旅宵を感じて
だんだんと夜は濃くなる。
(あっ、隣の車、さっきもいた)
ほぼ一直線の高速道路では、たまにこういうことがある。
先程の渋滞も共に戦った同じ車だ。
あちらは、子供連れのようだ。
後ろの席に、二人ほど子供が乗っている。
こういう、薄くて、ほんのわずかな繋がりが生まれる。
明日には、どんな車だったかすら、忘れているだろうけど。
15分ぐらいだろうか、列は動き出し、緩やかに進んでいった。
「サービスエリアよるねー」
「うん」
先程の戦友は、ここには寄らなかった。
恐らく、ここでの別れだろう。
トイレを済ませ、お土産を買うことに。
いつもなら、晴美と、駄菓子屋さんのおばあちゃんぐらいだったけど、今年は、宵音ちゃんにも。藤田さんにも、あげたい。
「お母さん、これがいい」
「あれ?少し多くない?」
「うん、あげたい人が増えたんだ」
「分かった」
お母さんは職場の人と、灯凪さんに買ったみたいだ。
以外にも、人が並んでいた。
すると、私の後ろの人が。
「それ、美味しいですよねぇ私も自分用に買っちゃった」
中年ぐらいの、女性だ。
「え、ああ、そうなんですか?初めて買うので」
「美味しいですよ、誰かへのお土産ですか?」
「そうですね、私は友達にあげたくて」
「親子でいいですねぇ私は1人旅で」
「一人旅いいじゃないですか、私は好きですよ」
「たまには、人が恋しくなるときがありますけ…」
割って入るように、レジの順番が来た。
「では、お気をつけて」
「すみませんねぇ、急に。お気をつけて」
私たちは、旅人を吸い寄せる明かりから、離れた。
「雨音、アンタ意外と喋るよね」
「そうだね、勝手に言葉が出てくる」
やはり旅には、一期一会という言葉が、着いて回るだろう。
出会うものが、人ではなくても。
時間は、22時半過ぎ。
建物の外では、夜の香りが、人々を包む。
夜の匂いって、あるような、そんな気がしている。
静かな車内に、また、会話がやってきた。
「ここでお便り読んでいきましょう。ラジオネーム、炊飯ジャーのジャーって何?さんからのお便りです。田中の隣人さんこんばんは!いつも楽しく聴いています。」
「ありがとうございます。なんだけど、俺田中の隣人じゃないからね、佐藤の後継人だから」
「最近あった事を話します。その日、私は何を思ったのか、洗濯物を干すハンガーの、フックの部分を、夫の鼻の穴に引っ掛けてみようと、実行に移しました。すると、夫は急に笑い始め、「右鼻にも、掛けてみよう」と提案してきました。終いには、私の鼻にまで、ハンガーinしていました。私は、どこで間違えたのでしょう。」
「やっぱこうなるかー、初めて聞いてる方にはあれなんですけど、こういう番組なんですよ。変な大人が、微妙な時間にふざけてるっていう。」
「時間の無駄極まりないですが、お後30分。お付き合いください」
混んではいるけど、止まることはなく、ゆっくりと、車は進んでいる。
「ありがとうございましたーそれでは、また来週がありましたら来週〜」
…♪…♪
1つ番組が終わったころ、私たちは列から外れた。
時間は、23時半過ぎ。高速を抜けた。
高速を降りれば、一気に雰囲気は変わる。
辺りに、人通りも、車通りも少なく、静かに、夜を走っている。
前後合わせて2、3台車がいる。
いずれも、高速道路からやってきたのだろう。
辺りの景色で、地元であることを、感じさせられる。
だんだんと、車が列から離脱していく。
旅終わり、それぞれが家に着く。
そんな雰囲気が、私はたまらなく好きだ。
ああ、近づいてきた。
ここら辺は、私も歩いて通ったことがある道。
目の前には、居酒屋が、ここを曲がれば、もうあの坂が見えて、私の家だ。
今日の日が登っている間は、遠く離れた場所へいて、今、ここへ帰ってきている。
なんだか不思議な気持ちで、懐かしささえ感じる。
「はーい着いたよー」
「ありがとう、おつかれ」
「そうなんですよね、あ…」
私たちと一緒にいた会話も、帰っていった。
今はちょうど、12時頃。
大きく、沢山の荷物を持ち、ドアノブを握る。
「ただいまー」
「ただいまーおかえりー」
「ふーっ帰ってきたー」
物はあるものの、どこか空っぽだった家。
明かりと、私たちがいるだけで、どこか、充足感が生まれる。
人間が、そう感じているだけかもしれないのだけれど。
「お風呂洗うね」
「ありがとう」
今、お風呂を沸かしている。
「少しお腹すいたなー」
私も、小腹が空いている。
空腹というわけではないが、ある程度食べられそう。
「今からだと…」
「コンビニ?」
「へへっ雨音、行きたいんでしょ」
「うん、行きたい」
私たちは、お風呂が溜まるまで、コンビニへ、行くことにした。




