雨、咲かせる(2)
今日の授業も終わった。
私は結局あのあと、全ての授業であてられた。
「12日だから」というありきたりな理由で。
今日は部活がある。
晴美と一緒に帰りたいが、それは難しそう。
晴美も部活だけれど、テニス部は帰りが遅い。
私は、部室へ向かう。
写真部の部室は、もう使われていない、空き教室だ。
「こんにちはー」
「おお、雨音ちゃん、いらっしゃい。」
伊藤先生だ。
担任を持っていない、おばあちゃんみたいな先生。
「今週は、学校から見える外の景色をテーマに作品を作りましょう。」
写真部には、私と、他に五人いる。
そのうち三年生は、私と、もう一人、男子がいる。
人数は少ない、このままでは廃部。
部活が無くなるのは、少し寂しいけど、私はあと少ししたら引退だし、大勢より、このくらいの人数で出来ている組織が、私は好きだ。
「じゃあ、行ってきます。」
「はい、四時四十五分までには、戻ってきてね。暑いから、水筒も忘れずにね。」
私は、カメラに収めたいところが決まっている。
(まずは、あそこだな)
私は教室のドアを開けた。
するとちょうど壁に隠れるように、一人の女子生徒が立っていた。
(あれ、たしかさっきの)
「さっきも会ったよね?ここは、写真部の部室だよ。」
「あの…ちょっと写真部気になってて」
「そうなの?嬉しい。じゃあこっちきて」
私は、彼女を部室の中へ案内した。
「先生、写真部が気になってるみたいで」
「そうなの?じゃあ雨音ちゃんと行っておいで。雨音ちゃん、お願いできる?」
「分かりました。じゃあ、一緒に行こうか。」
「はい」
私は、とりあえず撮りたいと決めていた場所まで、一緒に行くことにした。
「写真部は、基本的には、学校内で写真を撮って活動しているんだ。」
「一年生かな?名前、聞いてもいい?」
「はい、一年二組の、青木よいねです。」
「ありがとう、よいねちゃん、ね。」
私は、こんなに人と話せている自分に、内心驚いている。
少し前の、一、二年前とかの私には到底できないだろう。
(晴美のおかげかな、)
幼い頃からの仲だけど、今になってやっと、晴美のコミュ力から、私が影響を受けている気がする。
私たちは、今日私たちが出会った渡り廊下についた。
「ここで、写真を撮ろうと思ってたんだ。」
「いいですね」
「そうだ、今週のテーマが、学校から見える外の景色で、よいねちゃん、撮ってみる?」
「いいんですか?撮ってみたいです。」
「うん。よいねちゃんから見る、この景色、私は見てみたいな。」
なんだか、表情が柔らかくなった気がする。
私はカメラを渡した。
「ありがとうございます」
「好きな角度から撮ってみて。」
彼女は、廊下の真ん中に立って、シャッターを切った。