朝、日常に向けて
朝だ…
気がついたら、部屋は明るくなっていた。
部屋に響く時計の音を感じていたところまでは記憶があるのだが、そのまま、朝を迎えたみたいだ。
意識することなく、朝に会うことが、たまにある。
まるで、一瞬にして、夜が終わったかのように。
言葉にすれば、もう少し、夜を楽しみたいような気もするが、そんなことは意識しないほど、「よく寝た」この感覚が強い。
「おはよー」
「おはようー」「おはよー」
「あっ!雨音ちゃんおはよ!オセロしよう!」
「いいよーご飯食べてからねー」
すっきりする目覚めではあったが、朝の空気には触れていたい。
あえて元気は使わずに過ごす。
「今日は、各地で猛暑となるでしょう。熱中症に十分お気をつけください。」
朝の台所。ラジオが上手く静かさに溶け込んでいる。
「ああ、雨音ちゃんおはよう。味噌汁あるから、よそって、食べてね」
「ありがとう」
「あと、ご飯ね、ソーセージとかもあるから、あと、納豆もあるよ」
「ありがとう」
作ってくれたソーセージと、レタス、味噌汁と納豆ご飯をリビングに持っていった。
真絃くんと、まだ眠そうなお父さんがオセロをしている。
「いただきます」
いつもより人が多いけど、やはり朝だ。
この時間の空気は、落ち着いていて、胸の内に、穏やかな芯を持っているような、そんな感じがする。
それは、なんとなくこの家にいる人は、そうなんじゃないかと、そう思う。
「おはよー」
「おはよう」
風結が起きてきた。
「なんだかいい朝だねぇ」
風結も、そう思っているみたいだ。
「ごちそうさまでした」
まだ、真絃くんはお父さんとオセロをしている。
その間に、歯を磨くことにした。
「真絃くんお待たせー」
まだ続いている。
あと4マスしか残っていないが、すごく考えている。
「負けた…」
真絃くんの負けだ。
「真絃くん強いなー朝からめちゃくちゃ考えちゃったよ」
「真絃くんお待たせ、私はもうできるよ」
「うん!やろう!」
(あれ、一昨日やったときとは、ちょっと違う)
しっかりと考えて、置いている。
「雨音ちゃん、本気でやってね」
「うん、なんだか今日の真絃くん、手は抜けなさそう」
「雨音ー、ボコボコにしちゃいなー」
一昨日は、多く取れるところがあれば、真絃くんはすぐにそこを取っていたけど、今回は違うみたい。
たった2日ほどなのに、成長を感じる。
「あれ?真絃、考えるようになった?」
「ちょっと静かに!」
「すんませーん」
こちらも、考えて、石をおかなければ、負けてしまう。
なんとなく、真絃くんの気持ちがわかる。
手を抜かれて勝っても、たいして嬉しくないのだ。
「スイカ切ったよー」
「ありがとう」「食べるー」
お母さんと、明輝ちゃんが切ってくれたみたいだ。
まぁ今は、この白黒の盤面に集中しなければだけど。
最近はオセロなんて全然やってなかった。
しかし不思議と、何をしなければならないのか、憶えている。
(おっ、いいところ置くな…)
その後、15分ぐらいだろうか、ようやくゲームが終わった。
パッと見では、どちらが多いか分からない。
「真絃くん、いくつだった?」
「29!」
自信たっぷりだが、私の勝ちだ。
64マスなので、32以上は取らないといけない。
「私は35かな」
「負けたー」
「でも、すごく強くなったね、ちゃんと考えてた」
「雨音ちゃん、俺が教えたんだ」
「僕も教えたよ」
どうやら大人たちに仕込まれたようだ。
「どうする?もう1回やる?」
「いいや、スイカ食べる!」
「私も」
「今日のお昼は、どうする?」
「今日は家かなー、夕飯前には出ないとだし」
「分かったー」
そうだ、今日、この家をでて、帰るのだ。
帰る日というのは、やっぱり少し寂しくなる。
まあ、もう慣れたけど。
しかし、私より少し幼い子はどうだろう。
「えー今日帰りたくない!もう少しいるー」
「でも、帰らないと、かいくんとか、会えないよ?」
「うーん」
「まだ時間あるし、大丈夫だよ」
まだまだ、我儘を通したい。
気持ちは、よく分かる。
お昼は冷やし中華を食べた。
「ごちそうさまでしたー」
また、真絃くんは、お父さんとオセロをしている。
「今日は駄菓子屋行くの?」
「行く!」「行きたい!」「行くー」
オセロに集中していた真絃くんも、反応した。
「じゃあそろそろ行こうか」
「うん!」
真絃くんは、オセロを中断して着いてきた。
私と、風結と真絃くんと、おばあちゃん、それと、明輝ちゃんとお母さんだ。
毎年、ここに来ると、近くの駄菓子屋さんに行って、お菓子を買ってもらう。
帰り道、お菓子が食べられるように。と、おばあちゃんが買ってくれるのだ。
「あらーよいさん、いらっしゃい。え!明輝ちゃん?咲久ちゃん?あとは、お子さんたち?久しぶりだねー」
「こんにちは」
駄菓子屋さんの、店員さん。
おばあちゃんと、多分歳は変わらない。
いつも、近所の駄菓子屋さんで買うのと、変わらないお菓子。
それと、他のお菓子も、少し多めに買う。
「ありがとうございます!元気でねー」
「ありがとうございます」
「またねー」「また来ます」
私たちは、駄菓子屋さんを後にした。
「おばあちゃんお菓子ありがとう」
「いいえー帰りは気をつけるんだよ」




