表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の日の晴  作者: 宿木
72/124

旅宵を感じて

だんだんと夜は濃くなる。


(あっ、隣の車、さっきもいた)


ほぼ一直線の高速道路では、たまにこういうことがある。


先程の渋滞も共に戦った同じ車だ。


あちらは、子供連れのようだ。


後ろの席に、二人ほど子供が乗っている。


こういう、薄くて、ほんのわずかな繋がりが生まれる。


明日には、どんな車だったかすら、忘れているだろうけど。


15分ぐらいだろうか、列は動き出し、緩やかに進んでいった。


「サービスエリアよるねー」


「うん」


先程の戦友は、ここには寄らなかった。


恐らく、ここでの別れだろう。


トイレを済ませ、お土産を買うことに。


いつもなら、晴美と、駄菓子屋さんのおばあちゃんぐらいだったけど、今年は、宵音ちゃんにも。藤田さんにも、あげたい。


「お母さん、これがいい」


「あれ?少し多くない?」


「うん、あげたい人が増えたんだ」


「分かった」


お母さんは職場の人と、灯凪さんに買ったみたいだ。


以外にも、人が並んでいた。


すると、私の後ろの人が。


「それ、美味しいですよねぇ私も自分用に買っちゃった」


中年ぐらいの、女性だ。


「え、ああ、そうなんですか?初めて買うので」


「美味しいですよ、誰かへのお土産ですか?」


「そうですね、私は友達にあげたくて」


「親子でいいですねぇ私は1人旅で」


「一人旅いいじゃないですか、私は好きですよ」


「たまには、人が恋しくなるときがありますけ…」


割って入るように、レジの順番が来た。


「では、お気をつけて」


「すみませんねぇ、急に。お気をつけて」


私たちは、旅人を吸い寄せる明かりから、離れた。


「雨音、アンタ意外と喋るよね」


「そうだね、勝手に言葉が出てくる」


やはり旅には、一期一会という言葉が、着いて回るだろう。


出会うものが、人ではなくても。


時間は、22時半過ぎ。


建物の外では、夜の香りが、人々を包む。


夜の匂いって、あるような、そんな気がしている。


静かな車内に、また、会話がやってきた。


「ここでお便り読んでいきましょう。ラジオネーム、炊飯ジャーのジャーって何?さんからのお便りです。田中の隣人さんこんばんは!いつも楽しく聴いています。」


「ありがとうございます。なんだけど、俺田中の隣人じゃないからね、佐藤の後継人だから」


「最近あった事を話します。その日、私は何を思ったのか、洗濯物を干すハンガーの、フックの部分を、夫の鼻の穴に引っ掛けてみようと、実行に移しました。すると、夫は急に笑い始め、「右鼻にも、掛けてみよう」と提案してきました。終いには、私の鼻にまで、ハンガーinしていました。私は、どこで間違えたのでしょう。」


「やっぱこうなるかー、初めて聞いてる方にはあれなんですけど、こういう番組なんですよ。変な大人が、微妙な時間にふざけてるっていう。」


「時間の無駄極まりないですが、お後30分。お付き合いください」


混んではいるけど、止まることはなく、ゆっくりと、車は進んでいる。


「ありがとうございましたーそれでは、また来週がありましたら来週〜」


…♪…♪


1つ番組が終わったころ、私たちは列から外れた。


時間は、23時半過ぎ。高速を抜けた。


高速を降りれば、一気に雰囲気は変わる。


辺りに、人通りも、車通りも少なく、静かに、夜を走っている。


前後合わせて2、3台車がいる。


いずれも、高速道路からやってきたのだろう。


辺りの景色で、地元であることを、感じさせられる。


だんだんと、車が列から離脱していく。


旅終わり、それぞれが家に着く。


そんな雰囲気が、私はたまらなく好きだ。


ああ、近づいてきた。


ここら辺は、私も歩いて通ったことがある道。


目の前には、居酒屋が、ここを曲がれば、もうあの坂が見えて、私の家だ。


今日の日が登っている間は、遠く離れた場所へいて、今、ここへ帰ってきている。


なんだか不思議な気持ちで、懐かしささえ感じる。


「はーい着いたよー」


「ありがとう、おつかれ」


「そうなんですよね、あ…」


私たちと一緒にいた会話も、帰っていった。


今はちょうど、12時頃。


大きく、沢山の荷物を持ち、ドアノブを握る。


「ただいまー」


「ただいまーおかえりー」


「ふーっ帰ってきたー」


物はあるものの、どこか空っぽだった家。


明かりと、私たちがいるだけで、どこか、充足感が生まれる。


人間が、そう感じているだけかもしれないのだけれど。


「お風呂洗うね」


「ありがとう」


今、お風呂を沸かしている。


「少しお腹すいたなー」


私も、小腹が空いている。


空腹というわけではないが、ある程度食べられそう。


「今からだと…」


「コンビニ?」


「へへっ雨音、行きたいんでしょ」


「うん、行きたい」


私たちは、お風呂が溜まるまで、コンビニへ、行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