常日頃
車を走らせ、おばあちゃんの家に向かった。
「ただいまー」
私たちが戻るまでは、静かだった部屋。
家へ上がり込むのと同時に、空気に色がついた。
空箱に、一気に物を詰め込んだみたいだ。
車での移動、室内での食事。とはいえ、季節は真夏。
少しでも外へ出れば、汗をかくし、体力はへる。
みんな、エアコンの効いた部屋で、ゆっくりしている。
昨夜のような、活気はない。
「もう少ししたら、買い物行こうかな」
「私も行く!」
「私も!」
「真絃も行っておいでー」
「えー暑い」
「じゃあ私行こ」
おばあちゃんの買い物について行く私と風結。
そこに、明輝ちゃんも行くことになった。
時間は16時頃。
「そろそろ行くよー」
「はーい」
「行く前に水飲んでってよ!暑いから!」
「わかったー」
行く場所は分かっている。
ここからすぐのスーパーだ。歩いて行ける。
私はあえて、いつもとは違う履物にした。
おじいちゃんが、私が大きくなったらと、買ってきてくれていたらしい草履。
数年前から、ここに来ては必ず履くことにしている。
「じゃあちょっと行ってくるね」
「いってきまーす」「いってきます!」
「はーい」
「ひゃー暑いね。すぐそこだけどホント暑いわ」
「そうだおばあちゃん、おばあちゃんの名前ってどうやって書くの?」
たしかに、私も分からない。
昔、お母さんに聞いた事あったっけ…?
「お母さんはひらがなよね?」
「そうそう」
「あ!そうなの!?へーかわいい」
「ははは、ありがとう」
じゃあ、山上よい。なのか
「おじいちゃんと結婚する前は?苗字なんだったの?」
「苗字はね、朝日だったねぇ」
「へー、いいね」
スーパーに着いた。
入った瞬間に伝わる、涼しさ。
まさに安全地帯に来た感じだ。
必要な食材を買って、家に戻った。
今日は、揚げ豆腐を使うみたい。
「今日のご飯はなに?」
「何にしようかなー買ってきたのもあるし、家にあるのもあるから…お楽しみ。」
「分かった!」
今日は、明輝ちゃんと、お母さんも料理をするみたいだ。
「あれ?お父さんたちは?」
「あー花火買ってくるってー今日やるみたいだよー」
「やった!風結、花火やるって」
「えー!そうなの!?楽しみー」
真絃くんが花火をしたいと言ったところ、お父さんと、真絃くんと、真鳴斗さんで買いに行くことになったみたいだ。
静かになったリビングで、テレビをつける。
「明日、お盆最終日。車の運転には十分お気をつけください。」
(明日、帰らなくちゃ行けないのか…)
ふと、自分の世界に戻ると、少し先の寂しいことを考える。
賑やかで、楽しい家。毎年のように来るが、いざ帰る日が近づくと、寂しくなる。
私の町も、家も、大好きだ。地元での生活も好きだ。
ここも好きだ。
日常とは、少し違う日常。
頻繁には来ないからこそ、楽しい、少し違う、帰ることが寂しいと感じることができるのだろう。
昔、まだ幼いとき、帰るのが嫌で、泣き叫んだことがあったと聞いた。
その時も、同じような気持ちだったのだろう。
「ただいまー」「ただいま」
「ただいま!」
「雨音ちゃん!花火買ってきた!」
「ありがとう、今日の夜やるんだよね?」
「そうだよ!お姉ちゃん!花火!」
とても楽しそうだ。お昼のスイカや、昨日のオセロよりも、テンションが高い。
私はお風呂を洗うことにした。
浴槽を擦りながら、明日のことを考える。
もう何度も、おばあちゃん家を離れるときの寂しさは味わってきた。
帰宅は、やってくる時は、避けることのできないものだと、割り切ることができる。
そういう感情が出てこその帰省だったり、お盆の季節だとも思う。
リビングへ戻ると、真絃くんがやってきた。
「雨音ちゃん!お父さんとオセロやって!」
「え?真鳴斗さんと?」
「うん!」
なんだかよく分からないが、真鳴斗さんとオセロをすることになった。
「雨音ちゃんありがとねー真絃が俺に負けて、雨音ちゃんなら倒せるとか言うんだよー」
「あはは、そうなんだ」
まって、結構強い。
真絃くん、私よりこの人が強いって思わなかったのだろうか。
「負けた…」
「やったー!」
結果、私は負けた。
「真鳴斗さん、強いね」
「ちょっとね、部活がこういうので、よくやったんだよー」
「ご飯出来たよー持ってってー」
「うい」「はーい!」
みんな、台所へ向かう。
「おお!揚げ豆腐!美味そー」
厚揚げの煮物だ。
これは私も好きな料理。
後は、味噌汁やご飯、サラダもあった。
「いただきます!」




