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20.押し倒され属性?

20150322:最後の方、少女の声と明記し忘れたため加筆

「……助……かった……わ……」

思わずぽろっとこぼした言葉に、聡くんがますます険しい表情を向けてくる。何があったか問い詰めたいのだろうが、私の気持ちを考え問わずにいてくれているよう。一度開いた口が、ぐっと閉じるのを見て、思わず安堵した。

 何をされたのか、何があったのか、説明するのはためらわれた。

 先生に押さえつけられた……一言で言ってしまえば、そんなところだろうか。

 他の先生にでも訴えて大事にすれば、私は被害者として保護され、今後は先生からの接触も妨害してもらえるかもしれない。うまくすれば懲戒免職もあるか……でも、それは……。

 先生は、怖い。怖いのだけれど……近づきたくなどないのだけれど……。

 言えない、聡くんはもちろん、他の人にも……絶対……知られれば、聡くんは激怒するだろう……でも、聡くんだって似たようなことをしたことがあるのだから、先生だけ責めるのはどうなのだろう? ふとそんなことを考えたところで、妙なことに思い当たった。

「あれ? でも……どうして……聡くん、なんでここにいるの? なんでここにいるってわかったの?」

思わず思ったまま口にして、呆然と彼を見つめた。

 聡くんは、あっとばかりに開いた口を、あわてて手で覆った。気まずそうに逸らした視線が、ますます疑惑を掻き立てる

 そもそもの原因であるスケッチブック、そんなもの取にきたりするのではなかったとは思うが、取に行くことを、杏奈にすら話していない。帰ろうとしたところでの思いつきなので、誰も想像などできないだろうし、普通は試験期間中に美術準備室なんか行くわけないと思うだろう……それなのに、我妻先生も、聡くんも、私の居場所を知っていた。

「そういえば、屋上でも……階段上っているとこ見かけたとか言ってたけど、普通、3階の階段を上るところを見たんじゃない限り、屋上へ行くとは思わないわよね? 外に出ようって人が、なんで3階から階段を上る私の姿をみかけるの? 私のクラスは2階だし、1年生は1階でしょう? 3階なんて行く必要ないじゃない」

考えてみれば、あれやこれやと疑問が浮かんでくる。

 なんで私の居場所が正確にわかるのだろうか、なんで屋上のドアを開けて人の姿が見えなかった時、間違いなんじゃないかなんて疑いもせず、私のところまで来れたのだろうか。あれは、私が屋上にいるという確信があって、だから、屋上を隅まで探した結果、階段屋根の上まで来たのじゃないのだろうか。

 私の居場所を、聡くんが……我妻先生が……知っている?

 思わず発信機を疑って体をぱたぱた叩いてみたものの、たとえ発信機があったとしても、叩いたところで出てくるものではあるまい。

「そうよ、そもそも、初めて会った時だって、偶然というには、あまりにもタイミングがよかったんじゃない?」

「そ、それは……」

「聡くんは、私の居場所を知ることのできる、何かがあるの? それも、確信できるレベルでわかる何かが……」

先生が言っていた、『大野聡が何かの鍵というわけじゃないのか?』という言葉が、不意に思い出される。いや、先生だって私の居場所を知ることが出来る以上、先生が求める答えは、そこなんかじゃないんだろう、っていうか、何だ、何なんだ、いったい……なんだか頭がパンクしそうだ、何がなんだかわからない。

 『出口』とやらを求めている我妻先生、そして、私を好きだという聡くん、そして、私が避けまくっている高木遥……3人の共通点といえば、攻略相手ということだ。攻略相手に何かあるのか、攻略相手は何か特別なのか……そりゃまぁ、好感度とかのパラメーターがある点ではかなり特別と言えよう。でも、モブに好感度あげなんてできないと思っていたから、パラメーターのことすら考えたことがなかった。

 一瞬、マスターコードという言葉が頭の端を掠めた。

 あれだ、ゲームのチート。経験値MAXや所持金MAXなんかの改造コードを動作させるためのマスターキーみたいなコード……あれがなくては改造コードは動かないし、あれがあれば大抵の数値を変更したりチェックしたりできる。聡くんと我妻先生は、私の居場所を検索するためのコードみたいなものを知っているのではないだろうか。

 では、『出口』とはなんだろうか? そもそも、ここはどこなのだろうか?

