過ぎる雨、おもい雨
今日は雨。のはずなのだが、今は朝、曇りである。
私はちょうど、新しい傘に替えた。
この間、森に入ったのがいけなかったのだろう。
穴があいていた。
新しい傘は、透明だ。
透明で、少し柄が入っている。
私は、傘に残る雨粒を見たかったのだ。
私は昨日、天気予報で、雨だと知った。
新しい傘を差すのが楽しみだった。
しかし朝起きてみると、空は明るい曇り空。
朝のニュースは、昼から雨だと言っている。
(お昼は、学校なんだよな)
私は少し、残念だった。
私は一応傘を持ち、いつもの坂を登り、晴美の家に向かった。
インターホンの音が鳴る。
「雨音ちゃん!いつもごめんね!ちょっと待ってね」
晴美のお母さんだ。
少し慌てた、優しい声。
ドタドタドタ
いつもの、鈍いんだけど、どこか軽やかな音。
「今日雨降るんだっけ?」
「降るから、一応もっていきなさい。」
「はーい、ありがとう」
ガチャ
「おはよう雨音ちゃん!お待たせ!いつもありがとう!」
「おはよう」
「雨音ちゃんいつもありがとうね、気をつけてね」
「行ってきます」「行ってきます!」
私たちは、いつもの坂を下り、学校へ向かう。
「今日雨だってー、まぁ朝降らないならいいけど」
「そうだね、朝降ると、カバンが濡れて、教室で色々大変だし。」
「あれ、雨音ちゃん、新しい傘?綺麗だね」
「そう、だから今日ちょっと差すのが楽しみだったんだ。」
「そうなんだ!帰り降ってるといいね」
「うん、ありがとう」
私たちは学校に着いた。
いつも通り時間は進んでいき、時間は、お昼前の授業になった。
「うわ、なんか雲重くない?」
「暗すぎじゃね?」
「雷来そう」
空にある雲は、暗くて、重々しかった。
私が今朝、思っていたよりもずっと、激しい雨が降りそうだ。
しかし、
雷を伴う大雨は、去っていくのが早い。
お昼の時間に、激しい雨が降ったのだが、お昼後の授業終盤には、もう弱くなっていた。
そして、今は今日最後の授業。
私は、雨音を聞いて、「止まないでくれ」と必死に祈っていた。
傘をさして帰るには、ちょうどいい強さだ。
(今すぐに帰りたい。)
私は今、テスト前の授業よりも集中して、外の音を聞いている。
鐘が鳴った。
私が、いつもより望んでいた音
「はい、今日はこれで終わりです」
「号令お願いします」
「起立、礼」
「ありがとうございましたー」
(ああ…)
私の気持ちは、今の外の様子とは反対で、少し落ち込んでいる。
傘を差さなくてもいいほどに、雨は弱まってしまった。
帰りの会が終わり、私は少し落ち着いた足取りで、外へ向かった。
一般的にはラッキーなのだろう。
雨が落ち着いたのだから。
私は一応、弱々しい雨の中、傘を差した。
「良かったー雨上がって」
「昼やばかったよね」
「私のおかげだね」
「いや、アンタはかなり雨女よ」
周りはやはり、嬉しそう。
私は、差していた傘を閉じ、家に向かった。
「あっ、雨音ちゃんいた!」
(晴美?)
「雨音ちゃんこっち来て!」
傘を差した晴美が、私を誘った。
彼女の傘は、雨に打たれたように、濡れている。
私はとりあえず、ついて行ってみた。
「雨音ちゃん、これ!」
(あっ)
私の家を通り越し、着いたのは晴美の家だった。
晴美の家の雨樋から、雨水が流れていた。
ボタボタボタ
「いい音!こういうのやりたくなるんだよね」
晴美は、なんだか恥ずかしそうに言う。
「私もやりたい」
「いいよ!」
私の傘にも、強い雨が降った。
「楽しいよねー学校の友達の前とかでは、恥ずかしくてできないけど」
(そうなんだ)
「私は楽しそうにしてる晴美、いいと思うけどな」
「私も楽しそうな雨音ちゃん、いい顔をするから好き!今、すごく楽しそう!」
「ははっ」
私は今、楽しい、そして、嬉しい。
私の傘には、私が今朝から望んでいた、透明な傘に透ける、水玉模様が広がっている。