雨か晴れか曇り(1)
今日は、三者懇談だ。
私は中学三年生。
今年は、去年までのように、ただ学校での様子、家での様子を共有するだけではない。
むしろそんなことは二の次で、進路について考える。
そうなるらしい。
正直あんま進路とか考えていない。
「どこでもいい」これが本音だ。
私と母は、教室の前で待機している。
「お母さん、私、あんま進路とか考えてない。」
「ああ、そうなの?やりたいこととか無いの?」
「うーん、写真とか?でも仕事にしようとかは思ってない。」
「まあ、高校行ってからやりたいこと見つけても、遅くないよ」
「そうかな」
「好きなことがある。」「やりたいことがある。」それは素晴らしいみたいによく言われる。
好きなことが無くても、そのうち見つかればいい、ただ、見つける努力はしましょう。こんな感じだ。
「無理に見つける必要はないよ、「意識的に作られた好き」なんて、苦しくなりそうだし、続くはずがないでしょ」
「そうかも」
うちの母は、結構はっきり言う。
はっきりとした言葉と、不思議と感じる自信から、納得してしまう。
それは多分、母自身もよく分かっているのだろう。
だから、あまり私に干渉しないし、大概のことは、助言することもない。
「いやだ!」
びっくりした…
隣の一組の教室から大声が聞こえた。
私と母は、顔を合わせる。
何を話しているのかは聞こえない。
「あ……めに…」
まだ一学期、こんなに激しいなんて、何があったのだろう。
気になるが、他人事に聞き耳を立てるのも良くない。
(あ…)
特別盛り上がっていた教室から泣きながら、女子生徒と、その母親が出てきた。
土間に繋がる階段はこちらだ。こちら側に向かってくる。
「恋なんて、高校ででもできるでしょ?」
「そうじゃない!今しかできない恋があるんだよ!」
何となく想像はついた。
あの生徒は確か、丸山さん。
三組の玉川くんと付き合っていると有名だ。
彼女たちが付き合い始めたころ、彼氏を作りたいというブームが、女子の間で少し起こった。
彼女はおそらく、受験に影響するから、別れなさいとでも言われたのだろう。
(「今しかできない恋…」情熱的なことを言うんだな)
なんて冷たい視点なんだ。
第一に、強制的に別れさせられようとしている事を、可哀想。だと思ってもいいのに。
なんか、自分の良くないところが、自分の中で見つかった。
「木村さん、お待たせしました」
「はい」
私の番だ。
「お忙しい中、ありがとうございます。」
「いえいえ、いつもお世話になってます。」
「お荷物はこちらへ」
「じゃあ、始めて行きましょうか」
「まず、雨音さんの学校での様子です。」