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雨の日の晴  作者: 宿木
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夜が咲かせる

「いただきます!」


昨日も、今までも思うけど、おばあちゃんの料理と、お母さんの料理は似ている。


さっそく厚揚げを…


(おいしい)


やっぱり、お母さんがお家で作ってくれるのと似ている。


しかし、あくまでも、似ているのであって、違いははっきりしている。


「おいしい!これお母さんが作った?」


真絃くんがそう言った


「違うよーこれはおばあちゃん」


やっぱり、おばあちゃんの厚揚げだった。


「味似てるよね」


「うん、お母さんのかと思った」


「お母さんのとは違うよねーお母さんのは味がはっきりしてて、おばあちゃんのは、味がぼやけてる」


「まろやかって言うんだよ」


「そう!まろやか」


「ははは」


今日も、賑やかな晩餐が終わった。


「花火したい!」


「真絃、ちょっと待ってー休憩ー」


「じゃあ、お父さんと準備するか」


「うん!」


お墓参りに行って、ご飯を食べに行って、買い物にも行った。


もうそれで私はヘトヘトだ。


まだまだ子供なはずなのに、昔ほどの元気を失っている。


真絃くんを見て、そう思う。


「準備できた!」


「よし、行こうか」


「うん」


おじいちゃんとよく、缶蹴りをした駐車場。


真ん中には、水の入ったバケツが置いてある。


「わあ、沢山」


「めちゃくちゃ買ったじゃん」


「私これ!」


私は、青色がいいな


「私はこれ」


「僕、線香花火」


(え)


真絃くんは、あんなに楽しみにしていたのに、案外地味なやつを選んだ。


「真絃ー、線香花火はみんなでやろうよ」


「まだまだあるから大丈夫だよ」


「じゃあいいか」


シュー、パチパチという、花火ぐらいでしか聞こえない音。


火薬の匂いと、夜に弾ける、色を持つ火花。


いかにも、夏を感じる。


「なんか、夏だけど夜はそんな暑くないね」


「そうだねーもう夏終わりかなー」


夏、暑くて私は好きじゃないけど、こういうことが出来て、こういうことに、夏というだけで、色をつけてくれる季節。


去ってしまうとなると、寂しくなる。


「線香花火しよー」


「やるー」


「勝ったな」


「みんな、明輝は弱いからね」


「はぁー?姉ちゃんの方が弱いって」


「いや、明輝は結構弱いよ」


「ははは!真鳴斗さん!そーだよね!」


「咲久もそんな強くないよ」


「なによアンタ急に」


「はーい、やるよ大人たち!」


「はいよー」「はいはい」


パチパチ、パチ


静かに弾ける線香花火。


私は、なんだかんだ、この花火が結構好きだ。


小さな灯火が、優しく燃えていて、こんなに小さいのに、人を惹き込む魅力がある。


「あー!」


真絃くんが先に落ちた。


「あらー」


次はおばあちゃんだ


いい温度の風が吹いてきた


「やばいやばい!風きた!」


案外、風では落ちなかったりする。


(あ…)


「落ちたー」


「あー!」


ほぼ同時に、風結の火も消えてしまった。


残ったのは、花火に夢中になってた大人たち。


一言も話さず、小さな明かりを見つめている。


まるで、この明かりに、子供に戻されてしまったみたいだ。


「怜翔、そろそろいいんじゃない?」


「そうだよ怜翔さん、俺、頑張るんで、先いいですよ」


「負けないよ、まだまだ僕は燃えるんで」


「あー!落ちた!」


「うぇーい!明輝落ちたー」


「くっっそ!」


「ガキすぎるだろ」


「ははは」「ははは」


「あー!笑ってたら落ちた!」


真鳴斗さんのが落ちた


後は、お父さんと、お母さん


「ちょっと怜翔、アンタが残るとは思わなかった」


「僕だって、咲久は一番に消えると思ったよ」


「やめてー!パチパチいってる!」


お父さんのも、音を立てている。


「あっ」


お母さんのが落ちた。パチパチと、音を立てながら。


「いぇーい!怜翔さんの勝ちー」


「あれ?」


「僕も落ちた」


「あれ?同時?」


みんな、お母さんの激しい灯りを見ていて、気づかなかった。


「同時だったよ」


「あーなんだよー」


「同着ね」


こうして、夜闇を飾った花火は終わった。


お風呂にも入って、あとは、寝るだけ。


「あー、明日帰るのかーやだなー」


「真絃、さみしいの?」


「え?うん…」


「私もいやだな、あと1日はいたい」


「雨音もかー」


「風結は?」


「私も、少し寂しい。でも、また来年、またそれぞれが成長して集まるのが楽しみ」


しっかりとした答え。


風結には、時々ブレない芯を感じるときがある。


「そうだね、そういう楽しみもあるね」


「おやすみー」


「おやすみ」


「おやすみ!」

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