はずむ雨、はずむ音
今日は雨だ。なんだか強めの。
私は今日、学校が早帰りだったので、本を買いに、少し遠くの本屋へ行っていた。
毎月、3000円のお小遣い。
そのお金で好きな本を買うのが私にとっての一つの楽しみだ。
ある程度欲しい本は決めていく。
決めていくのだが、毎度あらかじめ決めておいた本とは、違うものを買ってくることがほとんどだ。
本屋を徘徊していると、気になる本が次々に見つかってしまい、結局、目当ての本を見つける前に、購入する本を決めてしまう。
毎回、本屋を出る前に、来月買う本を決めてくる。
結局は、別の本を買うのだけれど。
今回も例に漏れず、予定していた本とは別の本を買い、買いたい本も目星を付けてきた。
冷静に見れば、意味の無いことだろう。
しかし、この無意味な行動が、私の心を、楽しさを満たしている。
そう私は決めつけて、納得している。
そんなことを、水玉模様に飾られたバスの車窓をツマミに考える。
(少し雨が強くなってきたな)
いつものバス停に着いた。
私は本が濡れないよう、カバンの口を腕でしっかり締め、傘をさし、バスを降りた。
私と一緒に、幼稚園生ぐらいの少女が降りた。
「なんでー!なんでー!?」
少女は、目の前にいた母親らしき女性に向かって、言葉をかけた。
「雨で心配だったもん、迎えに来ちゃった。」
「なんでー!?なんでー」
この子はいつも、一人で幼稚園に登園しているのだろう、たまに、この制服の子を見かける。私の住んでいる町では珍しいことではない。
「なんで!?なんでー!?」
(ずっと「なんで」って言ってる。)
その言葉は、文字にすれば、拒絶にも見える。
しかし声色からは全くそんなことは感じなかった。
むしろ弾んでいて、そこには恥ずかしさの混ざった、とびきりの笑顔があった。
「微笑ましい」この言葉がぴったりだろう。
私は傘と、本の入ったカバンを手に、家に向かった。
背後には、雨音で聞き取れはしないが、賑やかな話し声。
まだ明るさの残る曇り空からは、弾む音のする雨が降っていた。