リヒトとナハト
登場人物は作者の友人及び作者ですが、
誰でも読めるような作品にしているつもりです。
身内向けではないので、
ぜひ読んでいただければと思います。
入り混じる銃声、爆発音、悲鳴ー
1人の少女が焼け野原の中、一人佇む。
彼女の周りにはいくつもの肉塊、
かつては人だった物が転がる。
「…私は…こんなの、望んでー」
空から冷たい雨が降り注ぐ。
それは少女を濡らし、流れて行く。
ゆっくりとした足取りで、少女は歩き出す。
どこへ向かうのか、
彼女の姿は闇へと消えた…
ー戦闘組織リヒトー
そう呼ばれる巨大な組織が存在した。
国内での内乱、国同士の戦争、あらゆる争いにおいて戦闘要員として多くの人間がここに所属した。
リヒト所属者は数万人に及び、15歳を過ぎれば誰もがここに所属する事が義務の様になりつつある。
「…こいつが、次のターゲット?」
薄暗い部屋に、俺と上司は机を挟んで対峙する。
「それ以外に何があるんだよ。」
呆れたような声で、
目の前の男ーマコは俺にそう言った。
「んー…美人さんだから紹介してくれたー、とか?w」
「何でそんな事わざわざしなきゃいけないんだよ…シグレ」
俺ーシグレはそう言いながら、渡された数枚の写真に目を通す。
「冗談冗談、ちょっとした茶目っ気だって。」
この女の人が、次のターゲット…
そう心の中で呟きながら話を聞く。
「今戦ってるとこの首領さん。」
「うへー、トップをぶっつぶす作戦?せこいなぁ」
「そういうの、お前好きじゃん」
とっても大好き。
と満面の笑みで言ってやると上司は一つため息を吐き、続ける。
「名前は夜蝶。さっきも言ったけど敵方の首領。」
「どうしたらいい?」
「確実に、当たり前だけどバレずに。」
「おっけー。」
久しぶりの任務に心が躍る。
俺はリヒトと中にある、暗殺部隊ナハトの一員。
仕事はその名の通り暗殺。
もともとは数名のメンバーがいたけど、任務に失敗したり、
耐えられなかったりとで、今は俺一人。
リヒトの一員として戦闘に混じりつつ、並行してナハトの任務を遂行する。
それが俺の仕事。
通常、リヒトはナハトの存在を知らない。
リヒトが光であれば、ナハトは影。
どんな手を使ってでも戦況を良い方向に持っていくための部隊。
「なるべく早く、
他の奴連れてくるようにするから。」
「んー?大丈夫だよ、気にしなくても。」
マコの表情は後ろを向いていて分からなかった。
それでも、何となく眉間にシワを寄せる彼の顔が思い浮かぶ。
ナハトに所属する為の条件、それは高い戦闘能力を持つこと。
その他に―
「同士討ちに耐えられる奴なんてそうそういないでしょ?」
組織の裏切り者であったり、不要と見なされた仲間を殺す。
それが所属の条件。
でもそれは普通の人には出来ることじゃない。
大半の人が戦うことの出来ないガラクタへと変わる。
「んじゃ、行ってくる。」
「…任せた。」
その言葉を背に、部屋を後にする。
「…悪い、シグレ…」
扉が閉まる直前、
そんな声が微かに聞こえた気がした。