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A面 大型レイドバトル前哨戦スタート

 濃厚すぎる分子ガスと宇宙塵に満たされた暗黒星雲内。


 極低温に満たされた地獄最下層のコキュートスでは、限りなく光速に近い速度で宇宙を翔する恒星間高速戦闘艦も、亀のごとく鈍足を余儀なくされる。


 水素原子のただ一つでさえ当たり所が悪ければ、艦に致命的な損傷を与えかねない銀河の最上級危険空間へ入り込もうというのだ。


 当然備えはしている。


 工場惑星一つが欲する電力を賄えるほどのジェネレーターを搭載してかろうじて艦全体でフル稼働した次元断絶バリアが、艦体周囲の物理法則をゆがめていく。


 針の穴よりもさらに細い星間物質の僅かな隙間へと、巨鯨のごときその巨体を潜り込ませ星間物質との接触を避けて、何とか外装へのダメージを避けているが……それもいつまで持つか。



「ぎゃぁっ!? もう残存エネルギー45%!? 緊急帰還跳躍分を残すと、あと8分が滞在限度だよ。おにぃ!?」



 火がついたように急速減少する残存エネルギーゲージに、角あり竜人フルアームドメカ娘が悲鳴を上げる。


 暗黒星雲内にかろうじて発見された跳躍ポイントに超空間経由で降りたって、探索を始めてからまだ10分弱。


 取得スキル、種族特性、さらにはフルダイブによる能力上昇の三重掛けバフによって、エンジン出力を200%まで上げているというのに、消費エネルギーに対して生産エネルギーが全く追いついていない。


 一定時間発動型タイプと違い、消費発動型機構である次元断絶バリアは、極めて高い防御力と引き替えにエネルギーをバカ食いする事は、もちろん竜メカ娘だって知っているが、この減り方はさすがに想定外。


 周囲の粒子が濃すぎる。適正装備レベルが高すぎると、怨嗟混じりの悲鳴が出るのも仕方ないだろう。



「だぁっうっせ! カーゴの魔女っ子! フルダイブ要請! 探査用ステ爆上げで帳尻を合わせてくれるか!」  



 艦長兼操舵士のパワードアーマーサイボーグが、今回の探索に合わせて臨時パーティを組んだ切り札を呼びだす。



『不味そうな状況でしたからもうフルダイブしてます! 全環境適応魔法は発動させたからいつでもいけます。緊急MP回復薬も飲んだので、探索大雷撃魔法が詠唱可能になってます!』



 普段は無骨でメカメカしい無人探査機が鎮座するカーゴを映す通信ウィンドウには、あざといほどまでにあざとい三角魔女帽子からクロネコ耳を生やす古式ゆかしいウィッチスタイルの魔女っ子が頼もしいサムズアップと、さらにあざといウィンクで返す。


 ハーフダイブ時に用いていたマスコット仮想体の子猫モードから、フルダイブ用仮想体猫耳少女へと変化した魔女っ子の背後からは、デフォルメされた飛竜モンスターが興味深そうに顔を覗かせる。


 一見マスコットに見えるそれは宇宙空間騎乗用【ぐれーとわいばーん】


 硬派な宇宙戦闘をモチーフとしたSFゲーム世界出身の彼らと源流は違い、萌えと燃えが融合した激しい魔法バトルファンタジーが売りのゲーム出身。


 そこのキャッスル攻防戦で最前線を張っていたと自慢げに語るだけのことはあり、勝負所での勘は鋭く、すでに準備万端のようだ。



「メグ! 30秒後にカーゴドア開くよ! ガイドビーコンを船体表面に出すからそのままパッシブアンテナ基部まで移動! 魔法発動後にアンテナの防御装甲を開いてこっちで情報を受け取るから! メグはすぐ帰還! おにぃは上方43度に艦首合わせて!」



 わちゃわちゃしていた竜メカ娘も、頼りがいがありすぎるリア友に触発され、覚悟を決めたのか、今の状況でもっとも有効な探知情報がとれる方角を指し示す。


 指し示すのは暗黒星雲の中心部。攻略目標である工場要塞が鎮座する方角。



「艦首合わせた! 進路固定! カーゴ開、っ! このくそ忙しいときに! 陣営識別!」



 カーゴを開こうとした直前、パッシブセンサーがレーダー照射を感知し、ブリッジに警報が鳴り響く。


 いまこの宙域で使われる射撃管制レーダーはゲーム内設定で3種類に識別される形となっている。


 撃破派が用いる反射率反射速度に優れた命中率重視の純射撃用レーダー。


 拿捕派が用いるクラッキング用通信波兼用レーダー。


 そして今回のイベントボス参加の無人殲滅艦が用いる強制デバフを与える高出力射撃レーダーの三種となる。



「あーもう! 反応識別拿捕派! 敵影見えず! 仕掛けてくる気なのか、こっちを撤退させるための牽制なのか不明! どうする二人とも!?」


 

「俺らが来てから不自然な空間異常は感知してない。あっちが先客なら滞在可能時間はこっちが上……逆ネジかます!」



『指向性極大雷撃魔法【にゃんぐにーる】から、全方位型極大雷撃魔法【みるにゃるはんまー】に詠唱変更。最大MP消費でいけば周囲一帯をあぶりだせるよリザ! お兄さん!』 


