C面 AIが築く絶対防御
濃すぎる粒子と宇宙ガスが漂い、無数の原子星が隠れ潜む暗黒星雲内。
原子星から解き放たれた激しいプラズマジェットが無作為に吹き荒れる。
プラズマ嵐がぶつかり発生した磁気リコネクションによって解き放たれた磁場エネルギーが、熱と衝撃に変わり、さらに激しく吹きすさぶ地獄を産み落とす極限環境。
しかしそこは無音にして漆黒。
数多に生み出された閃光さえも刹那の瞬間だけ輝き、濃すぎる周囲の闇が全てを飲み込み、次の一瞬には何事もなかった無の刹那を生みだす。
光と闇。めまぐるしく交互に入れ替わる宇宙空間に、次元の乱れを纏い、突如侵入者が現れる。
上位次元から現次元への階層移動【現界】現象字に発生する特有の激しいプラズマを放ちながら、無理矢理に現実空間へと復帰しようとするのは、全長で4メートルのミサイル型小型ポッド。
スイープポッド(お掃除端末)
本艦が次元跳躍を行う前に先行し、現界予定ポイントへ降り立つと宙域データ取得を行い、状況を本船に秘匿性の高い他次元経由の高次元通信チャンネルで伝達。
現界予定ポイントの状況により、搭載した土木用反物質爆雷によって宙域に漂うガスや塵からなる星間物質の除去や、跳躍事故の原因となる次元乱流を押さえ凪状態を作りだすことを目的とした端末だ。
定番航路であれば、船の跳躍力や排水量によって利用可能な跳躍可能ポイントは星系連合によって厳密に定められており、途中途中でメンテナンスや休憩のためのサービスエリア惑星や、単なる通過ポイントであっても跳躍補助用大型無人衛星が設置されている。
スイープポッドは、恒常衛星を設置しようにも交通量が少なく採算が合わない過疎航路や、それ以前に航路さえ定められていない辺境域での使用が主。
その他には今のように暗黒星雲内など危険宙域への強行跳躍等に用いられるほかに、機密レベルの高い秘匿軍事任務中の軍艦や、犯罪組織などが運用する密輸船が、主要航路を避けたステルス航行等に用いられている。
荒れた宙域へと静かに降り立ち、調べ、鎮め、的確に、素早く、跳躍を完了させるための下準備を行う。
それがスイープポッドの役割である。
しかし今回のスイープポッドの現界は、一言で言えば下手である。
現界時に激しく乱れるプラズマ乱流が発生するのは、余剰残存エネルギーが多い時に現れる典型的現象だ。
物理法則が異なる高位次元を跳躍航行するための次元断絶バリアを纏うことで、現次元の物質は存在を保てる。
跳躍開始地点から跳躍完了ポイントへと現界したときにいかに余剰残存エネルギーを減らせるか、静かに降り立たせることが出来るか、どれだけ目的位置と誤差が少なく導けるかが、次元水先案内人【ディメジョンベルクラド】の腕の見せ所。
もしエネルギー総量が少なく、もしくは跳躍位置計算を失敗すれば、高次元跳躍中にエネルギーが尽き哀れにも次元の泡となって消えるか、それとも現次元へと降り立つための扉を開けずに時空の迷子となるか。
逆にエネルギーが多すぎれば、今回のポッドのように周囲に存在をアピールするほどの激しい反応を起こすが、この程度ですめばまだ御の字。
あまりに余剰残存エネルギーが多ければ、現界してきた本人を損傷、破壊しかねない。
銀河で発生する跳躍沈没事故の原因の8割以上を占めるのだから、跳躍を担当したディメジョンベルクラドの能力がいかに左右するかよくわかるという物だ。
あまりに激しい今回の現界現象は、先行調査型無人スイープポッドだからまだ良いが、これが有人船であれば、航行に支障を及ぼすほどの損傷や修理案件となりかねないほどに、乱暴、未熟なものだ。
そして…………この宙域に潜む狩人はその隙を見逃さない。
守備エリア内に現界徴候確認。
対象は2.6ナノ秒後現界終了。
タイプ識別。スイープポッド。
絶対防御モード特例措置によりトランスポンダーおよび敵味方識別信号確認は除外。
砲口露出。照準合わせ。次元振動波動放射。
スイープポッドが現界終了する前に跳躍を妨害する次元振動波を対象跳躍ポイントへ放射。
それは物理的破壊力を持たないが、低燃費かつ実体弾を必要としない特殊兵器。
その効果は現界時に高次元から現次元へと向かう流れをわずかに妨害して乱すだけ。
たったそれだけ。だが十分。
現界とは、綱渡りをするようにギリギリのラインを必死にバランスを取って行われる繊細な作業。
故に、小さな吐息一つで相手はバランスを崩し、次元のあちら側へと落ちていく。
戦闘にさえならない。
戦闘さえいらない。
相手が自然と落ちて消滅していくのだから。
対象消滅を確認。
24時間の特別周辺警戒モードへと移行。
