いたみと角
初投稿
アルフォンスは魔族だ。魔族の子供だ。人族の子供と同じように非力で、魔法も扱えない。
それだけならば、人族の子供と全く同じに見えるかもしれないが、やはりアルフォンスは魔族なのだ。
なぜならば、彼女の両耳の上……つまり、こめかみ付近には角が生えているからだ。もちろん、ごく小さいものだ。彼女のふわふわと癖のある髪にすっかり隠れてしまうくらいに小さかった。
そう、小さかったのだ。
「うっ……ぐすっ、いたい。いたいよぉ……」
草の陰に膝を抱えボロボロと涙を流す。その涙も、降りしきる雨の中に紛れ、跡形もなくなる。
額から流れる血も雨に溶けて薄まっていく。。
石を投げられた痛みと、仲間だった存在に追い立てられ、拒絶された痛み……。
それらの痛みがアルフォンスを責め立て、次から次へと涙が止まらない。
アルフォンスは親の顔を知らない。気付いたら、王都の貧民街で同じような身の上の子供達とゴミを漁っていた。
アルフォンスは、痩せっぽちで、それはほかの子供たちにも同じようなことが言えたが、それより一回りも小さかった。その上、愚鈍だった。
体が小さい子供はその身軽さを活かして、かっぱらいや、スリなどをしていたが、アルフォンスはそれもできなかった。だから、子供たちをまとめていた年長の子供…ボス、とみんなから呼ばれていた少年は、どんなに小さな子供でもできるゴミ漁りをさせた。
もちろん、ボスはほかの役割を与えたりもした。しかし、アルフォンスはゴミ漁り以外の仕事はてんでからきしだった。靴磨きをさせたならば、靴に傷をつけてしまうわ、お客を怒らせてしまうわで、半日で元の役目に戻ることとなった。
手先が不器用な上、ひどく臆病で他人を前にすると言いたいことの一つも言えず、吃ってしまうばかりなアルフォンスは、貧民街の子供たちの中ではお荷物だった。
アルフォンスは彼女なりに彼らの役に立とうと与えられた役目をこなしていた。役立たず、と言われてもほかに行くところがなかったから、そのまま耐え続けることしかなかった。
その日の朝、アルフォンスは隣で寝ていた少女、ビビに揺り起こされ、いつものようにゴミ捨て場に行った。
ご飯にありつけるのは朝のノルマを終えてから。夜明け前から朝日が昇るまで数時間も真面目にやっていればどうにかこうにかひとかけらのパンにありつけるかどうかだ。
その日は珍しく朝から小雨が降っていた。