雨、朧な灯り
今日は曇り、今朝のテレビは、午後から雨が降ると言っていた。
「行ってきまーす」
「はい、気をつけてねー」
学校に向けて歩き出す。
(あ…)
今日は、晴美も一緒だった。
いつもの坂を上がり、晴美の家まで向かう。
9月に入って、晴美は部活を引退した。
今までは、時々、朝一人で登校することがあったけど、これからは多分毎朝一緒だ。
ピンポーン
「ごめん!今行くね!」
ドタドタドタ
久しぶりに聞いたこの音。
「おはようー!ごめんねー」
「おはよう、あ、午後から降るみたいだよ」
「ホント?じゃあ持ってくありがとう」
「天気微妙だねーまあもう部活ないから私には関係ないけど…あ!でも、雨は続いてほしくないなー。今度さ、引退試合があるんだ」
「そうなの?」
「うん、3年生と、1、2年で試合するの」
「へー、じゃあ一応、部活とお別れじゃあないね」
「うん!引退ってなんだか寂しかったから、こういうのは嬉しい。写真部は、そういうのないの?お別れ会とか…」
「私か、あ…そういうのは聞いてないかも、去年もそういうのなかったし…」
「じゃあ、もう引退かー」
ああそうか、9月になると同時に、私は引退したのか。
もともと運動部ほど、本気で活動とかはしてなかったけど、こうも呆気ないと、寂しさが、少し湧く。
「なんか、寂しいね」
「うーん、でも大丈夫だよ!引退しても、活動してる日に顔出せばいいじゃん!」
「そうだね、ありがとう」
学校について、また1日が始まる。
室内では、灯りが必要な、そんな天気。
(…やっぱりもう少し活動したかったな)
寂しいことは寂しいけれど、そういうもんだと思っていたので、そこまでではない。
いつもの1日が過ぎていった。
案の定、お昼を食べてから、雨が降り出した。
いい音だ。
若干、強い気もするけれど、乾いた、雨の弾けるいい音。
「さよならー!」
「はい、さよなら、気をつけてねー」
「やべ、傘持ってない」
「おれもー」
(そうだ、久しぶりにあの渡り廊下に行ってみよう)
あそこに行って、宵音ちゃんに会って、写真部がより楽しくなった。
最初はどこか距離のある話し方だったけど、段々と気を張らずに話してくれるようになった。
(いい音だ)
すぐ近くに感じる雨。
今日はこのぐらいの強さを、耳が受け付けている。
「ーちゃ…!」
?、なにか聞こえた。声の方へ、目を向ける。
「あ!宵音ちゃん!」
「雨音ちゃん!」
意識を向けて、ようやく聞こえた。
雨音がかき消していたのだろう。
「宵音ちゃん、今日は活動ないの?」
「今日はないよ、明日はあるけど。雨音ちゃんは来…あ、引退だった」
「そうだね、なんだかぬるっといったよね」
「そうかも、案外呆気ない」
数分、目の前の景色に、気持ちを預けていた。
「私、そろそろ帰るね」
「私も帰ろうかな一緒に帰ろ!」
一緒に、土間に向かう、その間も、雨音が包まれていた。
「そうだ、勉強大変だろうけど、また顔だしてよ」
「うん、絶対行く」
「あ!いた!雨音ちゃんどこ行ってたのー!」
晴美だ、もしかして、ずっと待っていてくれたのだろうか。
「ごめん、ちょっと行きたいとこあって、伝えるの忘れてた」
「まぁいいや、あ!宵音ちゃんじゃんお土産美味しかったよ!」
「良かったー私ももらったやつ美味しかった」
「じゃあ、私はこっちだから」
「うん、またね」
「宵音ちゃんまたねー!」
雨の中でも、はっきりと聞こえる晴美の声。
「なんだか、そんな暑くなくて、いい感じの雨だねー」
「あっそうかも」
私は雨が降れば嬉しいので、気にしていなかった。
「水溜まりー」
バシャン
「制服よごれちゃうよー」
「多分大丈夫ー」
このはっきりと聞こえる声。
雨の中の、小さな太陽だ。
いつもの坂に来た。
「じゃあねー雨音ちゃん、なんか、朝よりいい顔してる!雨が降ってるから?」
「え?ああ、そうかも。またね」
朝は…確かにちょっと寂しい事を考えていたかも。
別れたあと、もう関わりが無くなっちゃう気も、うっすらとしていた。
でもなんか、大丈夫な気がしてきて、時間がそうしたのかもしれないけど、大丈夫だと自信が持てる。持てている。
「ただいまー」
「おかえりー」
ドアを閉めると同時に、雨音は小さくなった。
明日は、太陽が出てくるらしい。