「任せたメグ! じゃあぶっ潰す方向で! 戦闘出力! 各兵装オンライン! 滞在可能時間予測を3分に変更! 2分で決着! 残り1分で調査が勝利ラインで! どうせ仮想空間のそのまたさらにの仮想の練習空間! 武器消耗が無いんだからばんばんいくよ!」



 緊張感あふれる探査も悪くはないが、やはりVRMMOの華はフルダイブでの対人戦。


 探査ポイントが手に入る直前で襲撃を迷惑だとは思いながら、三人組は生き生きと動き出していた。


 僅かな跳躍可能ポイントをみつけ、そこを基点に次なる跳躍可能ポイントを探すため空間状況探査、そこでみつけた跳躍可能ポイントへ飛んでさらに次へと。

 

 それを繰り返して最終目的地である敵要塞目前の詳細な空間情報を手に入れ、大型転移母艦を無事に跳躍させ確実な奇襲作戦を敢行する。


 これが大型レイドイベント本戦の概要であり、今回はその準備の為の前哨戦と銘打たれたイベントとなる。

 

 ただ今回は普通に戦闘を行う通常イベントとは違う大きな点がある。


 前哨戦で行われる暗黒星雲突入作戦は、仮想世界でのVR練習という扱いとなっている事だ。


 超高難易度である大型レイドボス戦を前に、プレイヤー側の損傷が激しく、戦力がた落ちでクリア不可能になっては本末転倒。


 かといって、いきなりぶっつけ本番も初見殺しが過ぎる。


 そこで金銭、アイテム的な報酬はないが、武装の損耗や破壊が無く、未所持スキルや未購入武装を試用しつつ暗黒星雲踏破の最適解を試しつつ、各種スキル経験値や、プレイヤー自身の判断力や予測力、いわゆるプレイヤースキルを伸ばせる練習空間が用意されていた。


 この前哨戦で手に入れた探査ポイントは、本戦での攻撃力へと+されるバフポイントとなる。


 ここまでなら、ずいぶんと運営が親切だと感心しているプレイヤーも多かったが、あるゲームの古参プレイヤー達は疑っていた。


 あの会社がホワイトソフトウェアが、これで済ますはずが無いと。


 そしてその懸念は見事に当たる。


 撃破派と拿捕派の最終利益が完全にトレードオフ関係で有ったことが、プレイヤー達を大きく二分させる。 


 工場要塞の全防衛設備を粉砕して破壊勝利するか?


 それとも要塞各所の制御端末をクラッキングして無力化勝利するか?


 破壊勝利の場合は、暗黒星雲の豊富な資源が手に入るとともに、残骸探索を行えばそれなりの確率で超兵器ドロップが見込める。


 しかし撃破時のクラッキング率に合わせて、ドロップ超兵器に深刻なデバフや、極端に耐久力や数値が低下したゴミ兵器発生確率が激増。

 

 クラッキング率が90%を超えていれば、一見には数値がよく見えても、強烈な隠しデバフを持つ上に、特殊アイテムが無ければ装備解除不可能な呪いの装備化現象が発生。


 逆に無力化勝利の場合は、暗黒星雲内の大半が資源確保のため立ち入り禁止区域となるが、各種特殊効果が付いた高耐久高威力の超兵器が新規製造される工廠が確保されたことで、NPC主催オークションへある程度纏まった数が定期的に出品され、全プレイヤーに入手機会が生まれる。


 ただし無力化勝利までに破壊された防衛設備の数値に合わせて、使用消費資材が跳ね上がり、生産速度も激減。


 破壊率が90%を超えたときは最低落札価格が暴騰したうえに、入手機会さえ少ない最上位エピックアイテムへと変貌。


 破壊か拿捕。どちらか一方に大きく偏ればプレイヤーは最大限の利益を得られるが、まだゲームは始まったばかりで、プレイヤー全体に影響を与えられるような組織だった動きや、カリスマプレイヤーは皆無。


 さらにいくつものVRゲームが集合し、それぞれの美学やプレイスタイルを持つ個性豊かなプレイヤー達がそう簡単に息を合わせられるはずがない。


 かくして前哨戦の段階から相手を潰して、少しでも自陣営が有利を得ようとする、足の引っ張り合いがあちらこちらで勃発。


 前哨戦の舞台がいくら撃墜されようが損傷無く、即時復活可能な練習空間である事が、さらに状況を加速させる。


 些細な意見の違いを発端に新たな因縁と諍いが続々と生まれ、罵倒と罵り合いと怒号が飛び交い、不倶戴天の仇敵が生み出される鉄火場が完成するまでは、半日もいらなかった。


 全プレイヤー協力型の大型レイドバトル実装を謳いながら、プレイヤー同士を本気で競い合わせる運営のイベント企画に、とある古参……旧リーディアンオンラインプレイヤーは皆こう思っていた。


 ゲームを本気で楽しませるという社是に従い、プレイヤーにガチ喧嘩を売ってくるホワイトソフトウェアがついに本性をみせやがったと。


AIにお前の作品なろうの空気に合わないからカクヨム行けや、お前のカスみたいなあらすじより読まれるやつ考えてやろうかと喧嘩を売られ、イラッときたのでお前そんな凄いのか試してやるわ。ただしてめえのアドバイス通り全部動くと思うなよと、反発心からカクヨム様にも投稿してみました。

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― 新着の感想 ―
楽しんでる一般ゲーマー見てほっこりしますなぁ
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