日のない、明るい曇り
今日は曇り、太陽は、見ることもできないし、位置を確認することもできない。
そんな天気。
日曜日が明け、月曜日を迎えた私の気持ちのようだ。
私たちは今、ある挑戦をしている。
コロコロコロ
学校に向かうまで、石を蹴って、運ぶのだ。
1人では中々できない。
今は晴美と一緒。だから、不思議と、他の生徒も見ている中でも、楽しむ事ができている。
この辺りは車通りが多くないので、車道に出ても、基本危なくない。フィールドを広く使っていこう。
ただ、無心に目先の石を蹴っては、追いかける。
ボールとは違う動きをする。
これはこれで、追求するものがありそうだ。
(あ…)
この辺りから、見かける生徒が多くなる。
そして、車も。
それにともなって、私たちの前には、信号が。
いつもは何とも思わない信号。それが、大きな敵に見えてきた。
あの小さなスピーカー、あれで攻撃してくるんじゃないだろうか。
この信号が、碧を示したとき、勝負は始まる。
車道の信号が黄色に。いよいよだ。
「雨音ちゃん」
「ん?」
「信号だから、ここは手で持っていこうか」
「そうだね…」
すっかりやる気になっていた。
…♪、♪
歩行可能を示す信号の音。
大きく見えていた信号が急に、何とも思わない、日常のオブジェになった。
信号を抜けて、再会。
もう間もなく学校だ。
ここからの道が、このストーリーの最終章。
終着点は、門に繋がる坂の麓。そう決めてある。
「あっ!…ははは、割れたー」
晴美の石が、電柱にぶつかる音を立てて、割れた。
「こっち持ってこ」
片割れは、ここでリタイア、というより、そういうスキルだろうか。
門に繋がる傾斜が見えてきた。
(あと少し)
少し、蹴る力を強くしてみる。
「!」
「あぶなー、雨音ちゃん、気をつけないと」
「セーフ…」
石が、側溝に落ちてしまうところだった。
危ない、ここに来て、この世界に常駐する敵に全てを終わらせられるところだった。
側溝の際から、何とか復帰した
次は、慎重に…
「ゴール!」
成功した。冒険の友は、ここに置いていく。一応、見つかりにくい所に。
「帰りもあるかなー」
「目立たないから、きっとあるはず」
なんだか、長い朝だった。
その後は、いつもが過ぎていった。
授業中でも、休み時間でも、時々、あの石が気になった。
その度「受験生の所業じゃない」と、第三者的な私が言った。でも、これが私たちの所業だ。
「さよーならー」
「はい、さよーならー」
学校での1日が終わった。
「雨音ちゃん!石見に行こ!」
「うん!」
少し早足で、外に出る。
「さよーならー」
「さようならー」
ちゃんと、門では挨拶。冒険者のおきてだ。
坂を下る。
確かこの辺…あ!
「あった!」
「意外とそのままだね」
景色に溶け込むように置いた石。あの朝を持ったまま、ここにいた様子だ。
今日は曇り、太陽は見ることができなかったけれど、私はどこかで日を感じていた。