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雨の日の晴  作者: 宿木
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雨音と、響く余韻

今日は雨、土砂降りという程ではなく、小雨でもない。まさに雨という感じ。


明日は部活だ。


(よいねちゃん、来てくれるかな)


そんな事を思いながら、昼食後の授業を受けている。


私は窓際を、席替えによって失ってしまった。


今は窓際と反対の、廊下側の席。


(今日はいい雨なのに。)


私は窓の方を観ていた。


あんまりみえないので、窓の奥は諦めた。


雨音(あまおと)だけを楽しむのも、悪くない。


「じゃあここ、木村。」


(まずい、聞いてなかった)


「ここの、「あれ」というのは、何を指している?」


「えっと……「僕」の和田に対して思ったこと。」


「そう、「あれ」というのは、先生を呼びに行こうとした和田さんに対しての…」


(あぶない)


生徒を当てたあと、もう一度どこを答えさせたいのか聞いてくれる先生だ。


これが別の先生では少しまずかった。


私は今日の雨音をBGMに、この授業は集中した。


鐘が鳴った。私の好きな、雨音とは違う音。


「今日はここまで、号令お願いします。」


「起立、れ…」


「ごめん、田中のこと、起こしてあげて」


「おーい田中起きろー」


「田中くん、」


女子生徒の中村さんが肩叩いている。


「むわぁ、ああ、すみません!」


田中は勢いよく立ち上がった。


「なにしてんだよー」


笑いが起きる。


「はい、もう一度お願いします」


「礼、ありがとうございましたー」


「解散ー」


「田中なにしてんだよー」


「なんか雨音聞いてたら眠くなってきてさーありがとう、中村さん」


「うん」


(雨音で眠くなるの、なんか分かるな)


私の好きな雨音、私も、家でぼーっと聞いていると、寝てしまっていることがある。


やっぱり、落ち着く音をしているのだろうか。


「分かる、俺も雨音ってなんか言われてみれば眠くなるかも」


「俺も」


どうやら、一人二人ではないらしい。


「雨音って、睡眠用BGMに使われてたりするよ」


中村さんがそう言った。


「そうなの?じゃあ自然の雨音で寝るのも仕方ないよなー」


「少なくともこの教室では田中だけだったけどな」


私は田中に同感だ。


私の大好きな雨音が、人を癒すなんて、なんだか誇らしい。


「ごめん、雨音ちゃん」


私は、右肩を叩かれた。


クラスではあまり目立たない、藤田さんだ。


「ごめん、私さっきの授業寝ちゃってて、ノート見せてくれない?」


「いいよ、私もあんま聞いて無かったけど」


「ありがとう」


私のクラスは、かなり温かい雰囲気を持っているだろう。


そんな温かい雰囲気は、今日みたいな、雨の日に、より一層際立つ。


そんな気がする。


雨に優しく包まれているみたいな。


「雨音ちゃんごめん、間に合いそうになくて、授業終わったらまた借りてもいい?」


「いいよ、ノートも良かったら持ってて大丈夫」


「本当?ありがとう!」


鐘が鳴った。


今は別にのぞんではいない。


それでも、


何百とも聞いた音の余韻と、なんでもない雨音が、私は今、心地がいい。

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