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雨の日の晴  作者: 宿木
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風の匂い

今日の授業が終わって、今は掃除の時間。


今週は、1階の渡り廊下の掃除だ。


この廊下の反対側も、同じように渡り廊下があって、これらに挟まれるように、中庭がある。


「ここ、掃除ほぼ意味ないよなー」


「だよねーテキトーにやっとこ」


正直、私もそう思う。


だって、外と繋がっているんだもん。


掃除しても、翌日には砂と、落ち葉と、ある花の散った後でいっぱいだ。


「あ!ダンゴムシ!」


「結構いるじゃん!」


みんな、(ほうき)を動かして、砂や落ち葉を掃くものの、やる気は無い。


そういう私も、そこまで本気で掃除はしない。


私はダンゴムシではなく、別のものに気を取られている。


中庭では、名前は分からないけれど、多くの花を育てていて、その中でも、毎年この時期に咲く花がある。


金木犀だ。秋の匂いがする。


この、季節に溶け込んで、気づいたら、嗅覚を撫でている。そんな雰囲気が好きだ。


いつの間にか、秋に存在している。そんな花な気がする。


毎度、ここの渡り廊下に来ると、橙色で床が染められている。


金木犀が、散っているのだ。


散ったあとも、花を咲かせて、秋の色を保っている。


「わー綺麗」


「ははは、いい匂い」


落ちた金木犀を集めて、宙に投げている。


花火にも、見えなくもない。


「私もやりたい」


「いいよー」


ちりとりで集めて、放り投げる。


「ははは、綺麗」


楽しい。季節外れの花火と、橙色の香り。


ここに金木犀を植えた人は、本当にセンスがいい。


掃除をしても、金木犀で埋まるなら、しょうがないと思ってしまう。むしろ、歓迎する。


「俺も…あっ」


風が吹いた。涼しい、爽やかな風。


「おいー、服に付いたー」


「はははは!ごめんごめん」


制服のブレザーを、オレンジが飾っている。


「雨音ちゃん、綺麗とか思ってるでしょ!」


「ええ!?うん、ちょっとは」


「だろうねー、こっちは付いてちゃって大変なんだよ!」


「ははは、木村はよく顔にでるよなー」


「よく言われる」


…♪…♪


「終わったー」


掃除の終わる合図だ。音楽が鳴る。


「ほとんど掃除してないでしょ」


「来た時より綺麗に」


「上手いこというよねー」


「上手いことなの?」


今日は晴れ、ちょっとずつ曇があってたまに、秋が風を吹かせる。


渡り廊下を離れるとき、また風が吹いた。この香り、いつまで楽しめるだろう。

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