薄浅葱
今私たちは、体育館に向かっている。
どうやら、生徒会の役員を決める選挙があるらしい。
時間はお昼過ぎ。寝てしまう人もいるんじゃないだろうか。
全クラスが集まる体育館。
喋ると怒られるので、話し声は少ないものの、騒々としている。
「今から、生徒会役員選挙を始めます。起立」
まだ暑さはあるけれど、夏に比べたら、マシな方だ。
「まずは書記の演説を始めます。信任投票となりますので…」
選挙管理委員の、委員長。新しく2年生の子がなった。
優しい声で進めている。
(あ…)
「みなさん、こんにちは。1年3組の、金井まこです。」
昨日、朝一緒に学校に向かった子。
自販機の麦茶は不味いと、警告してくれた子だ。
「私は、性別問わず、制服を選ぶことの出来る制度を取り入れた、この学校が大好きです。現に私も、性別は女子でありながら、ズボンを履いています。」
ゆっくりで、はっきり聞き取れる声だ。
晴美の方を見ると、ちょうどこちらを向いて、笑っていた。
言葉にしなくとも、「あの子だ」と伝えたいのが分かる。
「私のように、制度によって、楽しく学校生活を送れる人がきっといると、考えました。私が役員に選ばれたら、皆さんの意見を積極的に、反映できるよう、努めていきます。ぜひ、投票お願いします。」
ざっと、300人は超えているだろう。
大勢を相手に、淡々と話す様子は、素直にすごいと思った。
「ありがとうございます。それでは、続いて、副委員長の…」
すごいな…私だったら、めちゃくちゃに緊張してしまいそう。
クラスで発表することでさえ、少し緊張するのに。
それが中一…すごいな。
私よりしっかりしているんじゃないだろうか。
「全員起立」
おお、まずい、あれから何も聞いていなかった。
教室に戻る。
「雨音ちゃん、今回も聞いてなかったでしょ」
「えあ、ちょっとは聞いてたよ」
そういえば、投票はどうするのだろう。
今までは放送で演説してたから…
「藤田さん、投票ってどうするの?」
「やっぱり聞いてないじゃん(笑)、教室でやるんだよ」
「教室か、ありがとう」
教室についた。やっぱり教室の方が涼しい。
「はい、ではこの投票用紙にお願いしまーす」
とりあえず、全部丸にしておいた。
(あ、金井真弧っていうんだ。いい名前)
投稿用紙に名前が載っていた。
「はい、お疲れ様でーす。帰る準備しましょう」
「さよーならー」
「さようならー」
今日は歌の練習がないらしい。
選挙の結果を集計するみたいだ。
「藤田さんまたねー」
「うん!また明日ー」
私は今、すごく晴美と話したい。
金井さんの演説についてだ。昨日の子が舞台で話していたこと、その話す姿に関心したこと。色々だ。
「あっ!晴美!」
今回はこちらから呼ぶことになった。
「雨音ちゃん!帰ろー」
門を出て、さっそく
「あの子さ、昨日の子だよね」
「だよね!しっかりしてたなー」
「うん、私よりちゃんとしてるよ」
「こっそり200円持ってきたのが恥ずかしい」
昨日の周り道には行かず、いつもの道を行く。
「おおっ涼しー」
不意に吹いた風が、先程の演説で受けた興奮を冷ました。
最近、涼しい風がよく吹くようになった気がする。
いよいよ、秋だろうか。
それでは、今までは夏…と言ってもそんな感じはしない。
蝉の声もしないし、夏ほど暑くはない。
やはり、季節の入り混じった時期なのだろう。
暑さに、時折、涼しい風が入り込む。それがより、そう感じさせる。
秋と夏が入り混じる。どんな色を持っているのだろう。




