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雨の日の晴  作者: 宿木
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青い昼

「あっ、木村さん、ちょっと…」


(ん?私?)


確か、1組の田畑くん。そういえば藤田さんと…


でも、木村なんて、結構いるし、私じゃないかも


「ごめんちょっと、いい?」


私だった。そんな気はしていたけど。


近くまで来て、田畑くんは、私に話しかけた。


キノコ図鑑を片付けて、図書室の外へ出た。


「どうしたの?」


「あっあのさ、め…藤田ってさ、元気?」


「藤田さん?今日は体調不良みたいだけど」


「そうらしいね…心配。最近の様子はどうかな?」


「最近は、すごく頑張ってる。音楽会のパートリーダーもやっててさ」


「ああ、そうなんだ、すごいなパートリーダー。元気にやれてるかな?」


「うん、元気だと思う」


「そうか、なら良かったんだ。ありがとう」


そう言って、どこかへ行ってしまった。


案外、あっけないというか、もっと深く聞かれるかと思っていた。


田畑くんと藤田さんは、元々付き合っていた。


多分、藤田さんのことが気がかりだったのだろう。


それにしては、軽めの内容だったけど。


しばらく会っていない友達の近況を聞かれているような雰囲気だった。


まぁでも、私が深入りすることでは無い。


歌の練習で藤田さんが頑張っていること、これを伝えるだけで充分だ。これでさえ、やりすぎなくらいだ。


また図書室に戻ろうとしたけれど、休み時間の終わる3分前だったので、教室に帰ることにした。


その後は、普段通りの授業が進んだ。


授業中は会話することはほとんどないから、いつもと変わらない。


プリントを後ろに回すことが無かったから、ちょっと気にはなったけど。


「はい、一旦帰りの会して、歌の練習しましょー」


もう来週には、音楽会。本番だ。あとは仕上げという感じだろうか。


ソプラノはリーダーの藤田さんが休みということで、私たちと練習することになった。


これも、普段となんら変わらない時間が過ぎた。


「はい、お疲れ様でしたー明日は1組さんと、歌の見せ合いをしまーす。それでは、さようならー」


「さようならー」


寂しさを含む、秋方の夕暮れ。


涼しげな風が、私の感情を司る物に触れる。


いつもなら、隣には晴美がいる。


今日は、車の走る音、信号、風に揺れる木々の、ワサワサという音。全てが、繊細に聞こえる。


やっと、いつもの坂にやってきた。


今日はなんだか、ここに着くまでが、長かったように感じる。


「ただいまー」


「おかえりー」


「今日は晴美も、仲のいい友達も休みだった」


「えーそれはちょっと寂しいし、心配だね」


制服を脱いで、家の私を呼び出す。


スマホを見ると、晴美から「ごめん!熱出しちゃって今日は休む」と、ちょうど私が家を出た辺りの時間にメッセージがあった。


とりあえず、「体調大丈夫?お大事に」と送っておく。


早く、良くなるといい。


今日は晴れ、どこか薄い青の、落ち着いた快晴だった。


どこか余白のある、隙間の目立つ1日。


隙間があるから見えた色、それはどこか鮮やかだった。

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