雨か晴れか曇り(2)
「まず、雨音さんの学校での様子です。」
そんなに目立った行動はしていない。むしろ、静かな方なはずだ。
「楽しそうに生活していると思います。活発にというわけではなく、ご飯中や、他の生徒と会話をしている雨音さんを見ていると、楽しい様子が伝わります。とてもいい表情をするんですよね。」
また、顔だ。やっぱ顔に出やすいのかな。
「この子、顔に出やすいですよね」
「そうなんです。雨音さんの可愛らしいところです。」
やっぱり顔に出やすいんだ。
自分では、表情に乏しいと思ってたから、こないだまでは信じてなかったけど、出やすいんだな、きっと。
「あと、授業中なんですけど、たまに余所見をしていることがあって、理解出来ているなら問題ないんですけど、一応、授業態度も評価になるので…」
(バレてた…)
「ははは、あの窓の奥でもみてたんでしょう?」
苦笑いだ。母がよくする、不思議と安心する苦笑い。
「うん」
なんで分かるんだこの人は。この教室だって初めてなはずなのに。
「お見通し」とでも言いたげな顔だ。
「今年は、進路について話さなくてはいけなくて。志望校などは考えていますか?具体的でなくても、こういう所がいいとか…」
「あんまり、考えられていないです。」
「この前のテストも、平均あたりから、それより少し上は取れていたので、選択肢が少ないことは無いです。」
「まだ、時間はあるので、体験入学などを通して、焦らず決めていきましょう。」
「お家では、勉強していますか?」
「全然してないです。宿題があればやるくらいで」
「これから、毎日10分でも勉強をすると、選択肢が広がるかもしれません。」
「分かりました。」
「進路については、もう、されているかも知れませんが、ご家庭でも、お話しされてみてください。」
「はい」
「では、今日はこのあたりで、お母さん、何か気になる点等はありますか?」
「特に無いです、楽しく過ごせているようで良かったです。」
「分かりました。また何かありましたら、ご連絡ください。」
「また、一緒に考えましょう。」
「はい、ありがとうございます。」
「では、今日はありがとうございました」
「ありがとうございました」「ありがとうございました」
「さようなら」
「また明日、雨音ちゃん」
私たちは廊下に出た。
(あっ、藤田さんだ)
「藤田さん、これから?」
「うん」
「じゃあまた明日ね」
「またね」
なんだか、学校にいるときよりも、藤田さんの静かさが増している気がする。
学校の外にでた。
「雨音、学校で結構喋るよね。静かに見えるんだけど、意外と社交性がある。小さい頃からそんな感じよ」
「そうかも、気づいたら話してる。」
「楽しい?学校」
「うん」
「良かった。」
「進路考えないとだね。まあ、どこに行っても、楽しいことはあるし、少し、嫌なこともあると思う。でも、あんたは大丈夫な気がするな上手いところで感情が出せてるし。」
あんま感情的になったことは無いはずだ。言葉だって、気をつけている。
「そう?感情はむやみに出さないようにしてるけど」
「あんた、やっぱ気づいてないよね、結構顔にでるよ、雨音は。」
「それ、この前友達にも言われた。顔に出やすいって。」
「そこが可愛いところ。」
「…」
なんだか暑い。顔に出ちゃうの、ちょっと恥ずかしいかも。
「あんま心配してないけど、無理に顔に出さないようにすることはないよ。表情に感情を混ぜることが出来るのは、言葉に感情を乗せるより、ずっとましで、難しくて、中々できることじゃない。」
「でも、怒ってたりとかしたら、怖くない?周りの人が怖がっちゃう。」
「それを利用する人がいるんだよー、大袈裟に不機嫌な顔して、周りを支配しようとするヤツがね。」
「でも、雨音はそんなんじゃない。これは私が保証できる。絶妙なのよ、あんたの表情は。感情の混ぜ具合がピッタリね」
「そうなんだ。」
私は思っていたことがそのまま口に出た。
「進路のことだけど、あんたはどこ行っても多分大丈夫。先がどんなでも、順応できるはず。」
「なんか曖昧だな。そんなんじゃ、自信もてないよ」
「はははっ!まぁゆっくりね!」
私の進路はまだまだ心配だけど、どこに行っても、母は多分このままだ。このままでいてくれそう。
今は昼過ぎ。空は快晴。この先は、どんな天気なのだろう。




