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22.位置情報解析

20150326:ちょっと重複説明になっていた部分を削除し、別のシステム説明にしました。

「綾香さん……とりあえず、いろいろ……話、しますから」

謎のない完璧ヒーロー駿河マンから、呼び出しアドレスを入手し、バイバイしたところで、聡くんがなんとも言い難そうに切り出してきた。

 思いつめたようなその表情、話初めてはみたものの、どう続けたらいいのか、頭を捻らせているよう。小首を傾げ気味に、口を開いたり閉じたり……どうにも言いあぐねているのだろう。

 なんで私の居場所を知ることができるのか、問い詰めたその方法を説明しようとしてくれているのだろうけど、なかなか続きが出てこない。

 うーんという唸り声に、私が焦れて先を促しそうになったところで、聡くんがパッと顔を上げ、なんともいえぬ苦笑を向ける。

「ってか、俺も、ちゃんとわかってるってわけじゃないんすよ、ホント、だから、なんでって……説明しろって言われても、どう説明したものかわかんねぇ……ホントどう言えばいいかわかんねぇっていうのが、言えない一番の理由なんっす……なんですよ」

どうでもいいことなんだけど、彼が言いなおしたその「なんですよ」という言葉を聞いて初めて、彼が綿sと話をする時、口調に気を付けているということに気が付いた。そういえば、ゲーム中でも「面倒くせぇ」とか「やっべ」とかが口調の彼が、私の前ではきちんとですます調でしゃべることには気づいていた。でも、先輩という立場上、あまり深くは考えていなかった。そこに距離を感じてさびしく思うのも、ずいぶんと身勝手な話だろう。

 そもそも、名前を呼び捨てにすることすら許さず……距離をとり、壁をつくっているのはこちらの方なのだから……。

 いつか、こっぴどく振らなければいけない。でも、付き合っている間は楽しもう、とことんつきあってやろうとか言っておきながら、どうしても、予防線を張ってしまっている……それも愚かな話だななんて思っていたら、まだ続いているぐちぐち言い訳がましい「わからんのんですよ」話を大半聞き流してしまっていた。

「……そうだな、駿河でいいや……」

「何が?」

「『コム』『どこ?』『駿河裕也』」

何を駿河くんに決めたのやら、突然そんなことを言い出すと、聡くんは上の方へと視線を滑らせ、妙に区切って言葉を紡いだ。

「中央? あぁ、すぐそこの階段を下りてるよ」

「え?」

思わず問い返すと、そこそこっとばかりに中央階段の入り口を指差して見せる。

 そこに駿河くんの姿があるわけではないけれど、ついさっきそこへ向かって行たのだから、そりゃ、そこを下りて行っているところだろう。

 そんな当然のことを改まって言われても、何をかいわんやというところだ。

「そりゃ、さっきそっち歩いて行ったし……」

思わず口に出して言ってしまって、改めて彼の方を向くと、彼は額のあたりをトントンッと指でつついて見せた。

「ほんの一瞬なんですけど……俺の頭の中に、シーオーエム……COM、円マーク、Where 、円マーク、中央階段2階って金色の文字が出るんです」

指差すあたりをじっと見てみるが、そこに文字など見えはしない。そのあたりに見えるというだけなので、天井あたりとか聡くん向かい側……つまり私の背後になにかと思って、思わずきょろきょろしてしまうが、当然ながらというか、やっぱりというか、何も見えはしない。

 もう一度やって見せてと指を立てて促して、同じ言葉を言わせて見せるも、やっぱりどこにも何も表示されたりはしない。どうやら、それが見えるのは、本当に彼の頭の中のようだ。

 それにしても、『COM¥Where¥中央階段2階』とは……なんともPC的というかMS-DOS的というか……。

 簡易システム命令文の発声による自己認識が電子信号となって送信されると、それを受けたサーバープログラムから返されたデータは、視神経を刺激し、文字として表示することに成功したとかなんとか……まるでその目で見ているかのように表示することが可能となる。それは、映像や文字以外にも、アラームとして……なんて妙な言葉の羅列が頭の中が暴走しかけたところに、聡くんが言葉を続ける。

