雨、飾って照らして(2)
私は、お母さんの車に乗った。
「…さんの「耳からラーメン出てますよ」です」
今日も、お母さんの車ではラジオが流れている。
ラジオが持つ、ラジオだけの音質と雰囲気。
私はこれが結構好きだ。
…♪…♩
車内には、聞いた事のない曲が広がる。
「ここから遠いの?」
「そうだねーちょっと遠いかな」
「私、その人と会ったことある?」
「あーあるよ。憶えてないかもだけど。」
(たしか…黒くて長い髪の人だったような)
「髪が長い人?」
「あーそうそうよく憶えてるね」
私の予想は、当たっていた。
綺麗な髪の人で、まだ幼かったけど、「かっこいい」と思っていた。
憶えていると言っても、雰囲気でしか掴めていない。顔立ちや、細かな特徴ははっきり思い出せない。
「お聴き頂いたのは、人間関係さんの「耳からラーメン出てますよ」でした。…ここで一度…」
「そういえば、もうすぐアンタ、誕生日だね」
「うん」
「何か、欲しいものある?誕生日プレゼント」
「欲しいものか…」
特に欲しいものというのは思いつかない。
好きな傘を使っているし、私が使うものは、基本好きなものばかりだ。
「特にないかなー、誕生日はラーメンがいい」
「分かった今年も私が決めていい?」
「よろしくー」
昨年も、特に思いつくものがなく、「服が欲しい」と言った。
そうしたら、「服は誕生日じゃなくても買うから、他には?」と言われたので、結局思いつかず、お母さんに選んでもらった。
「昨年は何あげたっけ?」
「マグカップを貰ったよ」
「あーそうだったね」
今も使っている。お気に入りだ。
カタツムリが、葉っぱの下にいる絵が描かれたコップ。
葉っぱには水滴が付いていて、雨の日や、雨上がりを連想する。
「今日はここまでです。感想もお待ちしています。…♪…Radio♫…」
「最近、すぐ目覚めない?ああ、そうかも…」
番組が終われば、間髪入れず、流れるCM。
絶え間ないのだけれど、どこか気持ちに余裕が持てる。
「もうすぐだよー」
「はーい」
車は、車道を逸れ、駐車場へ入っていった。
目の前の建物がそうだろうか。
なんだか家みたいだ。お店という感じがしない。
「ここ?」
「ああ、違うよここは今から会う子の家」
(ああ、そうだったのか)
「ここだよ」
家からほんの少し歩いたところに、マンションが。
その下に、お店が並んでいる。
その真ん中辺りに、お店を構えているらしい。
「こんにちはー」
「いらっしゃいませー…ああ!咲久ー!待ってたよ」
「久しぶり、ひな」
「あれ?この子、雨音ちゃん?」
「そう、大きくなったでしょ」
「うん、大きくなったねーよく来たね」
「こんにちは」
「はーいこんにちは。雨音ちゃん、やっぱりかわいいねー」
そうだこの人だ。
黒くて綺麗な長い髪。素直にかっこいいと思える。
背も高めで、スタイルがいい。
「今日はどうしたの?何かお探し?」
「うん、いいのないかなって」
「ここにあるのは全部いいものよ」
「そんなの分かってるよ。似合うのが無いかなってこと」
なんだか、お母さんの友人との関わりを見ていると、私が友達といる時と、さほど変わらない雰囲気を感じる。
やっぱり、友達なんだ。
「そうねー、咲久にはこれかなー目のピアス」
「そう?まあ、アンタがいうんだからそうなんだろうけど」
「落ち着いた、クールな感じが咲久には合うと思う」
私のお母さんはたしかに、「可愛らしい」とは違う感じがする。
クールというか、独創的というか。
「今日はこの子のアクセサリーを買いに来たの」
「ああ!雨音ちゃんの!」
(ふーん…)
「え?」
思わず声が出た。というのはまさにこれだろう。
「もうすぐ誕生日でさ、プレゼント、ここで選ぼうかと」
「分かった任せて」
ひなさんの顔つきが変わった。
見た目の雰囲気よりも、明るく笑う人だった。
それが、いかにもというような表情になった。
「雨音ちゃん、綺麗な顔してるなー。可愛らしいのも似合うだろうけど、まずはこれかな…」
まさか、この場で誕生日プレゼントが決まるとは…
アクセサリーなんて、全く持っていない。
駄菓子屋さんのくじ引きで出た、おもちゃの指輪ぐらいだ。
「ああ!いいんじゃない?私もそれ合うと思ってた」
「でしょー」
ひなさんは、縦に長い、黒い棒のついたイヤリングをもってきた。
「うん似合うねーほら、見てみて」
鏡を持たせてくれた。
シンプルなデザインだが、自分でも、似合うなと思った。
「雨音ちゃん、いい顔するねーモテるわこれ」
「あはは、良かったね」
「次はこれ」
ひなさんは、次々にもってきた。
どれも、似合わないとは、全然思わない。
「元々綺麗な顔だし、化粧なんかしたら半端ないわよ咲久」
「やっぱりねー私の子だし」
なんだか、お母さんがとても楽しそう。
これ、全部自分でつくってるんだよな…すごい。
「雨音、なんかいいのあった?」
さっきひなさんが言った通り、どれもいいものだ。
「どれもいいもの…」
「あっはは!やっぱかわいいな!この子!」
「じゃあこれかなー」
お母さんは、最初に付けた黒くて長い飾りがついたイヤリングを選んだ。
「あと、二つぐらい買うから、さっき付けたのじゃなくてもいいから、好きなの選びな」
「じゃあ、そのうち1つ、私が選んでもいい?」
「はい」
「ありがとうー」
(どれにしようかな…)




