夏に浮かぶ花
私たちが、四角に切られた優しいスイカを食べていると、お風呂が沸いた。
「私入る!雨音、一緒に入ろ!」
「いいよ」
いつも髪を高く結んでいる風結が、髪を解いた。
腰ぐらいまで毛先が落ち、黒くて、直線のような髪。それは、綺麗だった。
「風結、髪綺麗だね」
「ありがとうー雨音も、短い髪だけど、よく似合ってるよ」
髪の短い私が、先に洗い終わり、湯船に入った。
風結はまだ、シャンプーをしている。
「それ、家から持ってきたやつ?」
「んー?そうだよ。リンスとシャンプーはこれがいいの」
「ふーん」
私は、リンスもシャンプーも、その場にあるものを使っている。
風結も、こちらへやって来た。
「ふー、暑っついけど、お風呂はいいねー」
「そうだ雨音、学校とかにさ、好きな人とかいないの?」
唐突だな…これ、前にも経験した気がする。
「いないなー今は」
「今は?前はいたの?」
「うん。でもその子、人の悪口言ってて、しかもその子がいるところで。それで、ちょっと嫌になっちゃってそれっきりかなー」
「うわ、それはスルーして正解だね…」
少し、リズムの悪い間を空けて、風結が話した。
「…もしかして悪口言われたの、雨音じゃない?それか、本当に仲のいい子。」
「え、」
なんで分かったんだ?
「当たりかな?」
「そうなんだけど、どうして?」
悪口を言われたことを知られた。
そんなこと、どうでも良いくらいの衝撃だ。
元々どうでも良かったけど。あれ、なんで隠してたんだ?
「だって、すごく悲しそうな顔するんだもん。自分が言われたか、すごく仲のいい子かなーって。」
また顔か…
「辛かったねーでも雨音はきっとモテるよ」
「へへへ、ありがとう」
なんだか、こびり付いた汚れを落としたような気持ち。
風結に、人に、本当のことを言えたからだろうか。
意外にも、あの出来事は、自分にしつこく残っていたのだろう。
その汚れが落とせたのは、風結と、この、すぐに出る顔のおかげ。
お母さんの言ったとおり、確かに、顔にでることは、いい方向に行く場合もある。
「風結は、好きな人いるの?」
多分これが、本題だろう。
「えー?いるよ」
「聞かせてよ」
「えっとねー2組の米沢くん」
「だれだよ」
笑み混じりに出てしまった。
「米沢くんはねー優しいんだ。あと、楽しい。すごくふわふわな理由だけど、こんなんでいいと思うの。なんなら、理由なんて、なくてもいい。」
好きなことに、理由はいらない。みたいな感じだろうか。
風結の顔は、お風呂に入っているからということもあるが、艶やかだった。
なんだか、少し年上にみえる。
「そろそろ出ようか」
「そうだね」
体を拭き、服を着る。
風結は、頭にタオルを巻いている。
私は、髪が肩に付くか、付かないかぐらいだから、必要ないけど。
私がドライヤーをしていると、横で何やら、風結が髪を撫でている。
「何してるの?」
「ヘアオイルだよ、綺麗にしてるの」
風結が髪のケアを…お風呂の時も思ったけど
「へー風結って意外とマメだよね」
「雨音、失礼だよ」
「ははは、ごめん」
「真絃!一緒に入るか?」
真鳴斗さんだ。真絃くんをお風呂に誘っている。
「えー自分で入るー」
「そんなーいつも一緒じゃん」
「ちがう!」
「ははは、嫌われたな真鳴斗くん」
「咲久さん、そんなこと言わないでくださいよー」
「真絃、入れるの?お父さんいなくていい?私と入ろうか?」
「お母さんもいい!自分ではいる!」
「分かった、何かあったら呼ぶんだよー」
「さみしいなーははは」
なんだかんだ、このお風呂の後が、私は1日の中で、1番ゆっくり出来ると思う。
それは、みんなもそうなのだろうか。
「雨音、風結、明日どうする?お墓参りには行くけど、その後どうしようかと。真絃は、スイカが食べたいんだって」
「うーん私は特にないなー。あ、お昼は外がいいかな」
「はーい」
「私はなんでもいいよー」
「分かった」
「あ!おばあちゃん洗い物してる!雨音、行こ!」
「うん」
私たちは、台所へ向かった。




