二つの音(1)
今日は晴れ、少し雲の混じった天気。雨上がりだ。
今日の朝は一人だ。
もう夏休みが近い。かなり暑くなってきた。
私は歩きながら、水筒のお茶を減らす。
(すぐ無くなりそうだな。)
私は水筒とは別に、ペットボトルのお茶を持っている。
母が持たせてくれたのだ。
この季節の雨上がりは、蒸し暑さがある。
しかし今は、静かな風が吹いており、そこまで嫌じゃない。
濡れた葉っぱと、雨で色の変わった道。
私は、こんな雨上がりも好きだ。
そんな中、私は学校に着いた。
(そうだ、今日は部活。)
私は先日のよいねちゃんが来てくれるか、気がかりだった。
なんだか、気が合いそうで入ってくれたら嬉しい。
今日は朝から体育だ。
体育館での授業。スポーツは嫌いじゃない。
母がスポーツが得意なので、遺伝なのだろう。
その後も、いつもとあまり変わらない授業が続いた。
いや、今日はとくに、「いつも通り」が強かった気がする。
放課後の部活の時間になった。私は、部室へ向かう。
「こんにちはー」
「雨音ちゃん、いらっしゃい。」
私の好きな、伊藤先生。
「この前の、よいねちゃん、来てくれますかね」
「そうね、なんだか雨音ちゃんと合いそうで、来てくれたら嬉しいね」
伊藤先生とは、部活ぐらいでしか関わりがない。
よく、生徒のことを見てくれている。
「先生は、よいねちゃんのクラスには、授業行くんですか?」
「そうね、一年生も担当だから、でも今日はよいねちゃんのクラスは授業がなかったね」
(よいねちゃん、一年生なんだ。)
伊藤先生は、数学の先生、今年は、一年生と、二年生が担当らしい。
すると、ドアを叩く音がした。
コンコン
「すみません、写真部に入りたいのですが…」
「ああ、よいねちゃん、いらっしゃい。」
「よいねちゃん、来てくれて嬉しいな」
「この前、すごく楽しくて、入りたくなりました。」
「良かった」
「この紙に名前と、保護者の名前書いてもらって、明日、担任の先生に出してね」
伊藤先生が、よいねちゃんにそう案内した。
「今日のテーマは、自由にしようか、学校の中で、好きなところを撮ってきてね」
「はい」
「行ってきます。よいねちゃん、行こうか。今日はカメラ余ってるし、そこにあるの、好きなの使っていいよ」
「ありがとうございます」
「雨音さんでしたよね?一緒に行ってもいいですか?」
「いいよ、一緒に行こう。」
(なんだか、嬉しい)
年下の子に親しくしてもらうことなんて、中々なかったからだろうか。
私たちは、とりあえず、校内を歩く。
「そういえば、この前、半分雨で、半分晴れみたいな天気があったんだけど、その時渡り廊下にいたのって、よいねちゃんだったりする?」
「あっそうかも知れないです!誰か来たと思って、逃げちゃったんですけど。」
「私、あの時、もしかしたら雨なのはここら辺だけで、反対側も晴れてるんじゃないかって見に行ったんだよね」
「確か、雨でしたね。」
「うん、よいねちゃんは、なんであそこにいたの?」
「あの日、急な雨だったじゃないですか、なんで、外の人は、傘を差している人と、傘を持っていない人で、分かれるんじゃないかと思って。そんな様子が見たくて。」
「そうなんだ。」
「あと、雨をもっと近くで感じたかったのもあります。」
たしかに、傘の有無だけで、人々の行動が変わり、人それぞれに、状況が生まれる。
それを見るのも、なんだか面白いかも。
私たちは、話しながら、校内を回っては、シャッターを切った。