君との思い出
――卒業式。
僕にとって最後の卒業式だ。高校3年生となり、卒業後は就職を選んだ。就職先も決まっている。ただ……決まっていないのは、片思いだった人に何も伝えきれていない思いがあるからだ。
だから……最後の高校生活に華を飾るため僕は今綺麗な夕日の光が入り込む教室に一人でいる。彼女に想いを伝えるために。
彼女との出会いは、高校二年の4月中旬だ。僕はバスで来ているため放課後は1時間ぐらい教室で待っていなくてはいけなかった。もちろん部活なんてやっていない。そんなときだ彼女が僕の目の前に現れた。彼女はクラスの委員長で毎日のように担任と話をしている。なにを話しているのか誰も知らない。
当時の僕は一人で過ごすのが多く、小説を読むのが多かった。そんな僕に、彼女は話しかけてくれた。
「志音君。今大丈夫」
僕は小説に栞を挟み、それを閉じる。
「大丈夫」
僕はそう言って彼女の話を聞く態度をとる。
「率直に聞くけど、志音君はこのまま一人でいいの?」
彼女の質問にはもう答えは出ている。
「このままでいい」
時計を見たとき、バスがそろそろ来る時間であった。僕は閉じていた本をカバンにしまおうとしたとき、彼女が僕の本を奪い勢いよく教室を出ていった。
「待て」
僕も彼女を追うように教室を飛び出す。
走る事が苦手な僕は彼女との距離を埋めるより、徐々に離れていく。いつの間にか彼女の姿は見えなくなってしまった。バスの時間はとっくに過ぎ、また一時間待たなくてはならなくなってしまった。 仕方なく僕は学校中を探し回るが彼女の姿などなかった。
僕は仕方なく屋上にいき、気持ちを落ち着かせようとした。
ドアを開けると丁度よく夕日の陽が目に入った。が、彼女の姿はどこにもない。僕は地面に大の字になって寝た。どこまでも透き通りそうな空。そう言えば、さっきまで見ていた小説もこんな状況で主人公は空を眺めていたんだな。と読んでいた小説を思い出す。
「よくこんなの一人で読んで楽しいのね」
空を眺めていた僕の顔に彼女の姿が写し出された。
「返せ」
僕は起き上がり、彼女の持っている僕の小説を取り返そうとした。
「ダメ。私と約束をしてくれたら返す」
彼女は小説を取られないように必死だった。そこまで必死になるにはなにか理由があるのか。 ……いや理由は僕に関係してるな。
「わかった。約束しよう」
僕はこのままだときりがない。そう思い始めて、彼女と約束をすることにした。
「本当?」
「本当」
彼女と僕だけの約束。
「……志音君。一人でいないで皆と楽しくやっていこうよ」
僕にはとても出来ないことだった。今まで一人で過ごしてきた僕に皆と楽しくやっていく事なんて無茶な話。だけど……約束は約束。僕はその約束を守ることにした。
「難しいけど、頑張るよ……音無瑠梨」
僕は初めてクラスの人の名前を呼んだ。
一人で過ごすがクラスで目立ってる人の名前はしっかりと覚える。これは昔からの癖だ。
「名前……覚えててくれたんだ」
音無は少しほっとした顔をしていた。音無は僕がクラスの人の名前でも覚えていないと思っていたのか。僕は音無から小説を取り返した。
「音無。これから……よろしくな」
僕は教室に戻り鞄を取り、バス停でバスを来るのを待っていた。
「志音君」
バス停で僕に声をかけてたのはさっきまで屋上で話をしていた音無瑠梨だ。いつの間に……。
「音無もバスだったのか」
「いつも目の前にいるのにな?」
