最強…?
「あ、そうだ。
俺ちょっと用事思い出した!」
「用事?」
「うん、ちょっと出てくる。」
急いで着替えて、部屋を出る。
向かう先はミミさんの飲み屋。
「うっわ、酒臭‼︎」
「飲み屋なんだから、当たり前。」
分かっていても、そう言わざるを得ない匂い。
酔っ払いを掻き分けて、目当ての人物を見つける。
「何時間ぶり?」
「知るかよ…早くねぇか、流石に」
「いや、情報寄越せって言うより、提供しに来た。」
サクは表情を変えないが、代わりにザキタが不思議そうな顔をする。
「相手の雇ってた傭兵、今うちにいる。」
「え、あの3人ですか?」
「さすが、そこは掴んでたんだね。」
事情を説明すると、ずっと変わらなかったサクの表情が変化する。
「お前、正気か?」
「やっぱり、お金取らないって変だよね。」
「分かっててやってるあたり、本当にお前の頭が心配だ。」
「面目ない…」
と、言いつつ後悔はして居ない。
「ま、まぁ!
すぐに見に危険が及ぶわけ無いしさ、ね?」
「え、何で私に聞くんですか⁈」
「そこはうんって言うの!」
「は、はいぃっ!」
「馬鹿、同意するな。」
「痛いっ‼︎」
「サク、何も蹴ることはないじゃん‼︎w」
サクの強烈な蹴りを受けたザキタが床に沈む。
その矛先はこちらにも向く。
「お前もお前だ、このボケ‼︎」
「怖い‼︎サク、めっちゃ怖い‼︎」
飛んできた拳を受け止め、次の攻撃に備える。
「受け止めるなよ、このヤロー…‼︎」
「当たったら痛いでしょーに、コンチクショー…‼︎」
「店で暴れるな、このクソガキ共‼︎」
「「いったぁぁぁぁ⁈」」
取っ組み合いをする俺たちの脳天に、ミミさんの拳骨が炸裂。
2人同時に声をあげ、その場にしゃがみ込む。
「全く…ザキタ、大丈夫?」
「は、はい…え、お二人共大丈夫ですかぁ⁈」
「ほっときなさい…ほら、ザキタこっちおいで。」
「は、はぁ…」
ミミさんに連れられ、ザキタはカウンターの方に行く。
うずくまったまま、俺とサクはお互いの顔を見合わせる。
「お前のせいだ…」
「暴力反対…」
コブできた気がする…
拳骨が直撃した箇所をさすり、起き上がる。
「…はぁ…
と、とりあえず、あの3人も出来たら調べて欲しいの…」
「腹立つけど、仕事だから仕方ない…」
新たな依頼を頼み、ミミさんに謝りに行く。
「あの…ごめんなさい…」
「ん?あぁ、いいよ気にしなくてw
頭、大丈夫??」
なんか語弊のある言い方だけど…
「コブ、出来たかも…」
「これに懲りて、少しは大人しくすることだねw」
「はぁい…」
きっと、この人は俺の知る人物の中で最強だ。
そんな気がする。