表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雨の日の晴  作者: 宿木
118/118

煌々と、こうよう(5)

「いってきまーす」


いつもとは違った静かさのリビングがやってきた。


「泊まるの久しぶりだなーお母さんも楽しそう」


「そうだね、良かった」


確かに、楽しそうで、会話が途切れる事がなかった。きっと、今もコンビニに向かう中で、話をしていることだろう。


時間は、気づけば23時前。


落ち着きを持ち始めたテレビ番組を片目、片耳に、私はスマホを弄り、晴美は漫画を読んでいる。


(毎日こんな夜だといいのに)


何度も、色々な場面で思ったこと。


でも、やっぱり、たまにでいいかも。


稀に摂取するから、効果抜群ということがある。この夜は、多分そんな夜だ。


「ただいまー」


「買ってきたよー」


玄関から、いつもより1人分多い声。


「何買ってきてくれたー?」


ポテチやチョコ、クッキー、ペットボトルのジュース。


みんなで分けるようなお菓子だ。


「いいね、ナイスセンス」


「肉まんもあるよ」


(最高だ)


ちょうど小腹がすいてきた。


「ありがとう」


まずは肉まんから。その後は、なんら変わらず、時間が過ぎていった。


「わっ、こんな時間だ私帰るね、咲久ちゃんありがとう」


「はーい」


「晴美どうする?泊まらせてもらう?」


「泊まる!」


「分かったじゃあお母さん帰ってるね」


「うんおやすみー」


「じゃあ咲久ちゃんよろしくねー」


「うん、おやすみ」


ガチャ


「雨音たちも、そろそろ寝る時間だよー」


とっくに0時は回ってしまっていた。


「そうだね、眠くなってきた」


歯医者で貰っていた歯ブラシを晴美に渡して、歯磨きを終えたら寝ることにした。


「お母さんおやすみー」


「はいおやすみー」


先に晴美が部屋に行っていた。


もう1枚布団を敷いて、寝ることにした。


(少し前までは、この布団だけで足りたけれど…)


「おやすみー」


「おやすみ」


電気を消せば、意識はすんなりと、私の内側へ沈んでいった。


次の日の朝、というか、朝がやってきた。


「おはようー」


日が差し込んでいる。窓から見る限りは、快晴だ。


晴美は、まだ寝ている。


リビングへ行くと、もうお母さんが起きて、洗濯を干していた。


「おっ、雨音おはよー晴美ちゃんは?」


「まだ寝てる」


時間は、9時頃。お母さんはもっと前から起きていた様子。


少なくとも1時ぐらいに寝たはずなのに、いったい何時に起きたのだろう。


ご飯と、味噌汁を用意して、朝食をとっていると。


「あっ、詩緒ちゃん、迎えに来るみたい」


「そうなの?じゃあ起こした方がいい?」


「うん、よろしくー」


2階へ上がって、晴美の待つ私の部屋へ。


「晴美ーお母さん迎えに来るってー」


体を優しく揺らしてみる。


(起きない…)


気持ちよさそうに寝るなぁ


「晴美ー、起きよー」


詩緒さんは、いつもこんなことをしているのだろうか。


「晴美ー…」


「んあ、あと少しだけ」


「お母さん迎えに来るみたいだよー」


「ええ?あ、そうなの?」


ゆっくりと起き上がって、目を擦っている。


ピンポーン


(あ)


きっと、詩緒さんだろう。


「ごめんねー、咲久ちゃんありがとうー」


「いいよいいよ、雨音も嬉しかっただろうし。」


「晴美、行こうか」


「うん」


寝ぼけた様子で、危ないので手を繋いで階段を降りることに。


「あ、お母さん、おはよー」


「あー!雨音ちゃんごめんねー」


「大丈夫です」


家はすぐそこだから、荷物とかはない。


「雨音ちゃんまたねーありがとう」


「うん、また明日」


「ありがとねー、お邪魔しましたー」


ガチャ


「ははは、晴美ちゃん、前から朝弱いよねー」


「うん、ずっとああみたい」


晴美が帰って、静かに、色が日常に塗り替えられた。


少し、寂しいような、余韻が残ったというような。


まあまた明日、晴美には会えるのだけれど。


リビングへ戻る。


(…)


本棚には、明らかに漫画を取り出して、読んだあと、クッションが動かされた後、ゴミ箱には、いつもより多い、お菓子のゴミや、キッチンにはお酒の缶。


晴美がやってきた、明るい夜の痕跡があった。


これから、ゆっくりと、「いつも」に染められていくのだろう。


ここから見える庭には、色付いた葉っぱが何枚か落ちていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