僕はこれまでバスに乗っていた事を思いだす。……思い出して、小声で「あっ」と呟いた。
「これからちゃんと話しかけてね」
僕らはバスに乗り、自宅に帰るのであった。
……この出来事が僕の高校生活を変えてくれた。
それから三日後の出来事であった。いつもバスで小説を読むのが日課であったが、最近ではバスに乗っては音無と話す事が多い。それを通して少しずつではあるが、クラスメートと話すことも多くはなってきている。
が、学校である行事の準備が行われていた……。
「学校祭?」
クラスメートの能美結太と話しているときだった。
「おう。そろそろ始まるの覚えてるだろ?」
まったくそんなのに興味などなんてなかった。だから覚えていない。
「いやまったく……」
だいたい予想はついていた。今日のLHRはその学校祭についての話だろう。興味がないから、真剣に聞かなくていいだろう。そう思っていた。が予期せぬ出来事が起きてしまった。
時間はホームルーム。勿論学校祭の話し合いだ。ワクワク感も盛り上げようとする気持ちなんて一切なかった。
「それじゃ。このクラスの学校祭委員会を決める」
各クラス二名以上は必ず出す委員会らしい。文化系は学校祭で出し物があり選出は難しい。スポーツ系か部活をやっていない人が出てくるのが一番。そう僕を除いて手を挙げてくれればいいんだ。そう思っていた。
「私やります」
これも予想通り、一人は音無。誰もが納得できる。
「あと一人いないか」
重たい空気が流れてる。どうしたものか。
すると、僕は後ろの人に背中をシャーペンの頭でつつかれた。僕は後ろ振り向いた。小声で「これ。音無さんから」と言われて僕は小さな紙切れを受け取った。紙を見ると『一緒にやらない?』とかかれていた。僕は音無を見ると、手を合わせていた。頼れるのは俺だけか。僕はしぶしぶ手を上げることにした。
「んじゃ二人とも頑張ってくれよ」
そう言い今日のホームルームは終わった。それから、学校祭の委員会で学校に残る事が多くなった。僕はこういった人の目の前で何かをやることが初めてで、何をすればいいのか分からない。とりあえず、音無が気付かないところは僕がやっていけばいいだろう。と考えながらやっていた。
そんな考えはとても間違えていたようだ。音無が周りを気にかけ作業がどれだけ進んでいるのか、足りない物品を聞き、買い出ししたりとしていた。そして、僕たち、実行員の仕事である学生用のパンフレットや来校してくださる方々のパンフレットの作業もスムーズに進んでいった。
しかし、スムーズには見えていたが、学祭の三日程前だろう。クラスの出し物は完成に近づいており、実行委員のパンフレットも部数を印刷するだけであった。
その日いつも通りにバスに乗る。僕は日差しがそれほど当たらない窓側の一人席に座り小説を読む。三つ目のバス停でいつも乗る音無に違和感を感じた。少し、重たそうな雰囲気だった。声をかけようとしたが、声がかけづらい。学祭が近いから丸一日学祭の準備を始まった。僕は印刷室に行き、パンフレットの部数を印刷していた。ざっと百五十枚をA3用紙に裏表一枚ずつ印刷をかけていた。音無はクラスでの出し物の準備と、自分の役割の確認をしていた。僕は音無が確認し終わり、印刷室にきたら交代でクラスを三井いくとしていた。僕は印刷機に用紙を読み込み、印刷を始めようとした時だ。廊下が妙に騒がしい。学祭の前日だから急ピッチで差表を行うとしてるのだろうか?
