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雨の日の晴  作者: 宿木
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明白、曇り空

今日は、くもりだ。


真っ白で、明るい。


こんな日に観る町は、晴れや、雨の日に比べて、飾り気がない。


素の姿を観ているみたいだ。


言うならば、味気がないとも表現出来るだろう。


しかし私は、こういう日を待っていた。


こんな日を、どんな風に写真に収めよう。


そう私は、何となく、こんな空の日は、考えていた。


ただシャッターを切るだけでは、物足りない風景となるだろう。


晴れていれば、青空や、太陽が、雨であれば、どこか暗めで、雨水や、水溜まりが景色を上手く飾ってくれる。


さりげなく飾りつつ、日常を感じさせてくれるのだ。


しかし今日は、真っ白で、明るくて、空一面には、薄い雲が貼られている。


まるで、白紙の上に、建物や木々が「置かれている」という感じがする。


背景が真っ白で、「浮いている」感じが私はするのだ。


未完成な絵、下書きを観ているようで、ある意味、非日常。


そんな日を、私は私なりに、魅力的に写したい。


まずは、家の前の坂道。


麓から、晴美の家の方を写す。


やはり、普通に撮ってもいいのだけれど、もう少し、欲しい。


私のカメラは、撮ったものを、スマホに転送してくれる。


その場で編集をしてみる。


トーンや、彩度を調整してみる。


(ちょっと違うな)


まだ、納得しない。


今度は坂の上から。


いい写真が取れた。


坂の上から、奥の方に広がる町。


私はこういう構図が好きなのだろうと、やっぱり思う。


今回、何も手を加えていないが、綺麗に写った。


私はさっきの写真と比べる。


一見、撮った場所以外は変わりがないように見えるが、私は気づくことができた。


(多分、影だな。)


影に違いがあった、坂の上に向かって撮った写真は、影が少なく、単調だった。


しかし、坂の上から町を見下ろしたとき、色んな影が、建物から落ちていた。


私は、影を強調してみる。


(……)


なんだか、編集前の方が、良かった気がする。


私の編集が良くないということもあるだろう。


しかし、編集をしたとき、雲の厚さに微妙な違いがでた。


そこに、明暗が生まれてしまった。


それが、今の真っ白で、明るい曇り空というのを、崩してしまった。


私はその後も撮っては編集を繰り返したが、納得は出来なかった。


結局、坂の上からの町が一番だった。


それも、編集なしの。


私は、家に戻った。


「ただいまー」


「おかえり」


「どうだった?曇り空を撮ってくるなんて言うから気になっちゃった」


「うーん、あんまり、なんだか納得できなかった」


「みてもいい?」


「いいよ」


私は、今日撮った写真の入ったスマホを渡した。


「どれもいい写真じゃん。」


「ありがとう」


「これ、坂の上から?この写真、特に好きだな。ああ、これも」


母は、好きだという写真を、五枚ほど選んでくれた。


それは、どれも編集をしていないものだった。


やはり、編集力が足りないのだろうか。


「なんだか、そのままを写してる感じがして好き。」


「なんだか晴れの日とかに比べて、物足りない感じがしない?真っ白で、ある意味、非日常みたいな」


私は、そう母に言った。


「晴れの日も、綺麗で、それも日常だけど、こんな日も、日常の一つだなって私は感じるな」


母はそんなことを言った。


私は、驚くと同時に、納得もした。


私は、真っ白で、明るい中、建物や、木々が「浮いている」「違和感」だと感じていた。


それを、私の思う、自然に、日常に、落ち着けたかったのだ。


(こんな日も、日常か…確かに)


こういう私の違和感を抱く日も、数ある一日の、日常だ。


私は今、大好きな、魅力的な、次が待ち遠しい日常が増えた。


いつもと違っても、それは日常。


広い目でみれば、日常なんだ。


「たしかに。こんな日があっても、面白いね。」


「まぁ、私は晴れの日が一番好きだけど。」


私は改めて、この人は、結構自由な考え方をするよな。と思った。

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