 ゲームの中と類似の世界? いや、むしろ、ゲーム中? 今、私は、ゲームに没頭しているだけなんだろうか?

 ぱっと聡くんの方を見た時、聡くんの後ろの光景が……窓の外の景色が、一瞬止まって見えた。比喩や何かの見間違いではない。青空に少しの雲、そして揺れている枝、それらが、かくっかくっとまるで処理落ちでもしているかのような、そんなおかしな風に見えて、そして、すぐにその時間を取り戻すように激しく動いたかと思うと、不自然なぐらい自然に動き始めた。

 ああ、なるほど、私が思い切り考え込んで考え込んで……そのうえで不意に見たものというのは、処理がおっつかないのか……でも、その処理というのは、私の頭の中? それとも外部PCでもあるの? 私が見ているのは、いったいなんなんだろう……。

 あたりを見回して、でも、さっきの異常以外の異変は見つけられない。どこもかしこも自然に見えるし、ゲームの中の世界だなんて思えない。以前、ゲーム博覧会で見た、3D空間で遊べるゴーグルと手袋をつけたときは、もっと、空間酔いをするような、妙なタイムラグと違和感があった。今、そんなものはいっさい感じられない。

 そんな高性能なシステムが出来上がっていたのなら、大々的に発表されているはずなのに、そんなもの知らない、知らない……知らない? 本当に? なんか……なんだろう、脳内補正のどうのというのを、聞いたことがあるような気がする。

 物は、目が見ているのではなく、目が受けた刺激を、脳内補正している……だから、私たちは見たいものを見ている、本当の姿が見えていないかも知れないのだとかいう……それを逆手に取った空間システムがどうのというのが、なんでだろう、話半分もわからない説明を、受けた気がする。

 頭の中が本当にパンクしてしまいそうになって、思わず頭を抱え込むと、おずおずと聡くんの手が私の腕になだめるように触れてくる。

「やめてっ!」

咄嗟に振り払うと、ショックを受けたような聡くんの顔。でも、待って、これがゲームのシステムだというの? だって、だって、こんなにもリアルなのに……だって、ゲームの中のNPCなら、こんなにも表情を変えない、こんなにも柔軟に反応しない、こんなにも……こんなにもリアルなわけがない。

 そう思っても、なんだか怖くなってぱっと身を離し、立ち上がると、聡くんは何かを言いかけ……でも、私が美術室を出るまで何の声も追いかけてこなかった。


「うわっ」

ばっと美術室から飛び出したところで、大きな何かが目の前に立ちふさがっていた。

 いや、おそらく、声からして男の子だろう、普通に廊下を歩いていたところで、私が飛び出してぶつかったというところなのだろうか。ぶつかって足を滑らせバランスを崩したところで、思わずつかんだその人の腕、まずいと思った時にはもう遅く、彼も引き連れすっころんでしまった。

 背中をしこたま廊下に打ち付けると思ったけれど、思わずつかんでいた彼の手が私の肩をつかみ、ぐいっと彼の胸に押し付けていた。彼の片手は壁のでっぱりをつかんでいて、どうやらぎりぎりで床にブルからずに済んだところらしい。

「あっぶねぇ……大丈夫?」

言いながら、膝をつき、私の顔を覗き込んでくる。

 でも、この姿勢は全くなんだろうか……踏んだりけったりというか、押さえ込まれたり押し倒されたり……なんだかそういう属性でもついているのだろうか。ちょっと、あまりにも危うい姿勢に口もきけず、こくこくと頷いて見せた。

「なんだよこいつ、地味に好感度上げしてるんじゃねぇよ」

その時、唐突に耳元に響いた少女の声、振り向けどもすぐそこに床しかなく、周りに誰もいなくって、背筋がぞっと冷え込んだ。

姫崎凛?:ヒロイン:未遭遇 ・ 駿河裕司:学園王子様:??? ・ 清水慶介:生徒会長:未遭遇

大野聡:ちょいワル:??? ・ 谷津タケル:後輩:未遭遇 ・ 我妻圭吾:英語教師:監視中?

高木遥:先輩:疑惑 ・ ???:???:嫌悪?

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