しかし、それは違った。一人の教師が叫んでいた。
「救急車と担架を準備しろ」
僕の中で妙な胸騒ぎがした。足音が近づいてくる。急ぎ足で印刷室に近づく。それは急だった。印刷室のドアが開く、横開きのためドンという大きな物音に僕はびっくりした。
「時雨、音無が倒れた」
それはクラスの能見結太が少し息を切らしながら入ってきた。結太は運動が苦手なのによく頑張ったな。と心の中で思ってしまった。
「無理しやがって……」
僕は途中のいんさつを 保織り出して、教室に向かった。
「おい印刷どうするんだよ……」
教室についた時には担架の上に横になっていた音無がいた。呼吸が荒く、苦しそうに見え、心臓をなぜか押さえていた。僕は近づこうとしたが、教員に邪魔をされ、それ以上進めない。男性教員が担架を持ち、音無を保健室に運んだのだろう。僕も行こうとしたが、担任の井口先生にこの教室に残りなさいといい、担架についていく。
(そういえば昔……)
こんなことがずっと昔にもあった気がする。僕は記憶を呼び起こそうとするが、どうも思い出せない。
「時雨君は君かい」
僕は不意に呼ばれた。僕は振り向くと生物学の男の先生だった。この人の先生を一度も受けたことがないので名前もどんな人も思い出せない。ただ、生物の先生だけなのはなぜか覚えていた。
「すまない。私はただ井口先生の伝言を届けにきただけだよ」
「なんですか」
伝言なんて一体何だろうか? クラスの人にも指示をしないといけないし。委員の仕事もしないといけない。忙しい時に……。
「昼休み始まったら先生のところに来なさい。ってことらしい」
それだけを伝え先生は職員室にもどっていった。
なんだろうかと、僕は思いつつもクラスの人に指示をし、各リーダーの人にあとは任せて、委員の仕事をしながら、クラスの状況を把握しながら昼休みまでいた。
慣れないことをすることでなかった。昼休みの始め、何か、ずっしりと身体に重さを感じた。昼食が喉を通るかわからない。こんな気持ちは始めただ。が、昼休みに井口先生に呼ばれている事を思いだし、弁当を食べずに僕は職員室に向かうのであった。
担任は僕を見て、相談室に案内される。クラスメイト曰く、ここは滅多に入る事はなく、一部の生徒では、ここは地獄の部屋と呼ばれている。
僕は始めてその地獄の部屋へと足を踏み入れたのであった。
「さて、時雨。話は、分かってると思うけど、音無の事だ」
やっぱりその話だ。音無の事を僕に話すのは先生も僕が一番一緒にいる時間が長いし、音無も僕のことについて、先生と話している。それで、先生は音無の事を話してもいいのだろうと思っているのだろう。
「音無は、心臓が弱いんだ」
「なるほど、それで、心臓を抑えていたんですね」
僕は音無が担架に運ばれている様子をみて、思ったことを言った。
「音無からはまったく聞いてないのか」
僕は首を横に振る。そして、先生は音無のことについて話すのであった。
音無は一定の時間に注射を射たなければいけなかった。それが、学校祭と言う忙しいタイムスケジュールの中で病院にも行けず、注射ももらえていない日々が続いていた。それで、今日倒れてしまった。少し抜けて、病院いってくれればいいのにと思ってしまった。
もしかして、僕の小説を奪ったあと、どこかで、注射を射っていたのか?
僕は話を聞きながら色々と考えていた。
「そういう訳なんだ」
「先生ありがとうございます。ところで、音無は学祭には来れるんですか?」
先生も横に振った。
「そうですか。これをクラスにも伝えます。心臓が弱いって部分は隠します。学校祭に来れない。それだけ伝えます」
僕は先生に一礼をして、地獄の部屋をあとにした。
教室に戻った時の様子はみんな、普通に作業をしていた。音無が倒れて動揺している人がいるのでないかと心配していたが、それは僕の間違いだったようだ。クラスメイトには学祭の疲れとは伝えておき、本当の事は隠していた。
放課後クラスメイトは返り、僕は委員会の作業を進めいていた。
「「時雨君。一人で抱え込んでない」
朝方、印刷ができなかった分を印刷している時に、違うクラスで同じ委員会の高梨明奈が僕に声をかけてくれた。明奈とは小学校で同じクラスになっただけで、中学は明菜が転校して、それ以来会っておらず、高校になって、委員会を通して再会をした。
「明菜には関係ないよ」
僕はひたすらに印刷機から出る紙を眺めていた。白紙になっていないか、薄くなっていないかひたすら、紙を眺めていた。いや、どこかで音無の事を考えていたのかもしれない。
「「時雨君は嘘をつくのは下手だね」
