表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の日の晴  作者: 宿木
70/124

天色、別の夜に

「ただいまー」

時間は、16時頃。


夏とはいえ、もう、日が今日を終える準備を始めたのが分かる。


「雨音、そろそろ行くから、準備して」


「分かった」


家からここに来る時にも、同じ作業をした。


持ってきた服や、物をカバンに詰める。


いかにも、帰るという感じがする。


荷物をまとめ終わって、リビングへ向かう。


「真絃ーそろそろ準備してー」


「やだー怜翔さん、オセロしよー」


「真絃くん、帰る準備してからにしようか」


「んー、オセロしたらする」


「明輝さん、いつぐらい出ます?」


「あと、30分ぐらいですね…」


「うーん、真絃くん、やっぱり先に用意しようか、真絃くん強いからさ、オセロやると時間かかっちゃうんだよ」


「お父さんと風結が、服とか入れてくれてるから、あとはおもちゃとかお菓子いれるだけだよ」


多分、オセロがやりたいんじゃない。


帰りたくないのだろう。


帰らなくてよくなる理由を、探しては、口にしている。


気持ちは、よく分かる。


私も、帰りたくなくなったとき、なにかと、てきとうな事を言っていた記憶がある。


その時でたのは、突飛な言葉なので何を言ったかは、覚えていないけど。


私の場合は、多分、何かに納得して帰ったのだろう。


(なにか、できないかな)


「怜翔さんも、用意ありますよね?気にしないで、行ってきてください。」


「そうですね、真絃くんごめんねー」


お父さんが、この場から離席した。


だめだ、オセロをするしか思いつかない。


「あ!雨音ちゃん、オセロしようよ!」


(え)


「うーん、そーだな…」


「真絃、そろそろちゃんと…」


「そうだな、多分真絃くんは、私に勝てないよ」


「やらないと分かんないじゃん!」


「分かるよ、オセロは先を考えることが大事なゲーム。今ここで、真絃くんは何をすべきか、先のために何をすべきか、考えられてる?」


(ちょっと、言葉が難しいかな…)


「石を多く取ろうとだけ、考えてない?」


「…やっぱり、オセロは後でいいや。終わったら雨音ちゃん、オセロしようね!」


「いいよ」


用意と言っても、ただ、お菓子とか、おもちゃをいれるだけらしいんだけど。


ちょっと難しいことだけど、納得してもらえたようだ。


「オセロとは関係ないでしょ」とでも言われたら、そこまでだったけど、なんとか、オセロと自分のこと。


一緒のことと考えてくれたみたいだ。


「お母さん、準備終わったー」


「はい、ありがとう。真絃も、多分すぐ終わると思う」


「終わったよー」


「うい、じゃあ、あと少しだけどゆっくりしようか」


「真絃くん、オセロする?」


「うーん、やっぱいいや」


「え?いいの?」


なんか、私が色々言ったものの、こうなると少し寂しい。


無邪気さが失われたというか…


(あ、)


何やら、真絃くんは、手元を忙しくしている。


「真絃、それ、うちのじゃないよね?」


「うん、寝る部屋にあった」


たしか、真絃くんは、明輝ちゃんの部屋だった。明輝ちゃんのものだろう。


真絃くんは、ルービックキューブで遊んでいる。


「懐かしいそれ、私のだ」


「持って帰りなぁ」


おばあちゃんがそういった。


「いいの?やったー!ありがとう」


どうやら、新しいおもちゃを見つけたみたい。


なんだか、安心した。


「そろそろ行くよー」


横へスライドさせるタイプの扉。


この細かな自分の家との違いが、この先のことを、意識させる。


おばあちゃんも、一緒に外へ出る。


時間は、18時ごろ、暗がりになってきた。


この家を、一旦離れる。


そんな雰囲気をこの時間の明るさが、思わせる。


「雨音、またねー」


「うん、また」


「雨音ちゃん、次会ったらオセロしようね!強くなるから」


「うん、楽しみにしてるよ」


「真絃、オセロも持って帰る?」


「いいや、また来たときにやる。おばあちゃんが持っててー」


「はいはい」


「明輝も、真鳴斗さんも、気をつけてねー」


「咲久も雨音も、またね、早くて次は来年かなー」


「咲久ちゃん、今度私、そっち行くから、灯凪さんのところ、連れてってね」


「はいはい、また連絡してね」


「あっ!怜翔さん!怜翔さんも、次会ったらオセロね!」


「分かったよー元気でね」


「お父さん、次は、来月?」


「そうだね、どっか食べに行こうか」


「うん、じゃあね、気をつけて」


「ありがとう。咲久、じゃあまた、連絡するね。雨音よろしく」


「分かった、気をつけてね」


こうして、それぞれが車に乗った。


3台の車は、一列に走り出す。


「おばあちゃんまたねー!」


おばあちゃんに、車から手を振る。


もう、おばあちゃんは見えなくなってしまった。


やはり、この瞬間は、いつも寂しい気持ちになる。


夜を迎える天色。いまの気持ちを映しているみたいだ。


車内には、聞きなれない、別地域のラジオ。


「そうねー、そろそろ8月終わりかー」


「まあ、まだある方ですけどね」


「でも、あっという間よ、意外と」


「そうなんですよねー、半月なんてすぐですからね」


大通りに出て、前方のお父さんの車と、風結の車とははぐれ、見失ってしまった。


数日前、車で通った道。


行きとは違った姿で、別の道を行ってるようだ。


高速道路への入り口が見えた。


ここから一気に、家へと向かっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