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雨の日の晴  作者: 宿木
6/23

はずむ雨、はずむ音

今日は雨だ。なんだか強めの。


私は今日、学校が早帰りだったので、本を買いに、少し遠くの本屋へ行っていた。


毎月、3000円のお小遣い。


そのお金で好きな本を買うのが私にとっての一つの楽しみだ。


ある程度欲しい本は決めていく。


決めていくのだが、毎度あらかじめ決めておいた本とは、違うものを買ってくることがほとんどだ。


本屋を徘徊していると、気になる本が次々に見つかってしまい、結局、目当ての本を見つける前に、購入する本を決めてしまう。


毎回、本屋を出る前に、来月買う本を決めてくる。


結局は、別の本を買うのだけれど。


今回も例に漏れず、予定していた本とは別の本を買い、買いたい本も目星を付けてきた。


冷静に見れば、意味の無いことだろう。


しかし、この無意味な行動が、私の心を、楽しさを満たしている。


そう私は決めつけて、納得している。


そんなことを、水玉模様に飾られたバスの車窓をツマミに考える。


(少し雨が強くなってきたな)


いつものバス停に着いた。


私は本が濡れないよう、カバンの口を腕でしっかり締め、傘をさし、バスを降りた。


私と一緒に、幼稚園生ぐらいの少女が降りた。


「なんでー!なんでー!?」


少女は、目の前にいた母親らしき女性に向かって、言葉をかけた。


「雨で心配だったもん、迎えに来ちゃった。」


「なんでー!?なんでー」


この子はいつも、一人で幼稚園に登園しているのだろう、たまに、この制服の子を見かける。私の住んでいる町では珍しいことではない。


「なんで!?なんでー!?」


(ずっと「なんで」って言ってる。)


その言葉は、文字にすれば、拒絶にも見える。


しかし声色からは全くそんなことは感じなかった。


むしろ(はず)んでいて、そこには恥ずかしさの混ざった、とびきりの笑顔があった。


「微笑ましい」この言葉がぴったりだろう。


私は傘と、本の入ったカバンを手に、家に向かった。


背後には、雨音で聞き取れはしないが、賑やかな話し声。


まだ明るさの残る曇り空からは、(はず)む音のする雨が降っていた。

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