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ゴミジョブ[魔王]

ボスを倒さずにエリアを通過せんとすプレイヤーは、通常何らかに阻まれ無為に命を落とす。

だが、本来男の命を刈り取るはずの魚のモンスターの水鉄砲も、

ワイバーンの噛みつきも、燃えている巨大亀の噴火も、

大空の覇者たる嵐龍の雷の発生すらも置き去りにし、男は道も街も無視し北へ放物線を描き飛んでいく。



__________




「やっほーーーーーーーーーーーーー!!!」


最初は速さにビビったが落ち着いてみればいい景色だ。

この世界の全貌が見渡せる素晴らしい絶景である。

俺が目指す最北端は…なんかギラギラしてる…まぶしい…



「条件を達成しました!称号[最速の旅人]を獲得しました!」

「条件を達成しました!称号[魔王の器]を獲得しました!」

「は?称号?」


空を音速でぶっ飛んでいる俺の耳にシステム的な音声が突如鳴り響く。

まだ高度は上がり続けている。地面につくまでまだしばらくかかるだろう。

なのでその間に得た称号について確認する。



称号[最速の旅人] 誰よりも速く移動した証

          

称号[魔王の器]  魔王に器として認められた証

禁忌を犯す心を持ち、魔王の眷属から逃げ切る強さを持つ者を魔王は求めている。


…よくわからん。

一個目は分かる、今まさに最速で移動している最中だ。

二つ目はなんだ?禁忌ってPK(プレイヤーキル)のことか?

魔王の眷属って赤ゴリラのことか?そもそもこのゲーム魔王いるのか。



おっと高度が下がり始めた。思ったよりも高く飛んだせいで

妨気無(ノンエア)】が切れそうだったがギリギリ持ちそうだ。

あまりにもぶっ飛んだおかげで硬化(ハーディング)のリキャストももう終わった。

あとは着地ぎりぎりに再び硬化(ハーディング)を使うだけ!

高度が減少を続ける中ついにギラギラしたエリアの上にまで到着!!

ひゃっほう最北端マップだ!!約束は果たしたぜリーダー!!!

タイミングはもうすぐ!!

3!

2!

あれ城?



ドゴォォォォォォォ!!!グチョッ!!パリン!!!


すさまじい轟音と共にダイナミックマッハ入城!

城壁を貫通し、なんか強そうなドラゴンの首を吹っ飛ばし、

やばそうな結晶をぶち壊した気がするがとにかく俺は生き延びた!!

人類初!!最北端到達だぜ!!!







「イイ…トテモイイ…ワガ封印ヲ解クダケデナク器マデ用意スルトハ…」


なんか声するぅぅだけど動けねぇぇ…

明らかになんかのイベントを音速で不法にぶち抜いた気がするが、始まったイベントは止まらない。


「オマエヲ使イ、吾輩ハ再ビコノ世界ニ降臨スル!!」


吾輩とか言ってるし魔王だろこいつ…

で、器とかいう奴はさっき空で見た称号か?

てかなんか黒い靄みたいなのが口の中に…おごごごご


「レベルが上がりました Lv35→Lv46」

職業(ジョブ)[魔王]を獲得しました」



…よかった乗っ取られてない体動く!!

 まあそうかゲームだし。


よくわからないけどとりあえず確認してみよう。

マップ最北端で獲得できるジョブだ。絶対強いに決まっている!

さぁ魔王はどんなジョブかな?



______



クソ職業(ジョブ)である。

それが俺が職業(ジョブ)[魔王]に対して感じた飾り気のない率直な感想である。


職業(ジョブ)[魔王]

魔王サリギアの魂を身に宿し暴虐の限りを尽くす存在。

7つのスキルをこの職業(ジョブ)についている際使用可能になる。

人間に対する戦闘力が著しく上昇し、キルしたときに得られえる経験値が大幅に増加する。


ここまでは有用である。ここまでは。

見た目が黒を基調とした悪魔っぽくなること以外は。

問題はこの先にある。


代償にモンスターに与えるダメージが著しく減少し、

撃破したときに得られる経験値が大幅に減少する。



この一文でもうすべてが終わりだよ。

どうすんだよ最北端(ここ)人いないよ

モンスターしかいないよどうすればいいんだよ。



この職業(ジョブ)は他のプレイヤーに殺害された瞬間に効力を失い称号と化す。

その他の方法でこの職業(ジョブ)を解除することはできない。

その時までに貯めた罪の量、すなわちカルマ値によってリザルトが決定され、

貯めたカルマ値が多いほどより良いリザルト、よりよい報酬が手に入る。

貯めたカルマ値が規定値より低かった場合、様々なデメリットが発生する。



つまりこの職業(ジョブ)はプレイヤーを殺して殺して殺しまくるべき職業(ジョブ)であり、人がいないこの地では救いようのないゴミである、ということだ。

リスポーンで町に帰るべくサクッと自分を切り飛ばしたがリスポーン地点が魔王城に固定されていやがる。クソが。



結論!

人を殺そうにも人がいない!

モンスターしかいない場所でモンスターに弱くなる!

採取しかやることがない!

カス!クズ!ゴミ!ジャマ!