「あ、ほんの一瞬ですし、他の連中は見えてないですし、ホント、頭の中で文字が見えるというか、表示されるというか……パッと出て、すぐ消えちゃう妙なの……はじめ、気のせいかと思ったんですが、ちゃんと文字で、そのっ……わかっかなぁ……こう、えぇっと……あ~……俺もわからねぇっす」

一生懸命説明しようとしてくれているのだろう聡くん、思考放棄の言葉を告げて、がくっとうなだれた。

 本当に、わからない事をがんばって言ってくれているのだろうとわかるから、残念ながら理解はできないながら、ちょっと、可愛らしく思えてしまう。思わずその頭を、そっと撫でてやると、ほっとしたように、彼の肩から力が抜けていくのが見えた。

「なんでとか、どうなってるのとか、全くわかっちゃいねぇんですが、まぁ、その……便利なんで、ちょっと活用してみたり……も、してまして……」

「どこにいるのかっていうのは、我妻先生でも、誰でもいいの?」

「あれ? 先生の下の名前ってなんでしたっけ?」

一瞬期待をしてしまったものの、どうやら、彼にとって我妻先生は、下の名前も忘れてしまう程度のキャラらしい。まぁ、先生の下の名前って、呼ぶチャンスなんてそうそうないから、忘れて当然っちゃ当然なのかもしれないけど……。

「……まぁ、あの、フルネームがわかって、俺が知ってるひとなら、大体わかるっぽいです。でも、なんっつぅか、けっこう大まかで……『屋上』とか『体育館』とか、広い場所だと、そのどのあたりにいるかまではわからないんですよ。それに、文字で出るんで知らない場所が出ることもありますし、読めなかったりしますし、そこへ行く手段がわからないって場合も多々あります。探しにいけない場所だってありますし……自宅ベッドとか……」

「……それさぁ……私が、自宅ベッドにいるってわかって、寝てる姿とか想像した?」

「すんません」

もしかして、それをネタに妄想してるんじゃぁなんて思って聞いたら、事実そうだったようだ。ストーカーまがいというか、やっぱりそういうところで妙に喜ばれてたかとか思うと、ちょっとあきれてしまう。まぁ、ベッドとか風呂場とか、ちょっと恥ずかしくはあるけれど、聡くんならいいかとか、思ってしまう自分がちょっと嫌だ。

「やって、頭が痛いとか、疲れたりとかないの?」

「全くないっすよ」

「……そう、なら、いいんだ」

自分で気づいていないだけという可能性も捨てきれないけれど、とりあえずわかりやすい害はないらしい。

「『コム』『どこ?』『我妻圭吾』……」

聡くんにならって言ってみたけれど、どこにも何も表示されない。ということは、攻略対象者のみの、特殊コードなのかもしれない。

 便利でいいなと思ったのに、残念ながら私の攻略対象者回避には使えそうにない。

「ねぇ、聡くん、『出口』で検索してみて」

「『コム』『どこ?』『出口』……ん~? 何も出ないですよ」

「そっか……」

我妻先生の言っていた『出口』とやら、同じように検索できるなら、そんな楽なことはないだろうが、やっぱりというべきか無理だったようだ。まぁ、先生もまた、検索できるのかもしれないのだから、そんな検索で出るようなら、私に聞いてきたりしないのだろうが……。

「位置情報だけじゃなくって、好感度とかも、チェックできるのかしら」

「『コム』『好感度』『佐藤綾香』!」

「こらっ!」

「……何も見えねぇ」

何を期待していたのか、嬉々として口にした聡くんは、次の瞬間がっくりと崩れおちて、廊下に膝をついた。何をやっているのやら……というか、そもそも、場所検索が『どこ?』という命令文なあたり、『好き?』とか『らぶ?』とかいう命令文の可能性があるのだけれど……まぁ、余計なことを言って、本当に数値化されても嫌なので、言わないでおくことにしよう。

姫崎凛?:ヒロイン:未遭遇 ・ 駿河裕司:学園王子様:お助けマン ・ 清水慶介:生徒会長:未遭遇

大野聡:ちょいワル:恋人 ・ 谷津タケル:後輩:未遭遇 ・ 我妻圭吾:英語教師:監視中?

高木遥:先輩:疑惑 ・ ???:???:嫌悪?

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