その七
三つ。
とりあえず三つを仕掛けてきた。
手先は器用な方ではないと思っていたが、自分で思っている以上に器用ではなかった。
娘が籐の骨組みを作り、そのあとは俺がひたすら籐を通していくのだが密度をなかなか詰められなかった。
だが娘は、それでは隙間から魚が逃げてしまいますと、嫌な顔せずに淡い笑顔で答えてくれた。
どうにか形になったものは一つだけだった。
肩を落とす俺に罠を二つ差し出してきて、それはあげますとだけ言った。
また罠作りを練習しましょうねと言葉を残して娘は去っていった。
俺は寺で寝転んだまま穴だらけの天井を見上げる。
雨が降ってきたとき凌げるか微妙だなと思った。
この時代に来てから人とちゃんと話したのは初めてだった。
優しさに触れたのも、初めてだった。
明日、罠に魚がかかってるといいな。
俺は寝返りを打つ。
木の板は硬くて、肩が少し痛かった。
明日、もう一度あの娘に会えるだろうか。
約束をしたわけではなかったが、なんとなく会えるだろう。
そうしたらまた罠を作ろう。
ちゃんとした物を作って娘にあげよう。
そんなことを考えると瞼が次第に重くなっていった。
ああ、なんだかこんな気持ちで寝られるのはものすごく久しぶりだ。
硬い板がひんやりと俺の身体を冷ましていった。