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雨の日の晴  作者: 宿木
113/119

夏繋がる茜(3)

(明日、ちょっと聞いてみようかな)


「ただいまー」


「おかえりー」


「お母さん、高校どうしよう」


「あれ?この前北明日高校がいいって言ってなかった?」


「そうなんだけど、今日先生にあと2校ぐらい候補があるといいって言われた」


「あー、そうだよねぇ。」


多分、体験入学も、ほとんどのところがやっていないだろう。


確かに、北明日高は、体験入学に行ったというだけで志望校にしたけど、いい印象を持ったのは確かで、写真部に興味を持った気がする…


「そうだなぁ、最低条件とかはないの?例えば、絶対にトイレが綺麗じゃなきゃ嫌だ!とか」


「なにそれ」


「例えばだよ、なんかない?」


……極論というか、我儘を言えば、晴美がいるところ…


この前までは、晴美がいるからという理由には、納得できていなかった。それは自分で選んだ道とは思えないから。


でも今は、それでも…悪くないというか、1つの選択肢なのではないかと思ってしまう。



「私は図書室が広いってのが理由だったかなー」


「私は、晴美がいると…」


(だめだ)


口に出して、再確認した。


この決め方を、まだ私は、心の奥底で否定している。


「やっぱり、あの高校がいい。北明日高」


「…いいじゃん、そうしなよ」


「ありがとう」


先生に言われた残り2校は、とりあえず、写真部があるというだけで選ぶことにした。


正直、その2校に行きたいとは思わない。


―翌朝―


「行ってきます」


「はい、行ってらっしゃい。気をつけてねー」


この坂を登って、今日も朝を迎えに行く。


私は昨日のお母さんとの会話で、決意することができた。


私にとっての「最低条件」それは、自分で決めること。自分で自分のことを考えて決めたところが最低条件だ。


「晴美がいるから」というのは、自分のためになりそうにない。


今後の選択を、自分以外を理由にしてしまう。


それは、私の進路と言えるのだろうか。


自分の欲望で決めたと言えるのだろうか。


そんな考えが芽生えた先の答えだ。


ピンポーン


「雨音ちゃんごめんねー!!すぐ行くから!」


ドタドタドタ


「おはよう!雨音ちゃん!いつもありがとう!」


季節外れの、明るい太陽だ。もちろん、私の大好きな


「雨音ちゃん、いつもありがとうね、気を付けてね」


「行ってきます」


「行ってきます!」


私は、晴美に高校を聞くのはやめた。


その答えがどうだろうと、私の決めたことに、変化は起きない。私が起こさないから。


今日は晴れ、快晴だ。


涼しく、心地のいい風が私を包む。


「いい天気だねー、しかも涼しい」


「そうだね」


「おおっ、やっぱちょっと寒いかも」


少し強めの風が吹いた


誰かが集めておいたのだろう。積まれた落ち葉が飛んでいってしまった。

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