信じてはいけない
潰した小隊の拠点に今日は待機する事になった。
順番に睡眠と見張りの交代をしていく。
「シグレ、今日何処に行ってたの?」
横に座るクロが俺に問う。
「調子乗って、先に行き過ぎたんだって。」
「だから、嘘は良くないよ。」
優しい笑顔でそう言ってはいるが、目は何かを探るように鋭い。
「夜蝶さんの居るところ、探しに行ったの?」
ズバリ、言い当てられて反応しそうになる。
「夜蝶さん?」
「シグレ達の敵のボス。俺たちの雇い主。」
知ってるけど、知らないふり。
少しくらい探れないかな…
「どんな人なの?」
「頭が良い、それから実は強い。
でもボスだから護衛はいるよ。」
「アッサリ喋るんだね。」
「今はシグレ達の味方だから。」
お互い笑顔で話してはいるが、これは軽く心理戦だ。
俺はこの人たちを信用しすぎてはいけない。
何処まで本当なのか、それを見極めなければいけない。
信用することが命取りになる。
「どうかしたの?シグレ」
「え?あー、いや、考え事…かな」
急に黙った俺を心配そうに覗き込む顔、この顔を見ているとつい心を許してしまいそうになる。
ウェイドも、ルカさんも、クロも…
迷子という嘘をついている俺を心配してくれた。
もしかしたら、嘘なんて見抜いているかもしれないけれど、
俺を騙すためかもしれないけれど、それが嬉しく思えた。
「…同じことの繰り返し…」
「ん?何?」
「何でもない!独り言。
そろそろ交代の時間かなぁ…起こしてくる。」
これ以上クロの近くで考え事は良くない
そう直感的に感じで席を外す。
この日の夜、俺は、いくら目を閉じても眠りに就けずに朝を迎えてしまった。