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雨の日の晴  作者: 宿木
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夏祭り、快晴な夜(3)

(あれは…?)


なんだか見たことあるような…


こっち向かないかな…


何となく、藤田さんのような気がしているが、よく分からない。


浴衣を来ていて、その隣には、Tシャツに、ゆったりとしたパンツを履いた男の人。


確認することが出来ないまま、私の番がきた。


「きゅうり2本ください。」


「はーい300円でーす」


「ありがとうございます」


「ありがとうございましたー」


(あれ…)


私がきゅうりを買っている間に見失ってしまった。


とりあえず、晴美と合流しよう。


わたあめを買ってくれているから、そちらへ向かう。


(わっ、かなりの列)


わたあめは、やはりどこでも人気だ。


晴美は、前の方にいて、後3人ほどだった。


私は近くで待つことにした。


「晴美ー」


「あっ雨音ちゃん!」


「はい、これ」


「ありがとう!あ…」


「あ…」


二人とも、両手が埋まっている。私は両手にきゅうり、晴美はわたあめ…


「どうしよう」


「ちょっと待って…」


私はきゅうりを咥えて、わたあめを受け取った。


「ありがとう晴美」


「雨音ちゃんたまに豪快だよね」


「えー?そう?」


「そうだよーまあ、かっこいいけど」


私は今、この方法しか思いつかなかった。


「わたあめいくらだった?」


「150円だったよー」


「きゅうりも150円だった」


「ああ、じゃあこのままでいいね」


「美味しいねーやっぱお祭りで食べると、より美味しく感じるなー」


「そうだね、私もそう思う。」


きゅうりを食べ終えた。晴美もほぼ同時に。


「棒捨ててくるね、晴美のも貰うよ」


「ありがとうー」


(あっ)


さっき見失ってしまった二人だ。


また、私に背を向けている。


彼らは、横を向いて話し始めた。


(あれは、藤田さんだ。横は田畑くん)


藤田さん、すごくいい笑顔。


少し緊張も伝わるけれど、心から笑顔なのが分かる。


髪も綺麗にまとめて、化粧もしている。


浴衣もよく似合っている。


薄暗さから目立つ、屋台の明かりが、さらに、彼女を飾っている。


ずっとみていたくなる、そんな表情を、雰囲気を持っている。


(あで)やかという言葉が、よく似合うだろうか。


(邪魔になっちゃいけないな)


私は、晴美の元へ戻ることにした。


普段奥手な藤田さんが、自分から田畑くんを誘って、掴んだ今。


温かな気持ちになる。


夏の暑さとははっきり区別される、また違った温もり。


「晴美お待たせー」


「雨音ちゃんありがとうー」


「晴美、わたあめ付いてる」


「あはっ、ホントー?」


いつもの無邪気な笑顔が、助長される。


口周りのわたあめを晴美はペロッと舐める。


「晴美これ使っていいよ」


持っていたウエットティッシュを渡した。


「ありがとうー」


「次、どこ行こうか」


私はわたあめを減らしながら歩く。


「そうだなー、ヨーヨー欲しい」


「いいね」


ヨーヨーすくいに向かった。


「えー!雨音ちゃん、1回200円だって食べ物より高い」


「まあ、お祭り価格だよね」


「1回やりたいです」


「はーい200円ねー」


「あっ」


晴美は開始早々、糸を切ってしまった


「切れちゃったー」


「残念、一つ、好きなの選んでいいよ」


「えー!ありがとうございます!」


私は、黒と、青色のヨーヨーを二つ取った。


どちらも、お祭りでよく見る模様があって綺麗だ。


「貰えて良かったね」


「うん!」


ピシャン


お祭り、この音、何が起こったのかは、簡単に想像できる。


4歳ぐらいの男の子だろうか、小学生には見えない。


持っていたヨーヨーを、落としてしまったらしい。


水が散った跡と、小さくなった風船が落ちている。


「うえーん!もう1回やるー!」


「みっくん。でも、もう帰らないと…お家で風船膨らませて作ろう?」


「やだ!もう1回やる!」


「多分、疲れて、眠たいんじゃないかなー」


「そうかー」


2組の親子で来ているのだろう。


母親どうしでそんな会話をしている。


ずっと、男の子は泣いている。


(二つあるしなぁ…)


「よかったら、これ入りますか?」


「えー!大丈夫です!ありがとうございます!」


「二つ持ってるんで、大丈夫ですよ」


「みっくん、お姉ちゃんがくれるって、どうする?」


男の子は、何も言わない。


急に知らない人が来たのだ、無理もない。


「じゃあ、一つ貰ってもいいですか?」


「いいですよ」


「ありがとうございます!」


「どっちがいい?」


「こっち…」


男の子は、青いヨーヨーを選んだ。


夏の青空のような色。


黒と青で、夜空と青空をイメージしていた。


「どうぞー」


「ありがとうございますーみっくん、ありがとうってして」


「ありがとう」


私は、小さな青空を、小さな男の子に預けた。


「雨音ちゃん、やっぱり優しいねー」


「ありがとう」


「この後、どうしようか、なんかあとはもう地域の抽選会みたいだけど」


「私たちには抽選券ないしなー」


このお祭りの学区ではないので、抽選券がない。


「そうだ、あそこのファミレスで食べてかない?ちょうどいい時間だし」


学校の近くにあるファミレス、夜10時ぐらいまでやっている。


「いいね、お母さんに連絡する」


時間は19時過ぎ、毎年思うことだけど、お祭りは不思議と、時間が経つのが早い。


晴れる日から始まった1日。


夜をむかえど、どこかずっと、太陽を持っていた気がする。

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