いけ! 乙女の味方、ゴキジェ●ト!!
いろいろカオスです。
寿荘……それが、3LDK、三食昼寝つき、月一万円の物件だった。
聞いたところによると、オレの行くことになる高校に近く、そこで一人暮らしをしている先輩もいるそうで。
安さと三食昼寝つきに惑わされ、俺はそこに決めた。
……いや、ちょっとは迷ったぜ?
三食ついて一万とか、おかしすぎるだろ。
そうなんだけど、あのビバさん(名前わかんねぇからとりあえず)が熱心に勧めてくるもんで、つい。
「うわ……」
俺は、その建物を見て後悔した。
「汚ったねぇ……」
おんぼろそこに極まれり。
てきな建物だった。
壁は茶色く変色して、ところどころ何かがはがれ、さらにつるに浸食されてもう見るも無残な状態。
んで、門もなんだかペンキがはがれてるし、汚いし……。
庭なんてもっとひどいもんだ。
あたり一面草。
雑草の楽園。
the paradise。
「ま、しょーがねぇか」
月一万だし。
うだうだ文句言ってもしょうがない。
とりあえず、玄関までいくと、鳴るか鳴らないかわからないようなおんぼろチャイムを鳴らす。
『どうぞー』
ん?
女の子の声?
いいのか、入って。
とりあえず、スライド式の玄関を、壊さなようにそっと開けた。
すると、意外ときれいな玄関内部。
そして、同年代くらいのけっこうかわいい少女がスプレーを構えていた。
は?
スプレー?
「天誅!! いけ、ゴキジェ●ト!!」
「はぁっ?!」
目の前で、スプレーが噴出された。
よく、CMでやってるあの対G兵器である、あのスプレー。
って、ちょっとまてえぇっ!!!
「や、やめろ! 俺Gじゃない!! つか、顔はやめれっ!!」
「問答無用! うちはゴッキーを許さない!!」
「俺、ゴッキーじゃないから!!」
人間だから!
いや、こんな大きなGがいたら、全国の虫嫌いが泣くって!!
残酷なスプレー攻撃の前に、俺はなすすべもなかった。
「はああああ!!!」
「うわあっ、よせって! やめろって!!」
「はああああ、あ……でない」
そして、スプレーの中身が切れると攻撃が終わる。
嗚呼、服がゴキ●ェット臭い……。
なんでオレがこんな目に……。
「……あ~れ? 君、なにやっての? てか、誰?」
「いまさらっ?!」
空っぽのスプレーを手に、少女はぽかんと俺を見た。
「ど、どうしよう……。ゴッキーが大きくなっちゃった?! あ、でもまあうちは別に君のこと嫌いじゃないよ? 触りたくはないけど」
さっき、ゴッキーは許さないとか言ってなかった?!
いや、それよりも重要なことが一つ。
「俺、Gじゃないから! つか、お前誰?!」
「うち? うちは青野蒼。あ、青井蒼でも青木蒼でもいいよ。それと、魔法少女、よろしー?」
よろしくない。
ぜんっぜんよろしくない。
青野蒼? アオイアオでもアオキアオでもなんでもオッケー?
そんでもって、魔法少女?
「……デンパだ」
こいつは、間違いなくデンパだ。
意味不明なかかわっちゃいけないタイプだ。
やばい、回れ右して――。
「なんだ、貴様」
そこには、触れれば切れてしまいそうなほど繊細で、美しい少女がいた。
ただし
銀髪に青と赤のオッドアイ。
いわゆる邪神眼。
外国人?
そんでもって――
「死ぬのか? 死にたいのか? さっさとオレのためにそこをどけ」
――非常に素晴らしい性格でしかも拳銃を向けてきたが。
「銃刀法違反っ?!」
「ダマレ。近所迷惑だ。死にたいのなら外に出てなおれ。玄関を掃除するのが面倒だ」
なにここ、カオス。
つか、実家に帰りたい。