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第六章 神紙ノ対峙(しんしのたいじ)

黒折流の本拠、最奥の祭壇。


そこは神を封じた禁紙きんし――「神封ノしんぷうのかみ」が安置される場所だった。

中央にそびえる柱の上には、無数の折り紙の符が貼りつき、鎮魂と封印の儀が同時に施されている。

その前に立つのは、漆黒の和装を纏い、全身から冷気のような圧を放つ男――黒折こくせつ 残月ざんげつ


「来たか、神代蓮かみしろ れん。我が息子を倒し、ここまで辿り着いたか。さすがは折神流の後継者」


「答えろ……! 十年前、俺の両親を殺したのは……お前か?」


「愚問だな。それを聞くためにここまで来たのか。そうだよ――私が殺した。だが、それは正義だった」


蓮の眼が鋭くなる。


「正義? 何が……!」


「神紙の力は、選ばれし者にのみ許される。それを弱者のために使おうとした君の父親は、秩序を乱す者だった」


「ふざけるな……!」


蓮が紙を構え、地を蹴る。その瞬間、残月の掌がわずかに動いた。

すると空間ごとねじ曲がるような圧が広がり、蓮の紙が散る。


「貴様……紙を操ったか? いや、違う……紙そのものを“封じて”いる……」


「神封ノ紙。我が流派・黒折流こくせつりゅうの頂。紙に宿る神を、封じて制す。神に従う折神流とは違い、神を支配する我らの極意だ」


残月が一歩踏み出すたびに、蓮の足元の紙が灰のように崩れていく。


蓮は苦しみながら、胸元から小さな切り紙を取り出した。それは、幼少のころ、父と母からもらった折神のお守り。


「父さん、母さん……俺に折り目の意味を、教えてくれたよな」


掌の中で、切り紙がふわりと舞い上がる。空中で回転しながら形を変え、

一羽の白い鳳凰ほうおうとなって蓮の背後に降り立つ。


■ 折神流・極奥義


神紙顕現しんしかげん――折神・天翔白凰てんしょうはくおう


全身を光の羽で包まれた蓮が、周囲の封印を強引に断ち切る。


「お前のやり方は、神を“物”として扱う。それは紙でも神でもない。ただの支配だ!」


蓮の一閃が、封印の結界を破る。


残月が怒気を放つ。


「黙れぇッ!! この世界に神を宿す価値がどこにある!? 神紙は秩序だ、我こそがその理想だ!」


その腕に無数の黒紙が巻き付き、背後に顕現したのは、巨大な黒の鎧神――


■ 黒折流・最終式


神封顕現しんぷうけんげん――封神・黒天武神こくてんぶじん


空間を圧する巨大な神体。

鎧の表面には、これまでに封じた神紙の痕跡が刻まれていた。


「消えろ、蓮……すべてを灰にしてやる!」


爆風のような神気が襲いかかる――


だが、蓮は怯まない。


「俺の折り目は、誰かを守るためにある。神も紙も、誰かの想いのためにある!」


蓮の白凰が羽ばたき、黒天武神に突撃する。

まばゆい光と闇のぶつかり合い。


「天翔白凰、今こそ――神紙を貫け!!」


閃光がすべてを呑み込み、空間が崩壊していく中、残月の叫びがこだました。


「なぜだああああああッッ!!」


――そして、光が静かに消えた。



瓦礫の中、蓮が膝をつきながら立ち上がる。

黒折残月は気を失い、地に伏していた。


駆けつけた仲間たち――葵、悠真、リリア、リック――が蓮のもとに駆け寄る。


「レン!! 無事……!?」


「……ああ。少しだけ、紙が足りなかったけどな」


仲間たちが笑い、泣き、互いに肩を支え合う。


そのとき、空から一枚の白紙が舞い降りる。

それは、神紙の浄化の証。


――折り目が、また新たな歴史を刻み始めた。

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