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時雨音  作者: りもこん
6/7

その六

「これでよければ作り方を教えますよ」


女は背中の籠を下ろして、捕まえた魚を放り込んだ。


「その代わり3つ作ったら2つは私にくださいな」


俺は女の白い手の中にある籐細工の罠を見る。


「あんなに激しい盆踊りでは、捕まえても捕まえても腹の虫は収まらないと思いますよ」


いたずらっぽく笑う。

川の煌きのようにきらきらきらしていた。


「俺はそんなに器用じゃない」


「だいじょうぶ。ちゃんと教えますし、村の子供だってすぐに作れるようになるほど簡単ですから」


そうか。

俺はひとつ頷いた。


では材料を探してきますから待っていてください、と言いながら籠を背負った。

とりあえずこれを見ていてください、私の自信作で一番上手に作れたんです。

罠を俺に手渡してから、女は踵を返した。


それはほんのり湿っていて、なぜだか妙に艶っぽく見えた。


女は一度も振り向かずに歩いて行き、小さくなった。

俺は先程まで寝そべっていた大石に腰をかける。

そこから河原を眺める。


これがあれば当分は上手く生活できるかもしれない。

深く、深く、息を吐いていた。

手の中にある籐の罠に目を落とす。

まるで、熱にうなされているとき解熱剤を飲んだ後のような、穏やかな気持ちが湧いてきていた。


しばらくの間、座っていたが女はまだこない。

太陽はさらに高く登り、汗がにじみ出てくる。

石から立ち上がると、尻の形に黒く濡れていた。

川の水を飲み、顔を洗う。


向こう岸は山になっていて木々が生えている。陽の光は強い。

女から渡された罠を持ち、木陰に移動しようとすると気配を感じた。


振り向くと女がこちらに手を振っていた。







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