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雨の日の晴  作者: 宿木
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晴れの日、雨があったのなら

今日は晴れ、雨上がりの、サッパリとした晴れ。


そして、今日は私の誕生日。15歳になる。


どんな天気であれ、誕生日というのは、特別に感じる。


私は、雨を望んでいたのだけれど、誕生日に雨を望む人なんて、中々いない。


一般的には、運がいい、素敵な誕生日だろう。


時間は、朝8時。


夏休みにしては、早起きなのではないだろうか。


昨日の雨が、またぶり返してはいないか、そんなことが、気になっていた。


答えは、目覚めてすぐに分かった。


雨音(あまおと)はしないし、元気な蝉の声も聞こえる。何より、窓から、日が差し込んでいた。


耳からも、目からも、晴れであることを、思い知らされる。


朝のニュースを見ながら、ご飯と、インスタント味噌汁を飲む。


見るからに暑そうな外の様子を横目に。


「おはようーあれ?雨音、早いじゃん」


「おはよう」


「今日誕生日だね、おめでとう」


「ありがとう」


「もう15年かー、早いような長いような」


「今日どっか行く?行きたいとこある?」


「うーん、無いなー。あ、ケーキ選びたい」


「分かった。じゃあ、ついでにお昼も外で食べよう」


「うん」


スマホを見ると、友達から「おめでとう」とメッセージが沢山来ている。


自分がお祝いされる、特別な日。


雨が降っていなくても、嬉しくて、やっぱり、普段の日常とは違う気分になる。


ピンポーン


「?誰かな」


「はーい」


お母さんが出た。


「あー!晴美ちゃん!ちょっと待ってね」


「雨音ー晴美ちゃん来てくれたよー」


(晴美?部活だった気がするけど…)


ガチャ


「お待たせ」


「雨音ちゃん!誕生日おめでとう!ちょっと来て!」


「え、うん。ありがとう」


どうしたんだろう、なんだか急いでいるというか、誕生日の私より、テンションが高い。


向かっているのは、晴美の家の方。小さな坂の上だ。


やっぱり、坂の麓には、大きな水たまりができている。


先を走る晴美は、手に袋を持っている。


「ほら!あれ!」


「?…あ!」


この坂の上からは、町を、眺めることが出来た。


私はやはり、晴れ女なのかもしれない。


大事な時は、だいたい晴れる。


名前は、雨音なのだけれど。


このことは、雨を望む私にとっては、煩わしかった。


しかし今、晴れ女も、悪くない。


誇ってもいいのではないか。そう思う。


「虹が出来てるよ!」


「うん…」


つい、観惚れてしまう。


青空には、いつもの白と、珍客の七色。


町の中心に、しっかりと足をつけ、こちらを向いている。


「誕生日に虹。やっぱり雨音ちゃん、もってるよねー」


「ありがとう…あ、そういえば晴美、今日は部活じゃなかった?」


「そうなんだけど、昨日の雨でコートに大きな水たまり出来ちゃってさー中止になったー」


「そうなんだ…」


虹から目が離せない。


「あ!これ、今日雨音ちゃんの誕生日だからお菓子買ってきたんだ!プレゼント!」


「ありがとう…!嬉しい」


私の好きなグミや、好きなものばかり。


500円分ぐらいあるのではないだろうか。


「こんなに沢山、ありがとう」


「いいえー……雨音ちゃん、やっぱり、いい顔するよねー」


「え?」


「本当にかわいい顔。あの虹と、大差ないよ」


「あはは、ありがとう」


こんな言葉で終わらせてるけれど、言葉以上に嬉しい。


本当に嬉しい。


まあそれは、この顔が、言っちゃってるかもしれないけど。


「すごく嬉しい。虹も見れて。なにより、晴美がこうしてお祝いしてくれるのが、すごく嬉しい。私が思いつく言葉だけじゃ、足りないな」


晴美は一瞬、驚いたような顔をした。


「ははは、最高だね雨音ちゃん」


すぐに、私の好きな笑顔になった。


本当に、太陽顔負けの。


晴美がこうして虹を見せてくれなければ、私は気づかず、虹は消えてしまったかもしれない。


昨日の雨と、今日の晴れ、そして、晴美がプレゼントしてくれた。


虹が消えるまで見ていた。


晴美がくれたお菓子を、晴美と一緒に食べながら。


「ああ、消えちゃった…ごめんねー私がプレゼントしたのに、もらっちゃって」


「全然、一緒に食べたかったから、食べてくれてありがとう」


「雨音ーそろそろ行くよー」


お母さんが呼んでいる。


「じゃあ行くね、晴美、本当にありがとう」


「うん、またねー」


水たまりを咲かせた、小さな坂を降りる。


「お母さん、虹が出てた」


「えー!そうなの?誕生日に虹なんて、もってるね」


「じゃあ行こうか」


「うん」


今日降ることを望んでいた先日の大雨は、私の一日を飾ってくれた。


それも、意表を突く形で。それは、私の天気も、同じだった。


そう感じる。

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