微風、心地よく内緒
今日は晴れ。今日はこれから、晴美の家に行く。
今日は晴美のお母さん、詩緒さんの誕生日だ。
「お母さん、もう来ていいって」
「はいよーじゃあいこうか」
昨日買ったプレゼントを持って、家を出る。
「いってきまーす」「いってきます」
今日は、誰も言葉を返す人はいない。
すぐ頭上は白がアクセントになった青色。いい天気だ。
この小さな坂を登る。すると、晴美の家だ。
「いい天気だねー風もちょうどいい」
家についた。
ピンポーン
「はーい、ああ、咲久ちゃん?ちょっと待ってねー」
(あれ、晴美私たちが来ること言ってないのかな)
私たちは顔を見合わせた。
お母さんも、同じ事を思っているのだろう。
スタスタスタ
階段を下る音。私が朝聞く音とは違う。
「お待たせー」
「急にごめんねーお誕生日おめでとうーこれプレゼント」
「え!?ありがとう!」
「私もどうぞ」
「雨音ちゃんも?ありがとう!嬉しい」
詩緒さんがこちらに来るまでの時間で、十分理解する事ができた。
私たちが来ることは知らされていなくて、それは晴美が意図的にやったということ。
多分、サプライズのつもりだろう。
「雨音ちゃん、咲久さんありがとう!」
晴美がやってきた。
「晴美は、何かあげたの?」
(まあ知っているけど)
「晴美はね、キノコのお皿をくれたの!」
「うん」
「2人ともありがとう!そうだ咲久ちゃん、昨日はありがとねー、晴美連れてってくれて、ごちそうまで」
「いいよいいよ、楽しかったし」
「じゃあ誕生日おめでとう、またねー」
「晴美、また明日」
「うん!ありがとね!」
「本当にありがとう、雨音ちゃん、また来てね」
「はい、また」
私たちは晴美の家を後にした。
今日は詩緒さんの誕生日で、晴美のお父さんもいるだろう、これからどこかに出かけるような様子でもあったので、このぐらいがちょうどいい。
「多分晴美ちゃん、詩緒ちゃんに私たちが来ること言ってなかったよね?」
「多分ね、まぁ喜んでたし、いいんじゃない?」
「そうだねーよかったよかった」
今日は晴れ、太陽と青と雲、全てがいいバランスで混じる、贅沢な空だ。
それを仕上げる風が気持ちがいい。
「ただいまー」
「ただいま」
その日の夕方、スマホには晴美から、「合わせてくれてありがとう、お母さんに内緒にしてたんだー」とメッセージが入っていた。