけれど……まぁ、変なところシビアなパラメーター管理を面白がった男性ユーザーも多かったことを考えれば、居ないとも言い切れまい。

「あとは……あなたとか、聡くんとかが、攻略対象なこと……と、その攻略方法ぐらい」

「攻略、しますか?」

本人を目の前にして、ちょっと言い難いなぁと思いつつ告げれば、彼は、ふっとその表情をほころばせ、どこか色めいたその眼差しを投げかけてくる。ついついドキッとしてしまったことは、とりあえず呑み込んでおくことにした。まるで口説かれているような気持になるけれど、そんなものにポーッとなっているわけにはいかない。

「御免こうむる」

思わず言ってしまった途端、彼がはじけたように笑い出した。言ったセリフが妙なのは、思わずテンパってしまっていたせい。失礼にならない程度の否定の言葉をと思ったのに、出てきたのはどきっぱりの否定の言葉だけだった。

「僕も、聡の彼女じゃなかったら、あなたを本気で攻略したいって思うところですがね……あなたは、残念ながら聡の彼女だ、攻略されるのは御免ですよ。ハーレム目指すっていうのなら、全力で妨害させていただきます」

「私を攻略できるわけないじゃない、ただのモブよ?」

「この世界は、ゲームであって……ゲームではない。あなたも、私も、人間です。攻略することが、できてしまうんですよ」

どうしてこの人は、まっすぐに私を見て、そういうことを言うのだろうか。思わず妙な欲が湧き出しそうになってしまうが、そんなものに捕まるわけにはいかない。いかないというのに、ドキドキしてしょうがない。

「しないでよ」

声が思わず小さくなってしまったけれど、彼が私を攻略しようと言っているわけじゃないのに、むしろ、それを期待してしまっているような自分に気づいてしまう。

 最低だ、聡くんという彼氏がいるのに、他の男に浮ついた気持ちを持つだなんて……ダメなのに、なんだか妙に色っぽいというか、意地悪い言い方をされて、翻弄されている自分がバカとしか思えない。

「……綾香さん、好感度、いじってもいいですか?」

姫崎凛?:ヒロイン:未遭遇 ・ 駿河裕司:学園王子様:お助けマン ・ 清水慶介:生徒会長:情報提供

大野聡:ちょいワル:恋人 ・ 谷津タケル:後輩:未遭遇 ・ 我妻圭吾:英語教師:監視中?

高木遥:先輩:疑惑 ・ ???:???:嫌悪

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