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雨の日の晴  作者: 宿木
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夏を少し

今日は晴れ。快晴までとはいかないけれど、青空が覗いている。


気づけば、もう蝉の声が聞こえない。


時期的には、耳をすませば、聞こえるのかもしれない。


しかし、もう鳴いていないに等しいと言える。


今日は、先生の会議があるからと、少し早く帰ることができた。


本屋さんに、本を買いに行こうと思う。


本当は、勉強をした方がいいのだろうけど。


昨日の雨上がり、気温としてはまだまだ夏。


強めに降ったはずだが、水たまりがあまり出来ていない。


太陽が、持っていってしまったようだ。


バス停で、バスを待つ。


屋根が付いているといえど、暑い。


蝉も身を引こうとしているのに、まだ暑い。


バスが見えてきた。


乗れば涼しいはず。動く避暑地だ。


「うぇーん」


(?)


乗り場から少し離れたところで、小学3年生くらいの男の子が泣いていた。


(あのバスに乗りたいけど…)


私は見送ることにして、男の子に話しかけた。


「どうしたの?大丈夫?」


日常を続けていると、たまにこういう色のついた日常がやってくる。


「ママがこない」


「え?」


どうやら、「ここで待ってて」と言われたらしい。


今のバスに乗るのに、お母さんが来ないから不安になってしまったみたいだ。


「じゃあ…少し一緒に待ってようか」


「…うん」


私の他に、数人、明らかに私より年上の人達がいた。


その人たちは、バスに乗って行ってしまった。


思うことがないと言えば、嘘になる。


「なかなか来ないね…」


「コンビニ行ってくるから少し待っててって言ってた」


「コンビニか…」


ここからコンビニまで、10分弱だ。


今私たちは、10分近く待っている。


この子が待たされた時からだと、15分くらいはするのではないだろうか。


「飲み物とか大丈夫?暑いけど」


「大丈夫、水筒もってる」


特に会話が進むわけでもない。


車通りが無くなったころ、小さく、ジリジリジリと聞こえる。


まだ、夏の匂いが残っているようだ。


「…あ、あれじゃない?」


人が一人、小走りでこちらへやってくる。


母親のように見える。


よく見ると、この子よりも小さな子を抱えているみたいだ。


「ごめんねー!遅くなっちゃって!」


「遅いよ!」


「ごめんごめん!」


「バス行っちゃったよ!」


「ごめん…」


「もしかして、この子と一緒に待っててくれましたか?」


「ああ、まぁ一応」


「本当にすみません!ありがとうございます!」


次のバスは…後3分か。


「あの、もし良かったらこれ入りますか?」


2枚の紙を渡された。


「すぐそこのお風呂屋さんなんですけど、私そこで働いてて、それあれば無料で行けるんで」


「え!いいんですか?この子達と使った方が…」


「いえいえ、ご迷惑をおかけしたし、こっちの子がまだ小さくて、大変だから」


「じゃあ、ありがとうございます。今度行きます」


「ありがとうございます!」


「お待たせしました…〇〇行きです。〇〇行きです。」


バスが来た。


私たちはそれに乗り込んだ。


やっぱり、バスは涼しい。動く避暑地だ。


少しして、あの親子は、こちらに軽く会釈をして降りていった。


あの子、「遅い!」とか言ってたけど、お母さんにあった時は嬉しそうだったな。


表情に味が出たというか。


お風呂屋さんのチケット2枚貰っちゃった…誰と行こうか…


色々な人の顔が思い浮かぶ。


いよいよ、私の降りるバス停に着いた。


「ありがとうございましたー」


地元より、少し栄えた場所。


今日は晴れ、雲が空のほとんどを占める中、青が隙間から覗く。


残る暑さと夏の匂い。


日常は、着飾ってやってきた。


いつもの本屋さんに私は向かうことにした。

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