明奈は出来た印刷を持って生徒会室に行くねといい、出て行った。小学校だけの短い間だったけど、僕の思っていることはなんでこうにもバレてしまうのだろうか。
ただのクラスメイトだ。
ただの同じ委員会の仲間だ。
なんだこの気持ち。今までにないこの気持ち。僕は一人この気持ちをなんなのかを考える日々が続いた。
学校祭当日。僕はバスの中で一日目のスケジュールを確認していた。午前中は準備だけ。午後から学校近くの商店街に行き、今年のクラスでの衣装を住民に見せにいくという地味な三十分から四十分ぐらいを歩き、夜には前夜祭として、焼肉、そして花火と言った一日目だ。二日目は校内での出し物が多い。特に部活動単位での出し物が多い。また、地方での活動がメインであるけど、アーティストがライブを開く。僕は衣装を着てクラスでの指示が今日の主な仕事。そういえば役員の仕事で忙しくて、クラスのこといけなく、衣装の事を聞いたらクラスメイトには「当日まで我慢してと言う始末。なんか怖いな。そんな心配を装いつつ校門も前までバス停はついていた。
登校して僕は早速、生徒会室に行き会長から今日の流れを改めて説明を受けた。
「まっ、皆忙しくなるのは明日だから、今日は気楽にやっていきましょうね」
集まりがあるたびに思う事があった。こんないい加減な人がこの学校の委員長ですごいなと、仕事もいい加減にやっていながらも、完璧に仕事を締切までにして、素晴らしいと僕は思っていた。
「それじゃ、クラスに戻って時間まで作業しましょ」
と上機嫌に生徒会室を出でいった、委員長だった。こんな形でいいのだろうか。と心配してしまった。他の委員の人たちも生徒会室を出て行った。 僕と明菜と明菜のクラスの男子が最後に残った。
「音無さんがいないから辛いと思うから何かあったら、協力し合おうね」
明菜は僕の事を心配したのだろう。けど、他のクラスまで心配をかけたくない。僕は心で誓っていた。
「明菜ありがとう。気持ちだけ受け取るよ」
僕はそう言ってクラスに戻った。
クラスでは、最後の仕上げで衣装のチェックを一人一人受けてもらっていた。やっと僕の衣装も見ることが出来る。そう僕の衣装は白と黒の尻尾。ピッと遠くの音まで聞こえてしまいそうな猫耳。
僕に用意されていたのは、白猫であった。どうも今回のテーマの衣装は動物らしい。
「本当なら瑠梨とお揃いなんだけど、瑠梨が倒れちゃったから仕方ないんだけどね」
クラスのある女子が僕の衣装を着ての感想だった。そういえば倒れたからメールも電話も一回もしてないな。時間見つけて、してみるか。そんなことを考えながら、僕は着ていた猫の衣装を脱ぎ始めていた。僕は教室の時計を見て、指示をしないといけないと思った。時計は十時を指しており、開催式は十一時となっている。それに合うように教室を綺麗にすることそして、体育館に集合するように僕は伝え後のことは結太に任せて僕は委員会の仕事に向かうのであった。なんか。結局音無に電話の一つも入れられないのかと思いながら集合場所の体育館に向かうのであった。
体育館の仕事はまず音源のチェック。マイクは使えるかの単純な作業だった。僕が話すのはそんの少しだ。住民の方々にクラス衣装を見に行ったあと、その後の流れを説明するだけ、そして、音無がいない分の司会を僕が遂行しないといけない。音無の司会は明日となるからいいだろう。今日を乗り越えればさほど問題ない。僕はそう思っていた。
学校祭開催式。僕は手元にある原稿用紙を読み告げる。音無がいない分クラスの分と、委員会の分と仕事が山積みであるが、僕も音無に頼りっぱなしでいるのも自分でも嫌な気持ちだ。
学祭初日の最後。多分いあままでに感じたことない疲労感が僕にのしかかる。クラスと委員会と掛け持ちをしてるのはこんなに辛く、疲れるものか。大きな大役を務めた疲れなのか。人生を初めて役割だ。慣れてないだけなのだろうか。この学校の初日は、焼肉パーティで初日を占めるのが伝統らしく。会議の時でもこれは、外されず、決定事項であった。
クラスメイトと少し離れて、自分のクラスで皆が楽しんでるのを教室の窓から眺めいた。改めて言うが、クラスメイトとは仲はいいほうだ。嫌いなわけでない。10分でいいからこの疲れをとりたい。明日もこんな疲れを僕を襲うのと考えると嫌で仕方ない。でも、やっていて、楽しいもんだな。これも、音無のおかげだな。
見ていただきありがとうございます。時雨椎名です
今回は恋愛小説です。
これも前と同じで地道に更新していく形をとっていきます
どうも完成した作品がないので…
コメントをしてくださると
助かります
ではまた
更新日 12月13日