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雨の日の晴  作者: 宿木
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夜を着て、雨を付けて

今日は、雨のち曇。だった。


今は夜19時頃。いつもの坂道を下っている。


夜を着たおなじみの町並み。


今夜は、ただ夜の色なだけでなく、雨上がりだ。


通る車、街頭の灯りに、雨で(よそお)った町が応える。


「涼しくなったよねーそろそろ秋かな」


お母さんと、昨日行き損ねたご飯屋さんに向かっている。


今日学校帰りに、営業しているのを見てきた。


帰ってきたお母さんを誘って見たところ、一緒に行ってくれることになった。


「お母さんありがとう、帰ってきてすぐに」


「いいよー多分冷蔵庫何もなかったし、ちょうどいいや」


お店が見えてきた。


隣のコンビニの明かりが凄い。


夜闇の中の存在感、光に吸い込まれそうになる。


その明るみに飲まれる、味の違う灯りが1つある。


それが、私の行きたいお店。


ガラガラガラ


「いらっしゃいませー何名様ですか?」


扉を開けると共に、耳を包むのは、料理を炒める音、焼く音、明るい賑やかな人の声。


「二人でーす」


「じゃあこちらの席でお願いします」


1つのテーブルを、二人で挟む形の席。


居酒屋に近いのだろうか。というより、多分居酒屋だ。


「何食べようかなーあっ、タブレットあるんだ」


意外にも、タブレットで注文できる。


通りかかった店員さんに声をかけるのかと思っていた。


「私枝豆がいい」


「はーい、私は(やっこ)だなまずは」


「こちらお水でーす。ごゆっくりどうぞー」


「ありがとうございます」


昨日の昼のように、テレビがやっている。


しかし、店の賑やかさに負けて、音は聞こえない。


字幕だけが、言葉を発している。


「いいねー、こんなとこに居酒屋があるとは」


「私は見落としてた」


「まあまだ雨音だけじゃ来れないしね」


「中高生だけで来たら追い返されるの?」


「そうだよー、入る分にはいいんだろうけど、最近は追い返されるかな」


「昔は良かったの?」


「昔はねー、年齢確認とか緩くてさ、入れたよ」


(え、お母さんやったことあるの…?)


「お母さんあるの?大人じゃないのに入ったこと」


「あるよ、高校生のときかなー。まだお酒飲めないけど友達と入ったなー。あ、友達ってのは灯凪ね」


「へー」


あんなにおしゃれな灯凪さんだ、高校生ぐらいなら、大人と思われることもあっただろう。


「お酒はもちろん頼んでないけど、雰囲気が好きでさ、何回か入ってた」


「お待たせしましたー、枝豆と、冷奴、オレンジジュース二つでーす」


「ありがとうございまーす」


「お酒飲みてー、でも明日仕事だ」


「ポテトと唐揚げも欲しい」


「はいよー好きなの頼みなー」


「居酒屋の雰囲気が好き」というのは、凄く分かる。別に、ルールからはみ出してまで来て、楽しもうとは思わないけど、今も、程よく力が抜けたという感覚が、手に取るように分かる。


「お待たせしましたー」


頼んだ料理が、テーブルを埋めていく。


「美味っ、こんぐらいの料理がやっぱ一番いいな」


「こんぐらいってなんか失礼な気もするけど」


「ははは、確かに、口に合うってこと」


お母さんは、凄く美味しそうに食べる。


私が顔に出るのは、やっぱりこの人譲りなのだろう。


一通り皿を空けて、時間は、21時過ぎになった。


「そろそろ行こうか」


「うん」


周りの賑やかさも、薄れてきた。


やはり平日の始まり、夜遅くまでは、人が残りにくいのかも知れない。


「ありがとうございましたー」


「ごちそうさまでしたー 」


お店の扉を閉めると共に、夜の音に切り替わる。


「美味しかったねー次の日が休みのときに来たい」


「お母さんありがとう、美味しかった」


「いいよいいよ、いい店見つけてくれてありがとねーまた来ようね」


灯りから出てきた私を、さりげなく冷ましてくれる、夜の風。


太陽が作る時間帯では、感じることは難しい。


少し先の、あの灯りに溶け込む自分が、少しだけ楽しみになった。

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