銀河に住まう生物を遙かに超越した思考速度を持つ無人迎撃AIは、極めて光速に近い判断力を持って刹那をさらに上回る刹那をもって蹂躙する。
現時空より僅かにずれた異次元に本体は身を潜めたまま、露出させていたアンテナがもたらした情報を元に、即時迎撃態勢へ。
サーチ&デストロイ
最上位存在が休眠修理状態においては、再起動修復が終わるまではいかなる者、それこそ味方である銀河帝国軍でさえ敵対存在として、即時殲滅が至上命題。
全ては帝国最秘奥テクノロジー、銀河最強にして最大出力の炉心製造技術を隠し通すために。
1文字たりとも情報は与えないという、明確にして絶対なる拒絶。
もしそれでも堪えて飛び出てくる相手がいた場合は、迎撃衛星本体が現実空間に復帰。燃料である反物質を暴走させ周囲の宙域と共に対象を消滅。
ついで事前に切り離していた時空振動弾による時空震を起こし、数日にわたる跳躍妨害を行い宙域を封鎖。
開いた穴には隣接後方宙域から同型機種が通常空間航行で進出し穴を塞ぎ、それで開いた穴にはまた後方から、そのまた後方からと次々にドミノ倒しのように展開して、絶対防御圏を維持している。
次元振動波動技術は、本拠地への直接跳躍を防ぐ基幹技術ではあるが、現銀河では特化した大型妨害艦が専属に行う特殊任務となる。
それを量産型防御衛星に搭載できるほどまでに、希少物質を惜しげも無く用いて小型化し、さらには即時適応可能な自立型AIによる無人防衛網として統率させたのは、銀河史においても旧銀河帝国のみ。
長年の戦乱でアーカイブの消滅で技術が衰退し、数多の恒星、惑星が破壊され希少資源が減少し、暴走したバーサーカー艦隊とのAI戦争のトラウマからAIへの規制が極めて強化された今の銀河文明では対抗が難しい。
それこそ犠牲をいとわない飽和攻撃、無理矢理な特攻による、数の暴力による単純な戦闘に持ち込んで、ようやく対抗できるかどうかだろう。
無機質に統制された無人防御機構による堅く長い多層縦深防御網。
基本に忠実にして、判断が極めて速い自立型AIによる防御は一見無敵にみえる。
だがそこに勝機を見いだすのが、とある外道だ。
特別警戒態勢に入った防御衛星はすぐに異常を感知する。
それは担当宙域外から流れてきた電子情報だ。
暗黒星雲のガスや塵によって著しく減少し、ノイズにまみれて、単なる雑音としか判断できないであろう微かな乱れ。
だが優秀なAIは僅かなノイズを見逃さず、さらにリンクした同型衛星が作り出すネットワークと接続して多角的に情報を収集分析する。
細分化拡散したピースを集め、それらを整理し、一つの答えを導き出していき、すぐに極めて高い確率で予測が算出される。
絶対防御圏から外れた同暗黒星雲内のあちらこちらで、短時間だが極めて激しい小規模戦闘が、数万単位で行われている可能性が高い。
相対する陣営は二つで用いられている言語はおそらく一種類で内乱の類いの可能性は高い。
だが本船銀河帝国アーカイブには登録されていない未知の言語体系。
しかし用いられているとおぼしき艦船は、帝国系艦や劣等人種艦など多岐にわたり、また銀河帝国ですら把握していない、物理的にあり得ない特異現象を伴う武装【魔法・道術・すーぱーぱわー・オーバードウェポン・絶対○○】などの統一感のない数多の名称が散見される。
先ほど沈没したはずの艦船、乗員と同一存在と思われる同位体が、僅かな時間経過と共に即時戦闘を再開していることから、極めて高い艦隊製造能力、クローニング技術にあわせて原始的で高い戦闘本能を持つと推測される。
反応速度や戦術センスは個体差が激しいが、銀河種族平均値で見れば、愚鈍と断言するほどに極めて低速で、戦術的にも素人同然の低レベルではある。
だがその数と、同族間の殺戮をいとわない凶暴性を鑑みれば、いくら能力が低かろうとも警戒度を高めない理由にはならない。
なによりもっとも注目し警戒すべきは、今は絶対防御圏範囲外で行われている戦闘だが、両勢力共に暗黒星雲中枢部へと到達しようとしている傾向が見られることだ。
未知の勢力に、未知の技術。そして能力は低くとも異常なまでの戦闘本能と増殖能力。
未知勢力への情報収集のため、そして防衛能力強化のため防御圏拡大を、同様の観測をした1000を超える複数の防御衛星搭載AIが提案し、絶対防御ネットワークが採用を決断するまでさほどの時間はいらなかった。
無駄に長い,説明ばかりの底辺の本文です。
これが好きでやってるんだから、ほっとけやAI様w
考察(本気で遊んでみた)して、見いだした対AI戦前哨戦開始です。




