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雨の日の晴  作者: 宿木
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深い朝

「おはようー」


「おはよう」


今日は晴れ、続く雨を抜け出し、快晴だ。


私としては、雨が去ってしまったことは、少し寂しいけれど。


「晴れたねー、いい天気。早起きして良かった。」


「そうだね、早起きには気持ちいい天気だね」


私たちは、いつもより30分程早く、朝の町を歩いている。


昨日の夜、居酒屋から家に帰ると、「明日早起きして町を探検しない?」という、晴美から突飛な誘いが、スマホを通して来ていた。


こういう誘いは、たまにあるから、そこまで驚かない。


「了解」というスタンプを1つ返しておいた。


「どうして、早く行きたくなったの?」


驚きはしないけど、気になりはする。


「んー、何となく。いつもの日常を探検したら、意外と見つかるものがあるんじゃないかって」


「いいね、私はもう1つ見つけたよ」


「え!はやー!」


たった30分早いだけ。


しかし、いつもより、町が、まだ新しい1日に溶け込んでいない。


そんな感じがする。


「いつもより、町が寝ぼけているっていうか、色が薄いかな」


色の薄い朝、深い夜という言葉があるように、今みたいな、「いかにも朝」を表すなら深い朝だろうか。


「ふーん、あ、でも雰囲気は違うのは分かる。静かだよね」


だいたい、そんな感じ。


「今日はあの道から行ってみよ!」


いつもの通学路から、細い道が1つ。


車が一台通ることができる程度だ。


学校に向かうには遠回りで、普段は使わない。


「いいね」


私もなかなか入らない道。


でも、この道が、最終的に、いつもの通学路に繋がっていることは知っている。


「あー!なんだあの自販機!」


「晴美、まだ朝早いから、ちょっと静かに」


「そうだった、ごめんなさい」


この細い道を避けるように、両端には家々が連なっている。


中々見かけることの無い自販機だ。


まず、自販機の色が違う。赤や青をよくみるけど、黄色だ。


並ぶ飲み物も、あまり見ないもの。


晴美が、スカートのポケットを漁っている。


「へへへ、ちょっとだけお金持ってきたんだ」


200円。ちょうど1本買えるほどだ。


「何買うの?」


「うーん、どれも微妙だな…ははは」


スポーツドリンク、麦茶、炭酸水、水、缶コーヒーに缶ジュース。


いずれにせよ、どれもあまり見ないものだ。


「あんま美味しそうじゃないなーでも気になるし…無難に麦茶に…」


「それ、やめた方がいいですよ」


「え?」


同じ制服だ。男子生徒だろうか?メガネをかけて、ズボンを履いている。多分、後輩の子


「その自販機、ほとんどが不味いです。ゲロまず」


「えーそうなの?」


「私、麦茶買ったんですけど、味が薄くて」


「あーそうなんだ。ありがとう。じゃあ私はこのジュースにしようかな」


(何かは買うんだ)


ゴトン


飲み物が落ちてくる、鈍い音。


「ではさっそく…」


オレンジジュースだろうか、缶全体がオレンジ色だ。


「どう?」


「んー、普通にオレンジジュース…でも私はもっと美味しいのを知っている」


まさに微妙という表情


「雨音ちゃんも飲んでみて」


「え、うん。いただきます」


確かに、普通にオレンジジュース。


果汁が少ないのだろうか。


「ちょっと、薄いね」


「そうだね、飲んでみる?えっと、名前…」


金井(かない)です」


「じゃあ金井さんどうぞー」


「ありがとうございます」


「んー、微妙ですね。薄いし、オレンジの飴を水に溶かしたみたいな」


(それだ)


「そう!それ!」


「的確だね」


余ったのは、晴美が飲み干した。


「あ、親切」


自販機の横に、ゴミ箱があった。


「じゃあ行こうか、そろそろいい時間」


「金井さんも一緒に行こう」


「はい」


気づけば、周りには同じ学校の生徒が複数いて、いつもの朝がやってきていた。


今日は、深い朝を知ったまま、1日を過ごそうと思う。

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