雨、咲かせる
今日は晴れだ。
私は、渡り廊下にでて、景色を眺めていた。
いつもの窓際もいいけど、こういうスパイスも欲しい。
窓際とは違って、目の前にはマンションがあって、遠くの方は見えない。
しかしすぐ下が歩道に挟まれた車道で、人や車の往来を観ることができる。
私は、こんな景色も好きなのだ。
スタスタスタ。
足音が聞こえる。
(あれ…)
一人の女子生徒がきた。
多分、同学年では無いだろう。
同じように下を見ている。
(この子は、この景色が好きなのかな)
私は、勇気を出して、話しかけてみることにした。
「もしかして、ここの景色、好きなの?」
彼女は、驚いた顔をしている。
分かりやすいくらいの。
「ごめん、急に話しかけて、私、雨音っていうんだ。ここの景色が好きで、たまに来る。」
彼女は、うつむきながら、話してくれた。
「私も、この景色が好きで、よく来るんです。人や車、私が学校にいる間、同じ時間を違うことをして生きている人っていうか、景色になんだか惹かれて…」
(分かるな、日常を、日常から見ているって、なんだかいいんだよね)
「よく分からないですよね、すみません」
「分かるよすごく。誰かの日常を、私の日常から眺める。干渉せず、少し引いた目でみる、なんかいいんだよね。」
また、驚いた顔をしている。
さっきとは、少し違うけど。
「そうですね。」
「もうすぐチャイム鳴るから、じゃあね」
「はい」
私は、少し早足で、教室に戻る。
(さっきの子も、景色を観るのが好きなのかな。私の窓際をみせてやりたい。)
私は、そんなことを考えながら、席に着いた。
「起立、礼、お願いします。」
「お願いします。」
「はい、じゃあ、85ページ開いてー」
(もしかして、昨日、雨の中いたのって)
今日は、12日。私の出席番号だ。
(当たるなこれは)
「今日は、12日なので、木村さん。この間の実験の結果、教えてくれる?」
「はい、まず食塩を加えたときは…」
「ありがとう」
今日はあと何回当てられるのだろう。まだ三時間目。
私は、窓の方へ、顔を向けた。