晴れの日、霧が晴れる(2)
私は、自転車を走らせた。
(ああ、そうそう、あの大きなスーパーもあった)
信号の奥に、大きなスーパー。3階立てぐらいだろうか。
また、あの信号は赤色。
今回も、信号を通り過ぎた。
大きなスーパーも超えて、いよいよ、特徴の無い町並み。
スマホで検索しなければならない。
(うーん、スーパーがここで、私の家は…)
なんとここから8km離れていた。
1時間弱走らせたが、こんなに離れるとは思っていなかった。
(経路は…この先の公園を右…それからコンビニを抜けて…)
よく分からないから、まずは公園に行こう。
自転車を走らせた。
私は気になった道を、ただ進んできた。
スマホの示す道とは、違う。
明らかに、記憶のない道だ。
公園に着いた。
(次は…コンビニを真っ直ぐ)
コンビニまで来た。水筒が空いたので、お茶を買おう。
「いらっしゃいませー」
店内の時計を見ると、14:30。
私の選んだ道を辿る方が速いんじゃないか。
そう思うが、その道を覚えていない。だから、スマホに頼るしかない。
「ありがとうございましたー」
お茶を二口ほど飲んで、自転車を走らせる。
今度は、よく分からないところを、左…なんも特徴のない場所。家々が並ぶ場所だ。
ちょくちょく自転車を止めて、スマホを確認する。
(ここか…)
どこにでもあるようなアパート。
ここを左に少し行ってから真っ直ぐ。
こういうアパート、結構好みだ。
ここからはしばらく真っ直ぐだ。
平坦な道で、走りやすい。
(ここで、どっちだ…?右か…あっ)
左手側に、大きな木があった。
あれは、私の目に止まって、目的地にした木。
来た道とは違うけれど、着々と、家という目的地に近づいていると、実感が湧いた。
指示通りに、右を行き、次は左折し、直進した。
(あっ)
もうここからは家まで分かる。
来たことのある道だ。
家から少し離れたお店。多分居酒屋だ。
一気に「帰ってきた」という感じがした。
やはり、見慣れた景色、見た事のある景色というのは、そういうことを、思わせる魅力がある。
そんな気がする。
時間を見ると、15:20。
もう午前中のような明るさ、とは言えない。
記憶を頼りに、家まで向かう。
近所の、見慣れた町だ。そこまで来た。
(あとは、この道に入って…この坂を登れば…)
道に確信が持てるようになってから、自転車のスピードは、段々と落ちてきた。
安心してきたのだろうか。
もう1つ、坂を登れば…晴美の家だ。
久しぶりに、晴美の家の方から帰ってきた。
そして、その先は、小さな坂。
今日は、下り坂だ。
私の家は、すぐ目の前。
坂の上からは、私の好きな、町並み。
この小さな下り坂を、私は、自転車から降りて下ることにした。
ゆっくりと。
家の前まで戻ってきた。自転車置き場に止めて、家のドアを開ける。
「ただいまー」
「おかえりー今日はどこまでいったの?」
なんだか、「またか」と聞こえてきそうなお母さんの声色。
「今日はね、気づいたら10km近く進んでた」
「えー!アンタ意外とタフよね」
時間は16時前。
今日も、晴れの日だ。
今日、目的地にしてきた場所は全部、最初は遠くて、霞んでいたけれど、近づけば、その霧は晴れていった。
いつ、あの約束を果たしに行こう。




