表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の日の晴  作者: 宿木
78/124

午前、雲にのって

今日は、曇り。


分厚い雲が、こちらに身をまかせるように、体重をかけている。


時間は、10時頃。


本来なら、明るいはずの外の世界。


家の中では、早くも電気が必要になるほどだ。


(どうせなら、雨が降ってくれたらいいのに)


ただただ暗くて、分厚い雲。


夏を引きずる蝉の声が、微妙に、不気味な感じを演出している。


スマホで、降水確率を見てみる。


この後、日付が変わるまで、確率は一律で20%


この調子だと、降りそうにない。


「はぁー」


まもなく、この長い夏休みが終わる。その後に続く、やるべきこと。


今日の天気の憂鬱を、ため息に混ぜこんだ。


テレビを前に、寝転がる。


暇になれば、よくこうする。


庭には、とりあえず雨は降らないだろう、ということで干した洗濯もの。


お昼まで時間はある。


暇なので、散歩にでも行くことにした。


財布と、スマホ、それと、もしかしたらという心配と、期待で、傘を持って外へ出る。


「いってきまーす」


(突然出てきたけど、どこ行こうかな)


目的地なんて、決めてない。


まあ散歩なのだから、近所を散策する程度いいだろう。


(あっ)


居酒屋の角を曲がったところで、私はあるものを見つけた。


茶色と白の、上手く混ざる猫だ。


こちらをじっと見た後、歩き出した。


その(かん)、私も何故か、足を止めていた。


(どこ行くんだろ…)


刺激しないよう、遠巻きについて行ってみる。


急に止まっては、毛繕いをしたり。


道端の、死にかけの蝉で遊んだり、その様子は、まさに猫。自由そのものだった。


この猫の行く道は、不思議と信号がないので、ついて行きやすい。


そう気づいた頃には、少し遠くまで来ていた。


(ここは…)


私の中学校の学区内ではない。


多分、別の中学の学区。


時間は…11時過ぎ。


「あっ」


私の追っていた猫は、一軒家の敷地内へと入ってしまい、姿が見えなくなってしまった。


仕方ないので、帰ることにした。


(自由な猫だったな)


行きたいところへ行って、やりたいことを、ところ構わず行う。


(ん?…あれ?どこから来たっけ…)


ここがどこなのか、どの道を行けばいいのか、分からない。


幸い、スマホがあるので、地図を見ながら帰ることにした。


(んー、こっち?)


私の来たことのない土地。


せめて、見た事のある場所へ出られたら…


地図を頼りに、家に向かう。


スマホの示す経路は、右へ行ったり、左へ行ったり、何故かとある地点を1周する経路になっていたり、複雑だ。


この重たい雲と、蝉の声。いよいよ、本格的に不気味だと感じる。


(コンビニだ!)


とりあえず立ち寄って、飲み物を買おう。


「いらっしゃいませー」


(とりあえず、お茶かな…ご飯は…うーん、)


「あれ?雨音ちゃん?」


「え?」


「やっぱり!良かったー間違ってなくて!」


「藤田さん?どうしてここに?」


「それは、私も思うこと。ここ、ちょっと遠いでしょ?」


先程の出来事を、彼女に話した。


「あはは!自由な猫って、今の雨音ちゃんも相当自由だけどね!」


それも、そうか。


暇だからという理由で家を出て、見つけた猫を勝手に追いかけて、迷子になった。


「わかった、学校までだったら分かるから、一緒に行こう」


「ありがとう!本当に助かる」


お茶を買って、コンビニを後にする。


藤田さんは、自転車で来ていたようだ。


「今日ねー、ちょっと遠くまで、自転車で行ってたんだ。」


「そうなの?」


「うん、なんか、遠くまで行きたくなっちゃって、朝から。」


「ちょっと分かるかも、私もこないだ、そんなことしてた」


「いいよねー、何も考えなくて良くなるっていうか、見たことない土地だから、目の前のことに頭を支配されるっていうか。」


「そうそう!上手だね、言葉にするの」


「ありがとう」


だんだん、私の普段身を置く土地に近づいているのが、感覚的に分かる。


「あっ、ここからならもう帰れそう」


「そう?じゃあ、私はここで」


「うん、本当にありがとう。また、学校でね」


「うん!気をつけてねー」


少し歩いて、いつもの坂までやってきた。


(帰ってきたー)


「安堵」が私を一気につつむ。


「ただいまーお腹すいたー」


時間は、12時過ぎ。お昼時だ。


重々しい雲がもたらした天気。


この地に寄りかかるような雲。


一時、この不気味な雲に潰されそうだったけど、私には光が差し込んだ。


(改めて、今度藤田さんにお礼を言おう。)


今日のお昼、何を食べようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