そもそもとして、もとより俺はPvP(人と戦う)よりPvE(モンスターと戦う)方が好きだからなぁ。

普通に友達とRPGしていたいのにこのままじゃ[魔王]のデメリットで一緒に狩りもできない。

さっさと捨てたいぜこんなクソジョブ。

だけどカルマ値規定値以下で死ぬとデメリットを被るのもなぁ。

理想はサクッと虐殺してカルマ値の規定値超えてからプレイヤーに狩られることか。

でもなぁここ人いないんだよなぁ。


現実(ゲーム)逃避にギラギラした最北部マップをうろちょろすること3分。

翼が生えた鋼鉄の巨大ガマガエルのようなモンスターに遭遇したが、無視された。ジョブのおかげだろうか?少しだけ[魔王]の評価を上げた。

試しに対モンスター用魔王産スキル【色欲:傀儡支配(シタニツケ)】を使ってみた。

レベル差でレジストされた。[魔王]の評価を下げた。

腹が立ったのか普通に襲ってきた。死んだ。[魔王]の評価をもっと下げた。


散策がてらいろいろ試して分かったことがある。

まず[魔王]は使用武器に制限がない。

通常、職業(ジョブ)[大剣使い]などは他の武器の使用に恩恵が乗らない。

これは誰が[魔王]になっても戦えるようにという配慮だろう。()いないけど。

次に、姿に加えありとあらゆる使用する武器が

黒と赤を基調としたものに変化するということだ。

魔王が聖剣っぽい武器を持たないようにだろう。

わあよく使う大剣が真っ黒に赤のラインが入ったなんかかっこいい感じになってる。これだけは褒めてやってもいい。


得られる場所的にも得られる能力的にも最後の町までたどり着いたプレイヤーたちに、軍勢をけしかけ暴れるタイプの職業なんだろう。

ああでも人がいない。スキルで従えられる自分より弱いモンスターもいない。

ああどうしよう。


____________



とりあえずいろいろ拾いながら人里まで走って帰ろうと思う。

城の周辺に位置する森をまず抜けようと全力ダッシュ!!

三秒間熟考した俺の超合理的行動である。





「ぐえっ」


理由は知らないがこの土地の全ては金属のようなものでできている。

それはモンスターも、地面も、そして植物も。

つまり…


「まさか茂みに突っ込んだら死ぬとは…」


その辺の葉っぱはすさまじい切れ味を誇るナイフである、ということだ。

茂み側が一切変化しない茂みはまさに針山であった。


出鼻をくじかれたのでのんびり行こうと思う。

茂みと葉を避け鋼鉄の林を探索していると、収集可能アイテムを発見した。

それは金色の輝きを持つ柄…のような皮、輝かしい乳白色の大きな刀身…のような果肉をもつ大剣…のような何か。そのアイテムの名は…金属甘蕉(メタルバナナ)

「バナナじゃねーか!!」

金色の大剣…のようなでかいバナナや、

短剣…のようなスナップエンドウ、

大楯…のようなブロッコリーなどなど…

武器みたいな野菜や果物の数々が収穫できた。

この武器みたいな野菜シリーズ、なんと武器として装備可能であった。

こんなネタの塊のような武器が今までのどんな武器より強いことに諸行無常を感じる。

装備してみると魔王効果で真っ黒に。そこそこいけてる見た目になった。

そんなこんなで武器を収穫をしながら南に歩いてゆくと開けた場所が出現した。



そこにいたのはギラギラ輝くこの地において最も強き輝きを持つ金色の龍だった。

…エリアボスだこいつ。

なんかこっちがん見してますね。

あっこんにちは横通らせてもらいますね…


ギシャァァァァァ!!!!

ですよねーーー!!!!!

やっぱり道ふさぎのエリアボスは無視して通ることできなかった!

噛みつき!横に飛ぶ!

城で謎に上がったレベルと加速力強化のひらひらのおかげで避けれた!

しっぽの薙ぎ払い!!キャベツを出し足場とし大ジャンプ!!

わあ体が軽い!!羽のアクセサリーのおかげだ!!

ブレス!!!避けられそうにない!大楯(ブロッコリー)で防ぐ!

わあ焼きブロッコリー!耐久値ないなった!!


やばいなこれ火力も速さも赤ゴリラ以上だ。

救いがあるとすれば予備動作はゲームらしく存在し、ステータスさえあれば避けられそうってことか。

装備強化して出直せってことね。

っとまた薙ぎ払い!足場(キャベツ)が尽きたら死ぬなこれ。

おーキャベツがぶっ飛んでる…ぶっ飛ぶ!それだ!


装備は行きと同じぶっ飛びよう軽量化装備。

魔王産スキル【怠惰:王権譲渡(ヒトマカセ)】!

効果は自身の能力大幅低下の対価にモンスター一匹の超強化。

最強になったこの龍に吹っ飛ばされて街に帰る!

そして人々(プレイヤー)を襲いまくる!!

人狩り行こうぜ!!!


噛みつきをよけてしっぽの薙ぎ払いモーション。

ここだ!!!




こうして俺は南に音速でぶっ飛んだ。(三時間ぶり二度目)





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